プレゼンで気をつけるべきことはいろいろありますが、ホントのところ一番大事なのって何でしょう?
それは、「視線誘導」。つまり、聞き手がどこを見ているのかをコントロールすることだというのが、プレゼンは「目線」で決まる―――No.1プレゼン講師の 人を動かす全77メソッド西脇先生の主張です。
というのは、
「相手の目が見ていないもの」について伝えても99.9%理解されない
から。逆に、
「自分が伝えたいこと」と「相手が見ていること」を一致させる
ことができると、話し上手かどうかは別にて聞き手に伝わるプレゼンテーションになるそうです。
プレゼンは目線で決まる
このような(良い意味での)テクニックは、実はプレゼンだけのものではないそうです。たとえばテレビのキャスターとして大活躍の池上彰さんもこの視線誘導をつかっているとのこと。たとえばテレビの中でフリップボードを手に解説するときにも、
では、いちばん上のこの項目ですけどね
のように、たとえテレビという媒体を通してでも聞き手がどこを見ているかを指示しているからこそ、「分かりやすい説明」ができるんだそうです。
これを実際のプレゼンの現場でやるために、西脇先生が普段から実行している意外な工夫が二つ紹介されていて、
- 「手元資料」は配布しない
- 「指し棒」「レーザーポインタ」は使わない
というのがそれ。え?それって、アリ?と最初は思ったのですが、解説を読んでなるほどです。
手元資料を配らないのは、
聞き手に下を向かれてしまうと、視線誘導にもマイナス
だからとのこと。たしかに、逆の立場で考えても、資料を配られると最初から最後までパラパラッと見て全体像を先に把握したくなりますよね。で、これはプレゼンターの立場からするとマイナスである、と。ただ、そうは言っても聞き手は資料を欲しいものですから、そこはITに強い著者ならではの解決策が提示されていて、
プレゼン終了後にオンラインストレージのURLを伝えて、そこからPDFなどをダウンロードしてもらう
ようにしているとのこと。これならば、たしかに聞き手に親切ですね。ちなみに著者はマイクロソフトで「エバンジェリスト」、つまり製品を広める役割を担っているそうで、ここでいう「オンラインストレージ」は同社のOne Drive何かを指しているんでしょうね。これならば一石二鳥です。
レーザーポインタも似たような話で、
残念ながら聞き手は、レーザーが当たった文字の先をほとんど見てはくれません
ということで、西脇先生の主張する「視線誘導」の力がそれだけ弱まってしまうのでしょう。
プレゼン資料も視線誘導を意識する
また、この視線誘導という考えは、プレゼン資料の作成においてもいかされます。たとえば、「スーパーの折り込みチラシに学ぶ『数字』の見せ方」と言うパートでは(84p)、数字に視線を誘導するために
単位のフォントサイズを2割ほど小さくする
ことが提唱されています。要するにこういうことで、
200円の商品が好調
ではなく、
200円の商品が好調
と見せた方がより「200」という数字に視線を誘導できると言うことです(スマホだとフォントサイズが変わらないのでちょっと分かりにくいかもしれないです)。
西脇流、プレゼン作成の4ステップ
視線誘導を踏まえ、西脇先生が企画から実際にプレゼン資料を作成するまでの流れが本書の後半では紹介されています。
大きな流れとしては、
- A4用紙1枚のシナリオにまとめる
- スライド作成
- カード式ミニスライドで流れを再検討
- つなぎ目をレビュー
となります。
まずは「シナリオ」と呼んでいますが、プレゼン全体の流れをA4用紙1枚にまとめたものを作成するのがスタート。その際、パワーポイントではなくWordを使うのがコツだとか。そのココロは、「プレゼンの流れ」を構築するためには接続詞が必要だから。若干長いのですが引用してみましょう。
「接続詞」を使って文章にするということです。スライドをつくる前に短文の「箇条書き」だけでアウトラインをつくる人がほとんどだと思いますが、、これは要点をまとめているだけですので、プレゼン全体の「流れ」を構築するためには十分ではありません。1つ1つのメッセージ間の「つながり」を意識しながら、1つのストーリーを練り上げるためには、まず文章にするのがベストです。
そして、たとえどれだけ長いプレゼンであってもA4用紙1枚にまとめることが大事だ、とも強調されています。
そのA4用紙のサンプルが149pに掲載されていますが、これは本書後半の「キモ」とでも言うべきものなので、もう少し大きい文字で見やすくして欲しかったところですね。また、「左欄にトピックを箇条書き」→「右欄に『接続詞』を使って文章にまとめる」のところは、言うほど簡単なことではないので(ましてや長いプレゼンをA4用紙1枚にまとめるならばなおさら)、さらに詳しい解説が欲しいところです。
次のステップはスライド作成ですが、その際に
「接続詞」のところで文章を分割し、スライド1枚に落としていく
のがコツだそうです。そうしないと
一連のスライドの間に矛盾が出てくる可能性
ができてしまうとのこと。
プレゼンの流れを検討するアナログな手法
次のステップの流れを再検討のところでは、ミニスライドと呼んでいますが、
スライド全てを縮小サイズでプリントアウトしてからカッターなどで切り離し
たものを目の前に並べながらこのスライドが先か、あのスライドが先かなどを検討していくとのこと。その際に、
- ミニスライドに赤字で修正を書き込む
- 間をつなぐスライドが必要であれば手書きで作成する
- ミニスライドに経過時間を書き込んで、「全シナリオのうちこのトピックは○○分内に消化する」というイメージを固める
- できあがったものをパワーポイントに清書する
ことになります。面白いな、と思ったのは、この作業は紙でやる方が絶対的にお勧めだとのころ。
プレゼン資料作成の最後のステップは、つなぎ目を「一貫性があるか」という観点でチェックして、もし必要であればスライドとスライドをつなぐ「ブリッジ」と呼ばれる新たなスライドを挿入することです。
その他、プレゼンに「効く」方法論
●直前でも「スライドの修正」はやるべき
所感:これは極めてリスキー
●プラスの評価を増やすには、継続的なプレゼンのトレーニングが必要です。マイナスの評価を減らす方が、人を動かすプレゼンの近道になる
- 言葉遣いを丁寧にする
- 自分のクセを押さえておく
- セッティングを入念に行う
●重複を排除する「1スライド1ワード」のルール
悪い例
次の3つのケーキからあなたは好きなおやつを選択できます。どれを選びますか?1.ロールケーキ、2.パンケーキ、3.ショートケーキ
よい例
選択肢は3つ。1.ロールケーキ、2.パンケーキ、3.ショートケーキ
●聞き手を逃がさない4つの問題提起
- なぜ「この話」が重要なのか?(プレゼン内容の付加価値)
- なぜ「いま」伝えたいのか?(背景、トレンド、期限など)
- なぜ「私から」効くべきなのか?(私の自己紹介、実績、人柄など)
- なぜ「あなたに」伝えたいのか?(聞き手の位置づけ)
●デマンドを引き出す3つのストーリー
- サクセスストーリー(提案の「魅力」を認識させてデマンドをつくる)
- レアストーリー (提案の「希少性」を認識させてデマンドをつくる)
- 期間の希少性
- 数量の希少性
- 立場の希少性
- 優位の希少性
- 回数の希少性
- ホラーストーリー(なんらかの「リスク」を認識させてデマンドをつくる)
●プレゼンのやり方を工夫しさえすれば、実は上層部に直接話をする機会を得るのはそんなに難しいことではありません。
所感:これは著者に「マイクロソフト」というブランドがあるから
●注目を集める人は名前を「2度」言っている
みなさん、こんにちは。西脇でございます。マイクロソフトでエバンジェリストをしております西脇です。
●「さぐり」
聞き手の雰囲気をつかむために質問を投げかける手法。
ベテランの芸人ほど舞台上から客席にさぐりを入れています。その理由は単純で、彼らは若手と違って新しいネタをほとんどつくらないため、さぐりを念入りに入れることで時間を上手に消化しつつ、その場で最適なかたちでネタをチューニングしているのです。
●動詞を聞き手目線に変換する
リンゴをお届けする→味わっていただく
お買い求め下さい→お楽しみ下さい
●数量を聞き手目線に変換する
280ミリリットル→用量10日分
●スライド切り替えのタイミング
悪い例:スライドAについてのトーク→スライドBに切り換え→スライドBのトーク
いい例:スライドAについてのトーク→Bへのフリ(導入)→スライドBに切り換え→スライドBのトーク
●おへその前で手を組むを基本姿勢にする
●橋下徹流「頼りにされる」語尾活用法
普通の人の話し方
大阪府と大阪市では財政が被っているんですよ。図書館サービスとか、行政サービスとか、医療サービスとか、交通サービスとか、こうした公共サービスが重複していますので、解消したいと考えています。
橋下さんの話し方
財政が被っているんですよ、大阪市と大阪府。
この二つが被っているから変えたい。たとえば、図書館、行政、医療、交通。公共サービスの重複を解消するのが重要なんです。だから大阪都構想。これを実現しなければならない。
●場の一体感を高める「自問自答法」
●聞き手をホッとさせる孫正義の「緩急トーク」
突如フッと力を抜いて、「……まあ、こんな例もたまにありますけどね。どうですかね?」
●マーケティング面でのポイント
- 冒頭のスライドでメリットを演出
- 「2014年だけでも何と講演250回、2万人以上の前でお話をしています」、プレゼンテーション研修のクライアント企業名を出すことで権威感を演出
- 『「地方在住のプログラマー」だった私を「外資系エグゼクティブ」にまで変えたプレゼンのテクニック』でV字回復を演出
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