プレゼンテーション必読文献

プレゼンテーションに関する本は世の中にいろいろありますが、その中でも代表的なものを取り上げて書評を加えたのがこのコーナーです。

その数、全46冊。「え~、そんなに読むの…!?」と思った方もご心配なく。私たちプレゼンテーション・カレッジでは、いろいろな人が提唱しているプレゼンの「極意」をまとめたプレゼン入門セミナーを主催しています。

46冊読破するもよし、2時間で学ぶのもよし。

プレゼン上手への道は一本ではありません。

 

書評 宮城信一著、「デザイン」の力で人を動かす! プレゼン資料作成「超」授業 プレゼン上手に明日からなれる

「パワーポイントのスライドをきれいに作りたい…」。そう思ったときに手に取りたいのが宮城信一先生のご著書、「「デザイン」の力で人を動かす! プレゼン資料作成「超」授業 プレゼン上手に明日からなれる」です。

ハッキリ言って、良著。この手の本の中ではイチオシです。

意外と難しいデザイナーによるプレゼン本

デザイナーさんによる資料作成の指南は、プレゼンテーション本の一分野をなしています。ところが、これが意外とくせ者。デザイナーさんのように感性が鋭い人から見ると当たり前のことが、素人にはわかりづらく、結果としてほんの解説がなかなか腹落ちしないことがあるためです。

加えて、デザイン的要素はあくまでもプレゼンテーションの一部分に過ぎないという問題もあります。しかも、どちらかというと「幹」というよりも「枝葉末節」でしょう。「幹」は中身<コンテンツ>です。「何を、どういう順番で伝えるのか」という構成を考えたり、その背後にある聞き手の問題意識を理解することこそが王道です。

もちろん、見た目も良いに越したことはありませんが、コンテンツがグダグダなのに見た目だけ整えても意味はありません。この点がデザイナーさんが手掛けるプレゼンテーションの本では見過ごされているものも少なくありません。

「なぜそのプレゼン資料なのか」を解説してあるのが親切

ところが、本書においては、デザイン的に優れたスライド資料を見せた後、「何が違うのか」、「良いスライドを作るにはどうしたら良いのか」が懇切丁寧に説明されているので、シロート(非デザイナー)でもその技を学ぶことができます。

たとえば、「視線の流れ」というところ(46p)。

  1. 視線の流れにはZ型とF型がある
  2. 視線の流れの中に余分な情報を入れない
  3. できるだけ目線を動かさせない工夫をする

という3つのノウハウが事例入りで紹介されていて、「なるほど!」と膝を打ちます。

同様に、「対比づくりのコツ」においても、

  1. 性質の異なる要素を対比させコンテンツを強調する
  2. 並べる方向は上下もしくはさゆうのどちらか
  3. できれば形を揃えて並べる
  4. 画像は必要に応じてトリミングする
  5. 画像のサイズ変更は縮小のみ、歪めないように
  6. 画像は「裁ち落とし」で利用するのも手
  7. 対比で違いや変化を強調する

と細分化されています。

一世一代のプレゼンはないビジネスシーン

また、本書のもう一つの良心的な点として、プレゼンの「使い回し」を前提にしていることが挙げられます。プレゼンの有名な事例としてスティーブ・ジョブズ氏のものが取り上げられることは多いものです。スタンフォード大学の卒業式や、iPhoneの紹介のイベント等ですね。しかし、普通のビジネスパーソンはそのような「一世一代の晴れ舞台」的なプレゼンテーションに取り組む機会はまれです。

むしろ、似たような内容を、異なる相手に対して、微妙に立場を変えて説明する機会の方が多く、この観点でプレゼン資料は「使い回しが効く」ように作るべきです。この観点で、「時間をかけずにカッコいい表を作るテクニック」(102p)は正しい指摘がされています。

他にも様々なノウハウ(実例スライドが136枚収録されているそうです)が紹介されているので、プレゼンの資料作りに悩む方は一度は手にとって損はないと思います。


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書評 清水久三子著、話しベタさんでも伝わるプレゼン 人見知り、心配性、アドリブが苦手な人でも堂々と発表できる!

「話しベタなのにプレゼンをやらなければ…」。そんなときに手にとってしまうかもしれないのが清水久三子先生のご著書「話しベタさんでも伝わるプレゼン 人見知り、心配性、アドリブが苦手な人でも堂々と発表できる!」です。

プレゼンでの緊張防止には「トリセツ」

話しベタな人がなんと言っても困るのが、プレゼンテーションの際に緊張してしまうことでしょう。その対策として著者の清水久三子先生が進めるのが「緊張のトリセツ」を作ることです。

自分の緊張の症状をまずは洗い出してみます。症状が分かれば、症状を緩和する準備や対策ができます。話しベタな人は緊張の症状が出ると、「ああ、緊張している。もうだめだ…」と気持ちが負けてしまって失敗することが多いので、準備や対策をしておくことで「緊張してきたけど大丈夫!」と自分を落ち着かせることができ、自信を持って話すことができます。

とのこと。

具体的には、「手足が震える」という症状に対してはハンカチを握りしめる、肩に力を入れて上げてストンと落とす、「汗が吹き出る」という症状に対しては、スーツにパッドをつけておく、ハンカチは2枚準備しておく、などが紹介されています。

プレゼンで「噛む」のを解消する方法

話しベタな人にとってもうひとつの心配と言えば、「噛む」、つまり言葉がつっかえたりいい間違えをすることです。これだけで聞き手からは「自信がなさそうだな~。ということは、プレゼン内容もたいしたことはないのだろう」と思われてしまいます。この解決策として面白いのが、ハミング。といって、鼻歌を歌おうと言うことではありません。口を閉じたまま声を出すことで、口の周りの筋肉に負荷をかけ、その負荷がなくなったときに楽に話せるという方法論です。

具体的なやり方を見てみましょう。

  1. 唇が見えなくなるくらいきつく唇を閉じる
  2. 口を閉じたまま発声する
  3. 口を開けて通常通りに話す

というダンドリです。

プレゼンの聞き手を分析する4タイプ

本所においては、プレゼンテーションの成功の秘訣は聞き手の分析であると説明されています。なぜならば、プレゼンテーションの失敗というのは、聞き手の期待が分かっていなかったり、聞き手の理解度が分かっていないために生じるからです。そのために、プレゼン準備の際には聞き手の人物像をしっかりと調査する必要があるとのこと。

聞き手の期待するテーマを知るために、人物像が分かる情報を集めましょう。人物像は、現在置かれている状況であるヨコのつながりと、経歴など時系列の情報であるタテのつながりで見ていきます。

という方法論が提唱されています。

そのうえで、4つのタイプに当てはめて、タイプにあわせた話し方をするのが説得力を増すコツだとか。

  • 結果重視タイプ:売上、収益性、スピード
  • 革新性重視タイプ:新しさ、面白さ、創造性
  • 確実性重視タイプ:計画性、実現可能性、権威
  • 関係性重視タイプ:人間関係、組織間の関係


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戸田覚  著、“秒速”プレゼン術を読む
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書評 戸田覚著、“秒速”プレゼン術

「最新のデジタル技術を使いこなしたプレゼンをしたい…」。そう思った時に手にとりたいのが戸田覚先生のご著書「“秒速”プレゼン術」です。

プレゼンで使うイラストを自分で描ける

戸田先生と言えば、デジタルガジェットを紹介する記事を様々なところで書いておられる方。そんな方がコロナ禍のプレゼン技術を教えてくれるというので、もうそれだけで興味津々です。

さっそくチェックしたのが、「絵心不要!プレゼン用イラストたった10分で描き上げるワザ」というところ。プレゼンでイラストを使いたいけど、自分の要望にピッタリとあうものがないというのはよくある悩みです。それならば自分で書いてしまえ、とデジタル機材を使って書くワザを紹介してくれています。使うのは、iPadとApple Pencil、そしてProcreate (プロクリエイト)というアプリ。ちなみに、Procreateは「グラレコ」の本園先生も推奨されていたので、この分野では定番アプリなのでしょう。

プロのイラストレーターの方を先生に招いて、イラストを各家庭が本書90pあたりに紹介されています。ただ、著者の戸田覚先生が描かれたイラストは、ちょっと素人っぽさが出ていると感じてしまいました(すみません)。その原因は、輪郭をしっかりと捉えられていないことにあると思います。そうするとやはり本書で説明された技法、

下描きに自信がなければ、その代わりに写真を使ってもいい。「Procreate」にも写真を取り込む機能が用意されている。その上に下描きや本描きのレイヤーを重ねて、対象物の輪郭をなぞればいいというわけだ。

というのを見たかったと思います。

プレゼン資料をスマホに配信

本書でもうひとつ面白いと思ったのが、「プロジェクターはもう古い。プレゼン資料をスマホに配信」というところ。対面でのプレゼンテーションの場合、パソコンの画面をプロジェクターを使ってスクリーンに投影というのが一般的です。でも、これだと大がかりな機材が必要。ところが、スマホに投影できるとなれば、自由度が一気に増します。

全員が手元に何らかのスクリーンを持っているのだから、それを見てもらう形でプレゼンすれば、視力の弱い人も見やすくなるし、ソーシャルディスタンスを保つといった制限にも対処がしやすくなるだろう。

というのは、「なるほど」と思いました。対面でのプレゼンテーションが選択肢1ならば、Zoomを使ったリモートプレゼンは選択肢2。それに続く、第3の選択肢として、対面の場でスマホをスクリーン代わりに使うのはありだと思います。

では、その具体的なやり方。iOS向けのプレゼンアプリにその機能があるそうです。Keynote Liveで接続用のURLを送り、スマホでタップしてもらうだけでこれが実現できるとのこと。スマホの方にはKeynoteのインストールは不要とのことです。

ただ、このようにiOS中心だと、過去に作ったPowerPointの資料という資産が活かせないので、今イチかなぁと思いきや、その解決策も本書では示されています。

PowerPointのプレゼンファイルを取り込むには、OneDriveなどのクラウドストレージを利用すると手っ取り早い。Windowsパソコンで作ったプレゼンのファイルをOneDrive上に保存すれば準備OKだ。iPhoneやiPad側でも、OneDriveのアプリをインストールして、同じアカウントでログインしておく。さらにKeynoteのアプリでOneDrive上のファイルを長押しして「移動」を選び、iCloud Drive上にコピーする。その後、iCloud Drive上でファイルを開く。

という懇切丁寧な説明がなされています。ここら辺は、デジタルにお詳しい戸田覚先生の面目躍如というところでしょう。なお、本書の141pには画像入りの説明があって、より分かりやすくなっています。

プレゼンでは声で緩急をつける

本書はデジタル以外にもプレゼンのテクニックが解説されています。その中でも注目したのが声。アナウンサーの堤友香さんにインタビューする形式で、そのコツが紹介されています。いわく、「聞き取りやすい話し方の基本は『川上から川下へ』だ」とのこと。

大きな声、小さな声ではなく、その人なりに高い声、低い声を意識して強弱をつけます。重要なのは高い声から始まって、低い声で終わるようにすることです。高い音は人を惹きつけます。スタートを高くして、語尾は低い音を意識するんです。

言われてみれば、このような音の調整がされていると、聞き取りやすくなるでしょう。

そして、高い声と話すテンポの組み合わせによって、相手に与える印象が変わってくると言うことも紹介されています。

高低 テンポ 相手に与える印象
高い 速い エネルギッシュ
低い ゆっくり 説得。落ち着く
高い ゆっくり  
低い 速い 仕事が出来る


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日比海里著、ひと目で伝わるプレゼン資料の全知識

「プレゼンテーションの見栄えを良くしたい…」。そう思った時に手にとってしまうかもしれないのが日比海里先生のご著書「ひと目で伝わるプレゼン資料の全知識 (できるビジネス)」です。

デザイナー系の方のプレゼン書籍と言えば…

まずは著者の日比海里先生のご経歴から紹介します。

デザイナーであった親の影響もあり、幼いころからデザインに関心を持ち、デザインの中ですくすくと成長。学生時代にグラフィックデザインのスキル・ノウハウを習得し、大学卒業後は大手出版社に新卒で入社。

ということなので、プレゼンテーションと言ってもデザイン寄りのテーマが本書のメインになります。目次を見ても、

  • Chapter3 伝わるレイアウトのセオリー
  • Chapter4 伝わる文字のセオリー
  • Chapter5 伝わるカラーのセオリー
  • Chapter6 伝わる図解と図形のセオリー
  • Chapter7 伝わる画像のセオリー
  • Chapter8 伝わるグラフと表のセオリー
  • Chapter9 伝わるアニメーションのセオリー

など、「いかに見せるか」が中心になっています。その中に100を超えるセオリー(コツ)が紹介されているので、お得と言えばお得。

ただ、この手のデザイナー系の方が執筆したプレゼンテーション書籍ならば、森重湧太先生の「一生使える 見やすい資料のデザイン入門」の方が見やすく理解しやすいと感じました。典型的には、「Z字に配置すると理解しやすくなる」というページ(66p)。サンプルのスライドが掲載されていますが、これが「Z字」に配置されているというのがいまいちピンときません。シロートがパッと見ると、円グラフがあってその隣にメッセージが並んでいて、視線の動きが横に思えるのですが、プロのデザイナーから見るとZ字型なんでしょうか…ね?

プレゼンの著作権を表示するフッターは必須

一方で、パワーポイントの機能の説明は本書は丁寧です。そもそもとして、Youtubeと連携してパワーポイントの操作が分かるというのは丁寧な作りと感じました。

また、Chapter10 伝わるプレゼン資料作成のためのPoerPoint設定には、パワーポイントのテンプレート機能が詳しく解説されているので参考になります。そもそも、世の中にはパワーポイントのテンプレート機能を理解していない人もいますから、そのような人は一読する価値はあります。

一方で、デザイナーの方にありがちですが、見栄えを気にするあまりやや本質からかけ離れた提言があるのも気になるところです。たとえば、「フッターと日付は入力しなくていい」というところ。パワーポイントのスライドの最下部のフッター、必要ないと提言されていますが(251p)、これは誤解を与えてしまうと懸念します。

実務においては、フッターは必ず表示すべきです。その内容は、コピーライトの但し書きです。よくある、「当資料の著作権は○○に帰属し、本資料の一部または全部を、著作権者の許可なしに複製、転載することを禁止します。 」というあれです。

昨今のように、Zoomでのプレゼンテーションが多くなると、勝手にコピー(保存)された資料が一人歩きしてしまうリスクもあります。万が一そうなった場合にも、著作権をしっかりと謳っておくことはは必要であり、そのためにはむしろフッターは全ページに表示すべきと考えます。

グラフを使ったプレゼンテーションのコツ

本書でとくに参考になるのは、グラフに関するところです。たとえば、199pの「グラフに使って言い色数は3色だけ」というところは、なるほどと感じました。グラフでデータ系列が4つ以上あれば、色も4色以上必要と思っていましたが、それはシロート考え。著者の日比海里先生先生いわく、「使う色は3色、伝えたい部分だけに使います」とのこと。

たしかに、「そのスライドで言いたいこと」が決まれば、そこにフォーカスを当てるための色使いになるというのは納得です。ちなみに、本書の216pで紹介されていますが、パワーポイントの発売元、マイクロソフト社の公式サイトでもグラフの選び方などのコツが紹介されています。こんなところをチェックすると、よりパワーポイントの使い方が上手になりそうです。

[日比海里]のひと目で伝わるプレゼン資料の全知識 できるビジネスシリーズ

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前田 鎌利  著、社内プレゼンの質疑応答術 ~決裁者を納得させる最強の答え方と準備の方法を読む
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書評 前田鎌利著、社内プレゼンの質疑応答術 ~決裁者を納得させる最強の答え方と準備の方法

「プレゼンの質疑応答って苦手なんだよなぁ…」。そんなときに手にとってしまうかもしれないのが前田鎌利先生のご著書「社内プレゼンの質疑応答術 ~決裁者を納得させる最強の答え方と準備の方法」です。

社内プレゼンに特化した質疑応答

本書の特徴は、書名にもあるとおり社内プレゼンに特化しているところです。すなわち、決済者が明確に分かっていて、その人からイエスをもらえればプレゼンの目的が完了することになります。

逆に言うと、一般的な質疑応答とは若干異なる特殊な状況と言うことになります。よくあるプレゼンテーションというのは、不特定多数で決済者が分からない状況で、聞き手に期待した行動をとってもらう、と言う状況です。そのような中での質疑応答は、「ARSA(アーサー)法」と呼んでいますが、

  • Acknowledge (質問者に感謝する)
  • Repeat (質問を繰り返す)
  • Spread (全体に広げる)
  • Answer (回答する)

というのが「王道」です。たとえば、下記の会話を思い浮かべてもらえればイメージがつくでしょう。

ご質問、ありがとうございます。○○と言うご質問でしたね。会場の皆様はどう思われます?実は回答は…

質問がでないのが理想のプレゼンテーション

では、著者の前田鎌利先生が提唱するところの社内プレゼンでの質疑応答の方法論を見てみましょう。

いよいよプレゼンが終わって質疑応答に入るわけですが、第一声は「何もしゃべらない」というのが一番大事です。『…以上です』と言って、後は決裁者が何を言うかを待ちます。

とのこと。理想的なパターンとしてはここで質問が出ずに、ゴーサインをもらうことになります。すなわち、

何もなければ「特にご意見がないようですので、こちらで進めさせて戴きます」と言ってクロージングします

となります。

プレゼンの質疑応答作成10チェック

本書には、「質疑応答作成10チェック」というチェックリストが用意されています。その中から1-5番目を紹介します(残りの6-10番目は本書の143pをご覧下さい)。

1 そもそもチェック そもそもやる意味は?
そもそもこの提案の根拠は?
2 メリデメチェック メリットデメリットを確認
3 リスクチェック 実施した際のリスク
実施しなかった際のリスク
4 時間軸チェック 過去、過去推移
現在、現状
将来予測、見込み
5 比較チェック 他社比較
業界比較
異業種比較

とはいえ、ここまで準備しても答えにくい質問というのは出るものです。それに対して、どう切り返すかも本書では解説されています。たとえば、先延ばしを示唆する質問。

  • もう少し議論した方が良いんじゃないですか?
  • まだいいアイデアが出そろっていない印象があるので、もう一度議論しませんか

などがそれにあたります。このような質問に対しては、その質問の根拠を求めたり、先延ばしすることによるデメリットを提示することによって、「いま、ここで決める」ことの必要性を明らかにする必要があります。

  • これ以上議論を継続することによるチャンスロスは○○○万円です。
  • 実施しないことにリスクとして、競合のシェア増につながることが予測されます。

のようなセリフになります。


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越川慎司  著、稼げるプレゼンを読む
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書評 越川慎司著、稼げるプレゼン

「AI<人工知能>の力を借りてプレゼン上手になれないか…」。そんな風に思った時手にとりたいのが越川慎司先生のご著書「稼げるプレゼン」です。正直、Amazon上ではそれほど人気があるわけではありません。しかし、資料的価値が高いのでプレゼン上手になりたいビジネスパーソンであれば一度は手にとっていただきたい「隠れた名著」です。

人工知能が見つけたプレゼンの成功パターン

本書の最大の特徴は、実際のプレゼンデータを人工知能で解析して「成功パターン」を発見したことにあります。具体的には、著者の越川慎司先生のクライアント26社から提供いただいたパワーポイントのスライド51,544枚がそのベース。そこから、「プレゼンの冒頭で『結論』を述べると、その後の成功率は1.8倍高くなる」との結果が引き出されたとのこと。

しかも、これはあくまでも仮説であるとして、実際にクライアントの社員4,513人に「成功パターン」を試してもらったところ、商談の成功率が37%から57%へと向上したとの検証もされています。ここまで徹底してチェックされているので、本書の提唱する内容はかなり精度が高いと想像されます。

ちなみに、著者の越川慎司先生は、もともとはマイクロソフト社でPowerPointの事業責任者をされていたとのこと。つまり、プレゼンテーション・ソフトのプロフェッショナルが、そのネットワークを駆使してプレゼンテーションの成功パターンを導き出したというのが本書です。

効果が検証されたプレゼンのPREP(プレップ)法

では、人工知能が見つけたプレゼンの成功パターンの核心に迫ってみましょう。それが「CREC」と名付けられたプレゼンのシナリオ作成法です。これは、

  • Conclusion (結論)
  • Reason (理由)
  • Example (実例)
  • Conclusion (結論)

の頭文字をとったものです。

…と、これを読んで、「どっかで見たことあるような…?」と感じる方も多いでしょう。実は、プレゼンテーションの「王道」とも呼ばれるPREP(プレップ)法に極めて近いものです。PREP法は

  • Point (結論)
  • Reason (理由)
  • Example (実例)
  • Point (結論)

というものですから、近いというか同じ、ですね。ここで、「なんだ、知ってたよ」と思うことなかれ。PREP法は昔から提唱されている技法ですが、その有効性がデータによって検証されている分けではありませんでした。それが、改めて有効と認識されたのは、極めて意義あることです。

人工知能が教えるスライド作成術

本書では、スライド作成に関しても「成功パターン」が紹介されています。そのひとつが、「スライドの文字数は105文字以内」というもの。いわく、

私たちが集めた5万枚超のプレゼン資料を分析したところ、表紙と最終ページを除いた1スライドの平均文字数は、感じを含めて300文字から400文字でした。しかし、それだと文字が小さくなり、全体的に窮屈で、限られた時間に読むだけで疲れてしまいます。

と言うところから始まり、今度は「読まれるメール、読まれないメール」の分析にうつります。

メール本文の冒頭、一般的に「お世話になっております」などから始まる出だしのブロックが105文字を超えた時点で、閲覧率が一気に下がるのです。

と言う結論にたどり着きます。もちろん、これもデータに基づいて人工知能が分析したものです。そして、これを元に上述の105文字以内という結論にたどり着いたとのことです。

プレゼン成功パターンは分かるが、事例が欲しい

ここまで、類書にはない本書の特徴を中心に説明してきました。ただ、難がないわけではなくて、それは具体例に乏しいことです。たとえば上述の105文字以内、というのも、理屈では分かりますが、どうやってそのような少ない文字数に文章を練り込むかの事例がないと、途方に暮れる読者もいるでしょう。

同様にPREP法 (CREC法)のところも、たとえば最初に失敗例(悪い例)があって、その後に改善例があり、ビフォーアフターで成功率が○%上がった、のような説明があると、読者にとってはより有意義と感じました。あるいは、いっそのこと、人工知能が見つけた成功パターンをとにかく100個並べる、のような内容でも良かったのかもしれません。


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伊藤羊一、澤円著、未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」を読む
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書評 伊藤羊一、澤円著、未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」

「プレゼンの達人に学んで上手になりたい…」。そう思った時手にとりたいのが伊藤羊一、澤円両先生のご著書、「未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」」です。

プレゼンとは相手を動かすこと

まずは、著者のお一人、伊藤羊一先生のパートから紹介します。伊藤羊一先生は、プレゼンの本質を「相手を動かすこと」だと提唱しています。すなわち、

プレゼンが終わったときに、聞き手がどんな状態になっていればゴールなのか。そのことを突き詰めて考えることが必要です。

とのこと。では、どうやって聞き手を動かすのか。そのためのコツを、伊藤羊一先生は「相手になりきって妄想する」ことだと説きます。すなわち、聞き手がいまどんな気持ちか、何を感じているのか、を考えながらプレゼンを練り込む必要があるのです。

そして、そのためにも、主観→客観→主観と言う順序で考えることが重要とのこと。つまり、最初は主観、自分が何を伝えたいかを考えたうえで、一度客観的にそれを見るということでしょう。聞き手の立場に立って見直してみると、自分が伝えたいことは、「もっとこういう風な言い方のほうが伝わる」というのが見えてくるはずです。そして、それを再度主観的な観点から構築するという流れと理解しました。

このような考え方は、実は能の創始者、世阿弥に通ずるものがあるかもしれません。世阿弥は著書「花鏡」の中で、「離見の見」という概念を提唱しました。いわく、

  • 我見(がけん):能役者の自分の視点
  • 離見(りけん):能を見ている観客の視点
  • 離見の見 (りけんのけん):観客の視点で自分を見直している視点

というもので、まさに伊藤羊一先生が説くところと一致していると感じます。

プレゼンはプレゼント

ではつぎに、もう一人の著者である澤円先生のパートにうつります。澤円先生は、「プレゼンは、プレゼント」との提唱をされています。いわく、

プレゼントというのは、相手があってこそ成り立つものです。たとえそのプレゼントの内容(製品・サービス・テーマ)が素晴らしく、誰もがよろこびそうなものであったとしても、「誰に渡すのか」、「いいタイミングなのか」「必要性はあるのか」と言った条件やシチュエーションによって、受取手への響き方がまったく異なってきます。

とのこと。したがって、プレゼンで重要なのは相手のとっての「ハッピーストーリー」を描くことだと提唱されています。すなわち、

プレゼンで最も大切なことは、なにはさておき「顧客視点」ということになります。常に、相手にとっての「メリット」や相手に「持って帰ってほしいもの」を考えて、それを逆算しながら設計することが必要です。

となります。

二つのプレゼンの違いの本質

このように両先生のプレゼンに対する考え方を並べてみると、伊藤羊一先生の考えのほうが一般のビジネスパーソンにはピンとくるでしょう。たとえば営業マンが客先でプレゼンテーションすることを考えてみましょう。そこでの目的は聞き手に動いてもらうこと、つまり自社の製品を買うという意志決定をしてもらうことです。そのためには、

  • 我見:自社の製品の説明をする
  • 離見:お客様から見た自社製品のメリットを示す
  • 離見の見:客観的に見ても、お客様にとっては自社製品を導入することがベストだと納得する

というのがプレゼンの骨子になるでしょう。

ところが、澤円先生スタイルのプレゼンで、お客様にハッピーストーリーを届けるだけでは、営業マンとしては弱くなってしまいます。そんなプレゼンをして、会社に帰ったとして、上司との会話を想像してみました。

上司:「プレゼン、どうだった?うまくいったか?」

営業マン:「バッチリです。お客様にハッピーストーリーを届けてきました」

上司:「おぉ。要するに、受注、と」

営業マン:「いえ、受注とか、そう言うレベルの低い話じゃないんです。大事なのは、プレゼント。ハッピーストーリーを感じてもらえたので成功です」

上司:「つまり、受注ではない、と?」

営業マン:「受注ではないです。でも、当社のファンになってもらいました!」

上司:「おいおい…」

と、トンチンカンな会話になってしまいます。

実はこれは、澤円先生のご経歴とも関係していると考えます。澤円先生は、日本マイクロソフトで「エバンジェリスト」として活躍されていました。つまりは、営業ではなく、より広い「ファンづくり」がその主たる役割です。したがって、「プレゼントはプレゼント」という考えに重きが置かれています。しかも、単に目の前の営業案件だけでなく、より広くビジネスを展開して行くにはこちらの方が重要という考え方もあり得ます。そう考えると、先ほどの営業マンと上司の会話、実はトンチンカンではなく、本質を突いているのかもしれません。

[伊藤 羊一, 澤 円]の未来を創るプレゼン――最高の「表現力」と「伝え方」
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名村拓也著、[デール・カーネギー流]1分で惹きつける プレゼンの技法を読む
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書評 名村 拓也 著、[デール・カーネギー流]1分で惹きつける プレゼンの技法

「聞き手を惹きつけるプレゼンテーションをしたい…」。そんな風に思った時手にとってしまうかもしれないのが、名村拓也先生のご著書「[デール・カーネギー流]1分で惹きつける プレゼンの技法」です。

デール・カーネギー式プレゼンテーション

まずは書名になっているデール・カーネギーから。こちらはアメリカの著述家で、自己啓発の元祖とでも言うべき「人を動かす」の著者です。本書の著者の名村拓也先生は、「デール・カネーギー・トレーニング西日本トレーナー」という肩書きを持っていらっしゃるので、おそらく本書の内容もデール・カーネギーと関連していると思われます。実はここも知りたいところで、そもそもがデール・カーネギー・トレーニングとはどういうものなのか、そしてそのプレゼン手法が他とはどう異なるかを解説していただけると、本書の信憑性がより高まったと感じました。

では、具体的な内容を紹介します。

プレゼンの聴衆はストーリーしか聞かない

著者の名村拓也先生いわく、プレゼンの聴衆はストーリーしか聞かないとのこと。その理由として、科学者のケンダル・ヘイブン氏の言葉が紹介されています。

私たち人類は、10万年もの間、物語(ストーリー)を話すことで情報を伝達してきた。だから、私たちの脳は話を物語として捉えるようにできている

いわゆる進化心理学的な考えに基づくものでしょう。仮にこれが正しければ、よくあるプレゼンの話し方、「第1に…、第2に…」というのは聴衆に聞いてもらえないことになります。では、そもそもとしてストーリーとは何か。著者の名村拓也先生は、時と登場人物と事件が出てくるものと定義します。

ただ、この点に関しては、元祖とも言えるケンダル・ヘイブン氏の定義の方がピンとくるかもしれません。いわく、

A detailed, character-based narration of a character’s struggles to overcome obstacles and reach an important goal.

登場人物が困難を乗り越えて重要な目的を達成するまでの奮闘を詳細に描いた叙述である。

とのこと。この「困難を乗り越えて」というところが、聞き手の興味を惹きつける効果を持つのだと思います。

これに関連して著者の名村拓也先生は、話す内容の順番を変えることを提唱されています。

「わかりやすい説明」をしたい場合は、「結論」は最初に言うべきです。ビジネスの世界では、「まず結論から話す」のは常識ですもんね。ただ、プレゼンで「聴衆を感動させたい」場合、「オチ」は最後です。何があっても絶対に最後です。

この具体的なストーリーも掲載されていますので、ご興味がある方は本書49pをご覧下さい。

プレゼン上級者向け、もしくは「お笑いネイティブ」向け

いろいろな発見がある本書ですが、かなり難易度高め、つまりプレゼン上級者向けと感じました。たとえば上述のストーリーも、言っていることは分かるのですが、具体的にどうやったら自身でストーリーを組み立てられるかが述べられていないため、自分で考えなければなりません。もちろんサンプルも掲載されていますが、「こういうのを自分で作れるようになるにはどうしたら良いんだろう?」と感じてしまいました。

同様に、話す順番。これも、なにを、どういう順番でと言うのがわからないと、自身でプレゼンを構成することはできません。もちろん「オチ」を最後にというのはわかりますが、そもそも「オチ」とは何かがピンときていないと、読者は悩んでしまうでしょう。

実はこれは著者の名村拓也先生の出自にポイントがあるかもしれません。冒頭に記載されていますが、関西生まれの関西育ちとのこと。いわば「お笑いネイティブ」ですから、そのような方には「オチは最後」という言葉だけで「細かいことは言わんでも、できるやんか。知らんけど」となるのかもしれません。ただ、一般の読者には正直なところ実行するのは難しいものです。この観点で、難易度高めと言うことです。


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三輪 開人  著、100%共感プレゼン 興味ゼロの聞き手の心を動かし味方にする話し方の極意を読む
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書評、三輪 開人著、100%共感プレゼン 興味ゼロの聞き手の心を動かし味方にする話し方の極意

「聞き手の共感を呼ぶプレゼンテーションをしたい…」。そう思った時に手にとってしまうかもしれないのが三輪開人先生のご著書「100%共感プレゼン 興味ゼロの聞き手の心を動かし味方にする話し方の極意」です。

プレゼンの新手法「パブリック・ナラティブ」

著者の三輪開人先生が勧めるプレゼンテーションの構成法が、「パブリック・ナラティブ」と呼ばれるものです。これは、

2008年の大統領選でオバマ前大統領の選挙参謀として活躍し、現在はハーバード大学ケネディスクール公共政策の上級講師を務めるマーシャル・ガンツ博士は、オバマ大統領のように「物語」を効果的に用いるプレゼン手法を「パブリック・ナラティブ」と名付け、学生をはじめ、世界のトップリーダーに教えています。

というものです。より具体的には、

なぜ行動する必要があるのか物語を通して伝えることで共感の輪が広がり、人々のアクションが変わってくるというものです。

とのこと。

  1. Story of SELF (私の物語)
  2. Story of US (私たちの物語)
  3. Story of NOW (今の物語)

の流れになります。

オバマ大統領のプレゼンテーション

上記の3ステップの中から「私の物語」を見てみましょう。オバマ大統領の演説を引用します。

私の父は、ケニアの小さな村で生まれ育った留学生でした。少年時代の父は、ヤギの世話をし(中略)祖父は、息子に、より大きい夢を託していました。私の父は努力と忍耐により、奨学金を得て、魅惑の土地、米国に留学しました。

となります。そしてこれを「私たちの物語」に繋げます。

私の両親は(中略)この国の可能性に対する揺るぎない信頼も共有していました。

と、私たち、つまりアメリカ国民の話に繋げるわけです。このような構成であれば、聞き手の共感を得ることができるのでしょう。より具体的には、下記の構造で「3つの壁」を乗り越えられるとのこと。

  • 無関心の壁:そもそも興味がない←「私の物語」で聞き手に親近感を持ってもらう
  • 他人事の壁:自分には関係ない←「私たちの物語」で聞き手に当事者になってもらう
  • 保留の壁:今じゃなくていい←「今の物語」で具体的な行動を示す

ビジネスパーソンには向かない「私の物語」

一方で、上述のパブリック・ナラティブは、その名の通り「パブリック」、つまり公共の利益を向上するようなスピーチのためのものです。これは、多くのビジネスパーソンが行うプレゼンテーションとは、ねらいが異なると想像します。

たとえば、営業活動の一環でのプレゼンテーションで、「私の物語」からはじめたら、聞き手は「ちょっと待て。お前の話なんか聞きたくない」と思ってしまうでしょう。そのような場合はむしろ、「あなたの物語」、つまりお客様の企業はどんな状況で、どんな問題を解決するかを説明することが有効です。

このように、本書が取り上げているプレゼンテーションが特殊なのには理由があって、著者の三輪開人先生は、世界の社会問題を解決するNPO法人e-Educationの代表を務められているからです。従ってビジネスパーソンが読む時には、どうやって活用するかの工夫が必要です。


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小杉 樹彦  著、世界一わかりやすい 20秒プレゼン実践メソッド 特別講義 -The Elevator Pitchの魔力-を読む
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小杉樹彦著、世界一わかりやすい 20秒プレゼン実践メソッド 特別講義 -The Elevator Pitchの魔力

「エレベーターピッチをマスターしたい…」。そう思った時に手にとってしまうかもしれないのが小杉樹彦先生のご著書「世界一わかりやすい 20秒プレゼン実践メソッド 特別講義 -The Elevator Pitchの魔力-」です。

エレベーターピッチは短時間のプレゼンテーション

まずはエレベーターピッチとは何かから。著者の小杉樹彦先生は、エレベーターピッチがあらゆるコミュニケーションの基礎に当たるとして、下記の3つのメリットを説きます。

  • 相手が初対面でも活用可能
  • 「伝わる」ことが第一目的
  • 20秒程度の最短時間で実践

そして、

圧倒的不利な状況から、短時間で奇跡の大逆転を起こす方法論

であると提唱しています。ちなみにエレベーターピッチの由来としては、

起業家がエレベーターの中で投資家と遭遇したときに、目的の階に到達するまでの20秒足らずの間で、自身のビジネスプランをプレゼンしたことから、そうなづけられたといわれている

とのことです。

エレベーターピッチのダイヤモンド・メソッド

では、このエレベーターピッチを上手にやるためにはどうしたらよいか。著者の小杉樹彦先生が提唱しているのが、「ダイヤモンド・メソッド」です。これは、

  • 結論(フック)
  • ポイント (利点1、利点2、利点3)
  • 展望(クロージング)

からなるもので、図で整理するとダイヤモンド型になっているのでこの名称をつけたとのこと(詳しくは本書81pを)。

この中から、「フック」を紹介しましょう。これは英語で「鉤」を意味し、

相手の注意を引くねらいで使う言葉やもののことである

とのこと。そのためには、

  1. 質問からはじめる
  2. 「最も~」からはじめる
  3. 相手を褒めることからはじめる

と言う3つのパターンがあるそうです。

このパートは、読者としては「分かったような、分からないような」という感想です。言ってること自体は分かりますが、では具体的にはどのようなセリフになるかイメージがつかめないためです。具体的な例もあると、より本書の説得力が増すのではないでしょうか。

プレゼンでは想定問答をシミュレーションする

プレゼンテーションと言えば、質疑応答が定番。そのための想定問答を事前に準備することを著者の小杉樹彦先生は提唱しています。とはいえ、どんな質問が出てくるか分からない場合もあるでしょう。そんなときのために、いくつかの質問が本書では紹介されています。

  1. 提案内容は「一言」でいうと何ですか?
  2. なぜ、この提案を考えたのですか?
  3. この提案にかける熱意、思いは何ですか?
  4. この提案は我々にどのような価値を提供できますか?
  5. 最終的に目指すゴールはどこですか?
  6. この提案を実現するための方法は何ですか?
  7. あなた(会社)について教えて下さい。
  8. 競合はいますか?その場合の差別化は何ですか?
  9. この提案で最も困難だと思われる点は何ですか?
  10. この提案を実現するための計画を教えて下さい
  11. この提案はあなた一人(自社)だけで実現できますか?
  12. この提案は「100%の問題解決」or「部分改善」ですか?
  13. 部分改善の場合、その理由を教えて下さい
  14. 市場調査はどのように行いましたか?
  15. この提案を受け入れるにあたって課題はありますか?
  16. 提案を受け入れた後のフォローはありますか?
  17. この提案を受け入れるにあたってお金はかかりますか?

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下野 孝一 , 吉田 竜彦 著、プレゼン基本の基本: 心理学者が提案するプレゼンリテラシーを読む
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書評 kanata著、ダマすプレゼンのしくみ~数値・グラフ・話術・構成に隠された欺く手法とその見破り方

「数字は嘘をつかない」と言う言葉とともに、事実<ファクト>を押さえることの重要性は、言うまでもありません。ただ、「嘘つきは数字を使う」という言葉もあり、気をつけないとファクトのはずが、だまされているなんてことも起こります。それを避けるためにチェックしたいのが、kanata先生のご著書、「ダマすプレゼンのしくみ 数値・グラフ・話術・構成に隠された欺く手法とその見破り方」です。

プレゼンテーションで聞き手をだます写真

「百聞は一見にしかず」なんて言って、目で見たことはそのまま事実<ファクト>であると思いがちですが、これが危ういのはご存じの通り。とくに、メディアを通して見る映像は要注意です。この事例として本書で紹介されているのが、蒙古襲来絵詞。え?あの、歴史の教科書に載っているやつ?と以外に思うかもしれないのですが、まさにこれ。

私たちがよく知っているのは、真ん中にある日本の武者が乗っている馬がお腹から血を流しているものです。解説は、蒙古軍の集団戦法の前に武士が苦戦する、というものです。ところが、他の絵を見ると、鎌倉武士が蒙古軍を圧倒しています。実はこの絵詞、鎌倉軍が優勢な状況を描いたものだそうです。

もっとも、ここまで来ると何が真実かは分からなくなります。本当に鎌倉軍が優勢だったのか、あるいはこの絵自体がファクトの一部しか切り取っていなくて、本当のところは逆だったのではないか…。考えてみれば、この絵詞は作者不詳なので、いっそうその信憑性に疑問が生まれます。

よくあるメラビアンの法則の誤解

本書の素晴らしいところは、メラビアンの法則をしっかりと解説しているところです。よく、

コミュニケーションにおける重要性は、言語情報7%、聴覚情報38%、視覚情報55%

と説明され、これに基づき「資格情報は大事ですよ~」と言う説明につながります。

ところが、実はこれは提唱者のメラビアン先生の考えを曲解したものです。なぜならば、上記の数字はそれぞれのメディアが「矛盾した情報を発している時」の分析だからです。たとえば、ものすごく怒った顔をしながら、「怒ってませんよ (怒)」と言葉で言っても、視覚情報の怒り顔の方が55%の重みを持つ、というのがもともとの意味合いです。

世の中ではメラビアンの法則を誤解、あるいは自分の都合の良いように解釈して視覚情報の重要性を訴える人がいますが、本書の立場は極めてまっとうと言えるでしょう。(詳しくは本書の21pを)。

プレゼンにだまされないための方法論

では、上記のようなアヤシいプレゼンにだまされないためにはどうしたらよいか。著者はいくつかのコツをあげています。たとえば、「3Dグラフは確信犯」というもの。3Dグラフというのは、エクセルで簡単に作れる3次元グラフのこと。ところが、これはだましの温床なのだとか。

筆者はこういった3Dグラフを見た瞬間に、プレゼンテーションとスピーカーへの信頼度が一気に下がります。この信頼度の低下はグラフの部分に限らず、資料全体とスピーカー本人の信頼にまで影響します。すべてを疑わないといけないと覆う程度のリスクを感じます。

とのこと。

同様に、言葉の使い方も重要だとか。たとえば、「正しく」、「適切に」、「最適な」という表現。

筆者は、もし仕事上の書類でこのような表現があったら、具体的な表現に修正するように働きかけます。プレゼンテーションにおいても同様に確認する必要があります。何が「正しい」のか、何が「適切」なのか、どうなることが「最適」なのかが不明瞭だとプレゼンテーションする側とプレゼンテーションを聞く側の認識に齟齬が生まれるためです。

と言うことです。


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書評 下野孝一、吉田竜彦著、プレゼン基本の基本: 心理学者が提案するプレゼンリテラシー

「プレゼンで緊張しちゃうんですけど…解決するために心理学を使えないか」。そう思った時に手にとってしまうかもしれないのが下野孝一、吉田竜彦両先生のご著書「プレゼン基本の基本: 心理学者が提案するプレゼンリテラシー」です。

プレゼンの緊張防止には「知性化」

著者の下野、吉田両先生が提唱しているプレゼン緊張防止の方法論が、

プレゼンに緊張するのは当たり前ですから、あえて自分で自分を見つめてみて、「自分は緊張しているのだな」と再確認してみるのです。これは緊張した自分を意識しすぎて、さらに緊張してしまうという悪循環を防ぎ、自分を客観的に眺める「知性化」と呼ばれる方法です。

というもの。さすがに心理学の先生だけに、説得力があります。ただ、この「知性化」、具体的な方法論がないのが残念なところ。というのは、客観的に自分を見直すことで緊張を抑えることができるというのは、多くのプレゼンターは理解しているところ。問題は、これができないことにあります。「客観的に自分を眺めるといっても…、どうやって?」と言う悩みへの、心理学的な観点からの示唆があると本書の価値が上がると感じました。

破壊的リーダーとプレゼン

本書には、ところどころに「心理学ミニ知識」挟まれていて、興味をかき立てられます。その一覧が下記です。

  • 目標設定理論と自己効力感
  • 記憶の体制化
  • 笑顔とプレゼン
  • 破壊的リーダーシップ行動とプレゼン
  • 記憶の構成要素
  • 分配構成

この中から、「破壊的リーダーシップ行動とプレゼン」を見てみましょう。まず、破壊的リーダーとは、部下の意欲を奪いストレスを与え、精神的に追い込むというネガティブなリーダーです。ところが、このような人たちは自分の実力以上によく見せるのが得意で、結果としてプレゼンテーションが上手だという説があるのです。しかも、そのような人は人から賞賛することが好きですから、プレゼンの練習も熱心に行い、ますますプレゼン上手に。ということは、プレゼンの上手、ヘタだけでリーダーとして的確かどうかを決め手はいけないということでしょう。

薄い冊子にプレゼンの多くを網羅

本書は110ページぐらいの薄さに、プレゼンテーションの多くの要素を盛り込んでいます。下記、目次を記載するので見ていただければ、幅広くプレゼンに必要な要素がカバーされているのが分かるでしょう。

  • プレゼンリテラシー:基礎編
    • プレゼンの目的をはっきりさせる
    • 材料を準備し、脚本を考える
    • 論理的なプレゼンをつくる
  • プレゼンのテクニック:技術編
    • グラフ・表・イラストの基本的な使い方
    • 文の書き方
    • プレゼンターの心得
  • プレゼンへの第一歩:挑戦編
    • 脚本と枠組み
    • スライド
    • プレゼン以前の基本知識


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書評 渡辺克之著、世界一やさしい プレゼン・資料作成の教科書 1年生

「プレゼンで使うパワーポイントに、もっと慣れたいんだけど…」というときに手にとりたいのが渡辺克之先生のご著書、「世界一やさしい プレゼン・資料作成の教科書 1年生」です。

結論から言うと、パワーポイント初心者向けです。逆に、パワーポイントはある程度使える人が、プレゼンテーションの資料作成のノウハウを知りたいと読むと、期待外れでしょう。

箇条書きのプレゼンテーション資料の作り方

箇条書きはプレゼンテーションでよく見るスタイルですが、「どうやってつくるのか」を初心者向けに改めて説明した本は少ないように思います。その点で本書は親切で、懇切丁寧に解説してくれています。それが148pの「箇条書きのつくり方」で、

  1. 簡単な一文にする
  2. 文字数をそろえる
  3. 情報の性質を正しく扱う

というもの。3番目の「正しく扱う」というのは、

内容が並列なら中黒(・)、順番なら①②などの行頭文字を使って表す。

と言うこと。そして、これを実際にパワーポイントでつくるやり方が解説されています。とくに、Shift+Enterキーで段落内改行を解説しているところは親切だと思います。

図解プレゼンテーションの注意点

プレゼンテーションでよくある図解についても詳しく解説されています。基本としては、

図形を説明する文字は、テキストボックスの文字を重ねることをお勧めします。この方法は、図形の形状と大きさにさほど制約を受けず、自由な位置に文字を置くことが出来ます。

とのこと。たしかに、見栄えに徹底的にこだわるのであれば、こちらの方が正解です。ただ、このやり方だと作成するのに時間がかかるうえ、スライドの使い回しの際に思わぬ調整が発生して時間がかかるものです。そこで、図形内に文字を入れる方法も紹介されています。その際に見栄えを良くするための工夫が下記の3点です。

  1. 図形内の文字を折り返さないようにする
  2. 図形内部の余白を小さくする
  3. 文字サイズを小さくする

これ、実はすごく実用的なアドバイスです。というのは、多くの人は図形内で文字を折り返すという設定のままパワーポイントを使っているから。これだと文字を臨んだ位置に配置できずに、微妙な見にくさが出てしまいます。しかし、文字を自動では折り返さない設定にして、上述のShift + Enterで自分で折り返すようにすれば、それだけで見栄えアップです。

プレゼンの内容面では物足りなさも

初心者向けにパワーポイントの使い方を解説するという本書の趣旨を踏まえると、やむを得ないところではありますが、プレゼンの内容面に関してはもう少し詳しい解説が聞きたかったところです。たとえば、33pの「必ずストーリーを描こう」というところ。この提言自体は正しいものですし、起承転結を否定しているところも妥当です。

とはいえ、読者としてはそのストーリーが描けないから悩んでいるわけであって、「どうやったら説得力のあるストーリーが作れるのか」の解説があるとより親切でしょう。もちろん、著者の渡辺克之先生も、

  • ホールパート法:結論・全体→各論→結論・まとめ
  • プレップ法:結論→理由→具体例→結論

という「型」を示していいますが、これはモノゴトの説明の順番であって、「ストーリー」ではありません。むしろ、33pに記載されている目的→根拠→お願い、をより詳しく知りたいと思いました。


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岡本 純子  著、世界最高の話し方――1000人以上の社長・企業幹部の話し方を変えた! 「伝説の家庭教師」が教える門外不出の50のルールを読む
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書評 岡本純子著、世界最高の話し方――1000人以上の社長・企業幹部の話し方を変えた! 「伝説の家庭教師」が教える門外不出の50のルール

ときどき、「スティーブ・ジョブズみたいなプレゼンがしたいんです」という人がいますが、そんな人が手にとってしまうかもしれないのが岡本純子先生のご著書、「世界最高の話し方――1000人以上の社長・企業幹部の話し方を変えた! 「伝説の家庭教師」が教える門外不出の50のルール」です。

プレゼンで話すことは自分視点を「離す」こと

著者の岡本純子先生がまず強調されているのは、「聞き手中心のコミュニケーション」です。

多くの日本人は「言えば、伝わる」とばかりに、やみくもにボールを投げ続けています。その「得意球」が「自分が話したい話」ですが、あまり受け止めてはもらえません。(中略)人は「自分が聞きたい情報だけ」を受け入れる生き物と言うこと。(中略)「自分への執着やエゴ」を「手放す」、つまり、自分視点を「離す」ことが、「話す」ことを上達させる第一歩になるのです。

これは、雑談の時はもちろん、プレゼンテーションにおいても当てはまります。逆に言えば、プレゼンが下手な人というのは、この点を分かっていないものです。結果として、「当社の製品は…」、「他社との差別化は…」のような、自分の話が中心になってしまうのです。そうではなく、相手が聞きたいこと、すなわち、お客様自身の「ウチの会社の問題を解決してくれるのか?」にフォーカスを当てることが正解です。

スティーブ・ジョブズも使った五感に訴えるプレゼン

次に著者の岡本純子先生が提唱されているのが「語感をくすぐる言葉で相手に絵を見せる」という手法です。これがバツグンに上手い人として、スティーブ・ジョブズ氏の事例が出されています。

スティーブ・ジョブズは、有名なスタンフォード大学のスピーチで、「貧乏だった」という代わりに、こう表現しました。私は(大学の)寮の部屋もなく、友だちの部屋の床の上で寝起きしていました。食べ物を買うために、コカ・コーラの瓶を店に返し、5戦をと書き集めたりもしました。(後略)

これならば、聞き手の気持ちをグッと惹きつけることができます。

なお、本書のこのパートでは「相手に絵を見せる」ということで、ビジュアルな説明が中心ですが、実際上はVASKの法則と呼ばれる、4つの感覚をプレゼンに盛り込むと、イキイキとしたプレゼンが出来ます。これは、

  • Visual (視覚)
  • Audio (聴覚)
  • Smell (嗅覚)
  • Kinetic (触感)

の頭文字をとったものです。実は人によってこの4つの中でどこに心惹かれるかは分かれるという説があります。したがって、視覚優位なビジュアルタイプの人には上述の「絵を見せる」という説明が響きますが、聴覚優位の人には響かないこともあり得ます。その場合には、たとえば、

コカ・コーラの瓶をお店に持っていくときの、「カチャカチャ」という瓶がふれあう音は、いまでも耳に残っています

のような説明をすると、より効果的に伝えることが出来るでしょう。

13文字で短文言い切りプレゼン

著者の岡本純子先生がもう一つ提唱されているのが、言いたいことを一言でまとめるクセをつけるということです。

もっとも訴えたい結論やキーメッセージをインパクトのある強い一言にギュギュッと凝縮する工程は、雑誌や新聞の記事に、タイトルや見出しをつけるようなものです。

という前提で、

まずは、一言「13文字以内」が目標です

とのこと。この根拠として、新聞の見出しが1行9-11文字で2行だとあわせて20文字程度、そしてYaooニュースの見出しが13文字であることを挙げています。

ただ、これはどちらかというとビジュアル寄りの説明と感じました。言葉メインのプレゼンでは、13文字は3秒足らずで終わってしまいます。たとえば13文字はキャッチフレーズ的にパワーポイントで示しておいて、言葉での説明は75文字、15秒程度の短文言い切りを積み重ねていくというスタイルで理解してもよいと思いました。


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渡邉 秀美 著、客先に連れ出されてしまったエンジニアのためのプレゼン力向上講座を読む
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書評 渡邉 秀美著、客先に連れ出されてしまったエンジニアのためのプレゼン力向上講座

プレゼンテーションはビジネスパーソンにとってハードルが高い分野ですが、エンジニアの方はなおさらそう感じるようです。そんな方が手にとってしまうかもしれないのが、渡邉 秀美先生のご著書、「客先に連れ出されてしまったエンジニアのためのプレゼン力向上講座」です。

プレゼンで棒読みにならないためのエモーショナル音読

著者の渡邉 秀美先生は、ご自身でプレゼンをするときには原稿を用意してそれを読むというスタイルだそうです。これは、プレゼンテーションが「自分中心」になってしまうため、一般的にはお勧めしません。ただ、現実問題として、書名にあるような「客先に連れ出されてしまったエンジニア」の方は、そのようなスタイルになってしまうこともあるのでしょう。

その際、原稿を用意したときに陥りがちな「棒読み口調」を避けるための方法論が面白かったので紹介します。それが、エモーショナル音読というもの。これはプロのナレーターの方から教えてもらった手法とのことで、

原稿を読む際、漢字の読みを書き込み、不自然なところで切らないように、息継ぎの場所に斜め線を入れています。さらに、読みに強弱を入れるために、強調したい部分に○印をつけます。

というものです。

サンプルが本書138ページから掲載されており、それを使った3ステップの練習方法も紹介されています。そして、その練習の際に大事なのが、録音すること。さらに録音を聞いて10点満点で点数をつけることで、自身の成長度合いを可視化するという方法を提唱されています。

プレゼンテーション構成の4ステップ

プレゼンテーションの内容面に関しては、お客様に提供する価値を中心に構成することを提唱されています。これを整理するのが、

  1. 機能
  2. お客様にとって良いこと
  3. 上述の2が起こる理由
  4. 実現後のお客様の一言

という4ステップ。たとえば、データセンターで自動バックアップをとる機能を提案する際には、下記のようになります。

  1. バックアップが自動
  2. 夜9時までの立ち会いがなくなる
  3. 顧客データが社内サーバーではなくデータセンターでの一括管理になるため
  4. 子供と一緒にお風呂に入れる日が増えるな~

というものです(さらに詳しい記載が、本書178pにあります)。

一方で、この整理の仕方はまだ「自分中心」と感じてしまいます。本当に顧客に響くプレゼンテーションを構成するのだったら、お客様の抱える問題を中心に考え、それを中心に構成した方がよりよいのではないでしょうか。その際には、高杉尚孝先生が提唱されている、TH法による3つの問題の定義が有効であることはいうまでもありません。

プレゼンでは顧客目線に切り替える

エンジニア特有のプレゼンテーションの悩みとして、「どうしてもシステム目線になってしまいがち」というものへの対処法も本書では紹介されています。そもそもとして、エンジニア目線は、

  • ハードソフトの構成やスペック
  • 最新機能

などが重要視されがちです。それを、お客様目線だと、

  • これを使えば本当に仕事が楽になるか
  • 自分たちが使いこなせるか
  • これまでと何が変わるか

などが重要になります。これを切り替えるためにお勧めなのが、

社内にいらっしゃるアルバイトや派遣会社の事務職の方、(中略)必ず部外者に一度聞いてもらい、分からない語句や意味不明なところを教えてもらう

という手法です。確かにこれならば、視点の切り替えも出来そうです。

ただ、どうせならば、お客様と近い立場の人に事前に聞いた方が効果的ではないかと思いました。他社へのプレゼンで、聞き手がその会社のアルバイトや派遣社員であることはまず持ってないでしょう。であれば、あいてのキーパーソンに近い年齢・職種の方を確保しておいて、意味不明なところを教えてもらえるようになると、さらに効果的でしょう。


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書評 ヨッヘン・バイヤー著、プレゼンのパワーを最大限にする50のジェスチャー

「プレゼンテーションで使うジェスチャーを研究したい…」そう思ったとき手にとってしまうかもしれないのがヨッヘン・バイヤー先生のご著書「プレゼンのパワーを最大限にする50のジェスチャー」です。

欧米人向けのプレゼンテーションで使えるジェスチャー集

まず結論ですが、本書で扱うジェスチャーの多くは、欧米人向けのプレゼンテーションでこそ使うべきです。逆に言うと、日本人が日本人に対して行うプレゼンテーションでは、あまり利用のシーンがないでしょう。それもそのはずで、著者のヨッヘン・バイヤー先生は、ドイツのシュヴェービッシュ・グミュント教育大学の教授。米国ではミシガン州グランドバレー州立大学でも教鞭を執ったご経験もあるそうですが、生粋の欧米人です。

とはいえ、テクニックの内いくつかは日本人にも気づきを与えてくれるので、本書表の後半で紹介します。

日本人はまず持ってやらないプレゼンのジェスチャー

まずは、欧米人向けのプレゼンテーションのテクニックの紹介から。たとえば、テクニック4で紹介されている「片手を無造作にズボンのポケットに入れる」というもの。著者いわく、

姿勢のよさは人を大きく見せる。男性の場合は、片手を無造作にズボンの前ポケットに入れることで、その存在感をさらに強調できる。

ということですが、日本人向けのプレゼンテーションではよっぽどの理由がない限りポケットに手を入れることはしません。外国人なら、「かっこいい~」となるかもしれませんが、日本人がやったら間違いなく「ずいぶん傲慢なヤツだな」と思われます。

似たような話として、テクニック19の「聴衆にウィンクする」というもの。しかもご丁寧なことに、

少しアレンジを加えて、たとえば、ウィンクをするときに指を2本こめかみに当てると、注意喚起力はもっと高くなる。

という説明がイラスト付きで紹介されています。これも、「絶対」と言っていいくらい日本人向けのプレゼンテーションではないでしょう。

ただ、逆に言うと、たとえば欧米のピッチコンテストに出場する場合などは、本書にあるくらいオーバーな(と日本人には思える)ジェスチャーを身に付ける必要はあるでしょう。

アイコンタクトも使い分ける

一方で、日本人にも「使える」と思ったテクニックの代表格がテクニック1の「相手の『第三の目』を見る」というもの。これは、

相手に視線を向けるときは、相手の目を見るのではなく、その眉間あたりに「第3の目」があると思って、そこを見つめるとよい。そうすれば、自分の優位性をうまく示すことができる。

というものです。「ほんとうかなぁ」と思うかもしれませんが、次の説明は納得感がありました。

さまざまな研究の結果、社内で高い役職についている人ほど、ごくたまにしかアイコンタクトをとらないことが明らかになっている。「周りとコミュニケーションをとることに関心がない」という態度をとることで、自分の地位の高さを示しているのだ。

たしかに、会議でも人の話を聞いているんだかいないんだか、目をつむったままの偉い人がときどきいますが、あんな感じなのでしょう。であれば、第三の目を見ることで、微妙に目を合わせているのだか、目を合わせていないのだかで「偉い人感」を演出するのは「あり」だと思いました。

ちなみに、この第三の目と対をなすのが、テクニック10の「相手の『心の目』を見る」というもの。これは、

相手の鼻を3等分した一番上あたりに目を向ければ、視線の持つプラスの作用を強めることができる。

というものです。要するに、アイコンタクト一つとっても漠然とやるのではなく、目的を持って細かく使い分けようと言うことでしょう。

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書評 荒木 シゲル著、伝わり方が劇的に変わる! しぐさの技術 (DOBOOKS) (日本語)

「プレゼンテーションの時のジェスチャーを学びたい…」そう思う人に手にとっていただきたいのが荒木シゲル先生のご著書「伝わり方が劇的に変わる! しぐさの技術 (DOBOOKS) (日本語)」です。

プレゼンにおけるジェスチャーの重要性

著者の荒木シゲル先生は、ジェスチャーを含めた非言語(ノンバーバル)と言語(バーバル)が一致することがコミュニケーションにおいては重要であると提唱しています。

「楽しいです」と言いながら、態度ではそう見えないとき、つまり「バーバル」と「ノンバーバル」の矛盾が起きてしまったとき、相手はあなたの言葉を疑います。

という指摘は、プレゼンテーションにおいては特に重要でしょう。どれだけ口では「御社のためになるご提案をします」と言っても、早口で落ち着きない態度だったら、聞き手はその内容を疑ってしまうでしょう。したがって、プレゼンテーションの準備においては、内容を固めることも大事ですが、同時にジェスチャーも十分に練り込む必要があるでしょう。

プレゼンは「強い」ポーズで

では、どうやってジェスチャーを練り込むかと言うときに参考になるのが、「ステイタス」という概念です。もともとは演劇用語だそうですが、ある状況における関係者の力関係を表す言葉です。より詳しく言うと、

ステイタスが高ければ、権力が強く「相手を支配できる立場」です。また、ステイタスが低ければ、力が弱く「支配される立場」です。

となります。そして、プレゼンの場においては、もちろん目指すべきはステイタスが高い姿です。そのために、下記の三つの強さを体現する姿が提唱されています。

  • 精神的な強さ:上半身は胸を張って、「首を長く、背中は広く」を意識した状態。関節を開き、大きく空間を使うことで自信に満ちあふれていてポジティブな印象になる
  • 戦略的な強さ:あえて自分の手の内を明かさないで「ミステリアス」な印象を与えるスタイルです。斜めに構えたり顔やカラダのラインを隠すことで、ミステリアスな印象になる
  • 肉体的な強さ:全身を力ませて、動物的に肉体的な強さをアピールする暴力的なポーズです。腕を組んだり、アタマを上に傾けることで、態度が大きい印象になる

なお、この強いポーズと弱いポーズを対比したイラスト入りで本書65pから解説されていますので、ご興味がある方はぜひチェックして下さい。

プレゼンのジェスチャーでドラマチックな演出をする

ここまで、プレゼンでは「強い」ポーズ、もしくはステイタスが高くあるべきだと言う立場で紹介してきましたが、実は本書の魅力はそれ「だけ」を進めているのではない点です。

むしろ、ステイタスが変わる瞬間にこそほんとうに人を引き付けるポイントがあるのではないかとの提唱がされています。

人がおもしろいと感じる「ドラマチックな瞬間」をステイタスで説明すると、キャラクター同士のステイタスのレベルの高低差が大きいとき、キャラクターのステイタスが急激に変化するとき、複数のキャラクターがステイタスの高さを競い合うとき

とのこと。プレゼンテーションに活かすならば、立ち居振る舞いにおいてもステイタスの高低を使い分けることで、メリハリを出すことができるのではないでしょうか。たとえば、顧客の直面している課題を指摘するときにはあえて「弱い」ポーズをとる、それを解決するための提案をするときは「強い」ポーズをとる、という応用はあり得るでしょう。

下記、ここまで紹介した以外の学びがあった点をピックアップします。

  • 恐ろしいモンスターを細かく表現する代わりに、怖がる主人公のリアクションを見せるとします。すると、観客はキャラクターに感情移入して、「自分にとって一番怖いモンスター」のイリュージョンを見るわけです。
  • 私が行うワークショップで、発想力を高める目的で行う「イス以外」というゲームがあります。
  • テーマに沿った、ただし「場違いなステイタス」のふるまいは、奇抜な演出のヒントになります。
  • 会話をするときにアタマを少し傾けたしぐさは、子どもの話を聞くときなど、相手が緊張しているときに、優しく話を聞いている印象になります。
  • ロンドン大学のベアトリズ・カルヴォ・メリノ教授は、「バレリーナ」、「カポエイラのダンサー」、「ダンスの経験がない人」という3つのグループの人たちに、様々なダンスのビデオを見てもらう実験を行いました。その結果、ダンス未経験者に比べて経験者のほうが、より強く脳が反応することが分かりました。
  • 社会心理学者のポーラ・ニーデンタールという人が中心になって、次のような実験を行いました。被験者たちを2つのグループに分けて、他人の顔の表情の変化を観察してもらうというものです。ひとつのグループは普通にただ観察するだけですが、もう一方のグループは口にエンピツをくわえて、顔の表情を作りにくくしてもらったそうです。(中略)エンピツをくわえているグループは、自由に顔を動かすことのできるグループと比較して、他人の顔の表情の変化をうまく読み取ることができなかったそうです。
  • おしゃべりをしている生徒たちに、教室から出て行くように伝えます。それでも出て行かない場合は、彼らが出て行くか、おしゃべりをやめない限り、授業を進めることはできない、と他の生徒たちに伝えます。
  • 「お待たせしていてすみません。お茶のおかわりはいかがですか?」「いえ、結構です」
  • ステイタスが低くなるアクション:素早く、軽い動きをする。小さい空間を使って振る舞う。高い声でしゃべる。自分の過去やプライベートのことについて話す。すぐにリアクションし、行動に移す


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書評 下地 寛也著、プレゼンの語彙力 おもしろいほど聞いてもらえる「言い回し」大全

プレゼンテーションで聞き手を説得しようと思ったら、言い回し1つにもこだわりを持ちたいものです。そんなとき参考になるかもしれないのが下地寛也先生のご著書、「プレゼンの語彙力 おもしろいほど聞いてもらえる「言い回し」大全」です。

プレゼンの言い回しを7つの側面から解説

著者の下地先生の目的は、

スティーブ・ジョブズのようなプレゼン力をすべての人に提供する

ことだそうです(「はじめに」)。

その観点でプレゼンテーションを考えると、大事なは言い回し。つまり、

プレゼンの上手い人の共通点は…相手の心に響く言い回しをたくさん知っていること。つまりプレゼンのボキャブラリー(語彙)が豊富なのです。

とのこと。これを、

  1. 自信
  2. 興味
  3. 驚き
  4. 納得
  5. 信頼
  6. 共感
  7. 決断

という7つの側面から学べるのが本書の特徴です(ちなみに3ページには「共感」が2回出てきますが、これは「興味」の誤植かと思われます)。

プレゼンで自信を示すには壮大な敵を作る

具体的に見てみましょう。まずは第1章、「自信を示す」言い回しでは、「壮大な敵をライバル視する」というテーマで下記の例が示されています。

このサービスを世界一に育てましょう→グーグルを一緒にやっつけましょう

(矢印の左側がありがちな例、右側がそれを改善した例)

すなわち、

具体的なライバルを示すほうが、聞き手はイメージしやすく話のスケール感がハッキリと伝わります

とのこと(11p)。

言われてみればスティーブ・ジョブズ氏もこの話法をよく使っていて、たとえばiPadを最初に紹介したプレゼンテーションでは、キーボードをいわば「壮大な敵」に仕立て上げ、「キーボードなんかつまらない。私たちにはもっと素晴らしいポインティング・デバイスがあるじゃないか。それが指だ!」という言い方をしていました。

全100個のプレゼンで使える表現集

これらの表現が全100個も載っているので、かなり本書はお得感が高いのではないでしょうか。下記、「自信を示す」、「興味を引く」からいくつか紹介します。

自信を示す言い回し

  • 勝手に革命を起こす:これは今までとは違うダイエットなんです→これこそダイエット革命です
  • 勝手ランキングにする:この電子レンジはかなり優れています→これはまさに電子レンジ業界の王様ですね
  • マイ法則を作る:料理を大皿で提供するといいんです→これを大皿料理の法則と名付けました
  • 勝手セオリー化する:この方法がいいですよ→この方法がデファクトスタンダードですよ
  • 先見性を示す:私はそれがずっといいと思っていたんです→私は25年前からそれがいいと思っていたんです
  • 時間配分を示す:それでは少し長くなりますが説明させていただきます→私の説明が20分その後質疑応答が10分あります
  • 最後列の人に話しかけ会場を一体化させる:マイク入ってますね。では始めます→一番後ろの方この声量で聞こえますか
  • 挑戦的な前フリをする:とてもいい話があるんです→私の話に騙されないように聞いてくださいね
  • 計画的に脱線する:そういえば今思いついたのですが→ここから少し脱線しますが
  • その場で取捨選択できる力を示す:えっと時間がないので駆け足で説明します→時間が足りないので重要でないここは飛ばします
  • あえて聞き手をモヤモヤさせる:えっとわかりにくいですか。すいません →最後に腑に落ちるのでまだわからなくてオッケーです
  • 自分の考えだということを強調する:男性も家事をするべきだと思います→私はこう思うんです。男性も家事をするべきだと
  • 結論初めに言う:状況を順番に説明しますね企画がスタートしたのは→結論から言うと企画は中止にすべきです

興味を引く言い回し

  • いつもの話を裏話にする:中国に進出予定なんです→ここだけ話ですが中国に進出する予定なんです
  • しぶしぶお伝えする風で話す:コツを説明しましょう→本当はお伝えしたくないのですがコツがあります
  • 秘密・トリックがあるように見せる:素材を使うといいですよ→ちょっと種明かしをしますと秘密はこの素材です
  • 成功者の共通点を挙げる:勝てる会社は研究費を使っています→勝てる会社の共通点は研究費を使ってることです
  • 成功と失敗の違いを示す:忍耐力がないから成功しないんです→成功する人としない人の一番の違いは忍耐力なんです
  • 失敗する人ではなく残念な人という:→意味のない仕事に全力で取り組むのはダメなんです→残念な人は意味のない仕事に全力で取り組みます
  • 相手の頭に3つの空箱をおく:たくさん大事なポイントあるので順番に説明すると→大事なポイントは3つです。まずは1つめは
  • 課題・大切なことを文頭に置く:子供のために準備しまうことは課題です→課題は子供のために準備してしまうことです
  • ランキング化する:ユーザーの不満はたくさんありますまず→ユーザーの不満トップテン。まず10位ですが
  • 問を立てる:痩せるために糖質カットすべきです→痩せるために何をすべきか糖質カットです
  • 皆が思う疑問を言う:女性でもできるんです→ここで疑問が湧くでしょう。女性でもできるかなと
  • 一般論に疑問を呈する:それでも管理してるとは言えないでしょう→それが本当に管理していると言えるのでしょうか
  • 今日あったエピソードに触れる:今日はスマホアプリの紹介です。早速本題ですが→今日はスマホアプリの紹介ですが、今朝実は
  • 濃密な話のお得感を出す:30分しかないのでうまく伝わらないかもしれませんが→相手3ヶ月かかる内容を要点だけ30分で使えます
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書評 今まで誰も教えてくれなかった人前で話す極意 〜年間330講演 プロの講演家が語るスピーチのコツ〜

スピーチや講演からも、プレゼンテーションの学びがあるのではないか?

そんな風に思う方に手にとって欲しいのが、鴨頭嘉人先生のご著書、「今まで誰も教えてくれなかった人前で話す極意 〜年間330講演 プロの講演家が語るスピーチのコツ〜」です。

著者は講演のプロフェッショナル

まずは、著者の鴨頭先生のご経歴。19歳でマクドナルドにアルバイトとして入社されて、店長まで昇進。32歳の時に、マクドナルド3300店舗中、お客様満足度・従業員満足度・セールス伸び率全国1位を達成されたとの事。その後講演活動に転じて、現在は本の副題にもあるとおり、年間で330日、つまりは毎日のように講演されている方です。

ただ、面白いのは、「日本一最低な店長」だったという黒歴史もあるとか。青森県弘前市のマクドナルドで、前々お客様が来てくれず赤字続きだったのを大逆転したというストーリーもお持ちで、そこら辺が講演活動に転じた原動力なのかとも想像しました。

youtubeのプレゼン動画連動で理解が深まる

注目すべきは本書の仕立て。というのは、youtubeと連動していて、その章で解説されていることが、実際のyoutube動画で見ることができます。題材がスピーチなので、これはとてもわかりやすい構成だと思います。

たとえば、スピーチの原稿をどう用意するかを説明した第2章9節。そもそもが、スピーチを5分以内のショートスピーチと5分以上のロングスピーチに分けたうえで、ショートスピーチの場合はフル原稿を、ロングスピーチの場合はトリガー原稿を作ることを推奨されています。

そして、それを解説したのが下記の動画。

尺が3分ちょっとですから、今風に言うとマイクロラーニングで、ピンポイントで知りたいことだけ学ぶことができて便利です。

このような動画へのリンクが40個以上盛り込まれていますから、本よをんで動画を見る、動画を見て本を読み返す、と往復運動でスピーチ力が上がりそう。

聞き手に共感してもらうためには相手に思いをはせる

具体的なテクニックで面白いと感じたのが、聞き手に共感してもらう方法論です。大前提としては、聞き手に共感してもらうためには、相手の立場を考えた話をする必要があります。その際、聞き手がどんな人なのか、創造力を働かせるのが大切だとのこと。

人前で話す機会がある方は、聞き手の方の日常を想像する力を養う事によって、忘れられない珠玉のメッセージを届ける事ができるようになるのです。

というポイントは、なるほどと思わされました(144p)。

これを実践するために、鴨頭先生は自身が主催する話し方の学校の生徒さんに、

通勤電車の中で、目の前の乗客の日常生活を想像してみよう

と言う宿題を出されるのだとか。もちろん、実際のところは分かりません。しかし、服装、持ち物、動作、肌の色艶などから、その人の仕事や性格、悩みや喜びを想像するのです。

そのようなトレーニングを繰り返す事により、聞き手を想像する力が高まり、結果としてどのような聞き手からも、「これは私たちの話だ」と思ってもらえるのだとか。印象的なエピソードでは、鴨頭先生がタクシー業界に招かれて講演したとき。業界の事はご存じなくても、

タクシードライバーの人がいなかったら、今自分はどれだけ困っただろう?

と思いをはせる事で、

タクシードライバーの方は世の中の困っている人を、1年365日24時間探して探して助け続けているスーパーヒーローなんです

と言うメッセージにたどり着いたとの事です。

微妙に異なるプレゼンと講演

プレゼンと講演(スピーチ)は、同じ人前で話すと言っても目的が異なります。講演やスピーチの場合、話して聞き手に共感してもらい、満足してもらえばそれで成功でしょう。しかし、プレゼンの場合には、LeADER原則、すなわち

聞き手に期待した行動をとってもらう事

が目的です。ところが、これがピンときていなため、プレゼンで失敗する人があまりにも多すぎます。

自分が話したい事を話すのではなく、聞き手が聞きたい事を話してイエスを引き出すのがプレゼンです。そのためには、上記の聞き手に思いをはせるというのは、とても役立つと感じます。

ましてや、プレゼンの場合、講演とは違って聞き手はある程度絞られています。営業だったらアタック先の意志決定者、社内の会議だったら具体的に○○さんという名前まで分かるでしょう。

そのうえで、聞き手の方に思いをはせて、この人が今解決したいと思っている問題は何かを考えれば、それだけでプレゼンの成功につながるというものです。

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書評 クロトンビル研修所で教えられるプレゼンが見える? 世界最高のリーダー育成機関で幹部候補だけに教えられている仕事の基本

クロトンビル研修所はご存じでしょうか?米GE(ゼネラル・エレクトリック)のリーダーシップ養成機関で、数多くの名経営者を輩出したことで知られています。そこで教えられているプレゼンテーション研修を紹介してくれているのが、田口先生のご著書「世界最高のリーダー育成機関で幹部候補だけに教えられている仕事の基本」です。

クロトンビルで教えるプレゼンの基本

プレゼンテーションと言っても、その内容が多岐にわたります。クロトンビルをはじめとしたGEの研修では、その中でも

  • 簡潔なメッセージ
  • ストーリーとして伝える

と言う二つの要素を重点的に教えられるとのことです。

逆に言うと、スライドの作り方には重点が置かれていないとのこと。最近の日本ではデザイナーの人が書いたスライドのデザイン面にフォーカスした本が売れている傾向にある気がします。たとえば色使いやフォントの種類や大きさなど。もちろんそれはそれで重要なのでしょうが、GEでは、

「伝え方」も大切ですが、それより「何を伝えるか」がもっと重要である

とのことで(6p)、上述のようにメッセージにフォーカスが当てられているのでしょう。考えてみれば当たり前で、どれだけデザイン面で優れたスライドでも、中身がスカスカでは意味が無いので、このアプローチは正統的だと感じます。

プレゼンテーションは「削れ」

では、どうやって簡潔なメッセージを作成するかと言うとき参考になるのが、プレゼンテーションを「削る」と言うトレーニング。

「まず、書いてあるものを3分の1にして、さらにそれを3分の1にしてください」

と言う指示で研修が進むそうです。これによって、そのプレゼンで何が言いたいかという「コア・メッセージ」が明確になるとのこと。

ちなみに、3分の1を2回繰り返すので、ボリューム的には最初のバージョンの9分の1になるので、研修参加者から、

「最初から9分の1にしてはいけないのですか」

と言う質問も出るそうですが、これは、

「脳の仕組みによって、2段階に分けて絞り込んだ方がスムーズに作業できます」

とのこと。一般の人はクロトンビルの研修に参加するわけにはいきませんが、このテクニックなら取り入れられそうです。

プレゼンのメッセージをつくるためのテンプレート

なお、96ページには、コアメッセージを中心にどのようにプレゼンを構成するかのテンプレートが掲載されています。これは、コア・メッセージを中心にA4の用紙を4つの証言に分けたもので、上から反時計回りに、

  • 問題
  • 今後の課題
  • インパクト
  • 解決策

からなるものです。サンプルでは、「どのようにすれば経営幹部の候補者不足を解消できるか」というコア・メッセージが示されているので、コア・メッセージは「そのプレゼンで言いたいこと」というよりも、「そのプレゼンで解決すべき課題」という捉え方でいいのかもしれません。

このテンプレートでメッセージを固めたら、次のステップとしては、ストーリー・ボーディングの作成に取りかかるとのこと。パワーポイントではなくてポストイットを使うことを著者は提唱していますが、先ほどのテンプレートで考えたポイントを転記していくアプローチです。これによって、プレゼンテーションの1枚1枚のスライドのタイトルだけを作成していくことになります。そして、このタイトルだけを見ながら、

「書かれている言葉の抽象度・具体度にばらつきがないかどうか」

を確認しながら中身を詰めていくとのこと。

なお、一歩引いた視点からは、著者は「プレゼンテーションのABCD」というプロセスを提唱しています。これは、

Analyze Audience それぞれ聞き手の分析

Build Message メッセージ構築

Construct Slide スライド構成

Deliver Presentation 伝え方の工夫

からなるもので、先ほどのポストイットを使ってスライドのタイトルを並べるというアプローチは、「メッセージ構築」と「スライド構成」の間をつなぐものと理解しました。

実際に見てみたいリーダーたちのプレゼン

様々な内容を紹介している本書ですが、不満があるとすれば、実際にGEではどのようなプレゼンのスライドを使っているのか見えないこと。もちろん、スライド作りは重要視していないのでしょうがないのですが、それでも「じゃあ、最終形はどうなるの?」というのを知りたいのは人情というものです。

そこで、youtubeで実際のプレゼンを見つけてきました。どちらも基調講演(Keynote speech)なので、いわゆる「プレゼンテーション」とはちょっと違いますが、それでも本書のニュアンスは感じ取ることができます。

GEの前CEOジェフ・イメルト氏によるプレゼンテーション

GEのCEOジョン・フラナリー氏によるプレゼンテーション

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