「聞き手を惹きつけるプレゼンテーションをしたい…」。そんな風に思った時手にとってしまうかもしれないのが、名村拓也先生のご著書「[デール・カーネギー流]1分で惹きつける プレゼンの技法」です。

デール・カーネギー式プレゼンテーション

まずは書名になっているデール・カーネギーから。こちらはアメリカの著述家で、自己啓発の元祖とでも言うべき「人を動かす」の著者です。本書の著者の名村拓也先生は、「デール・カネーギー・トレーニング西日本トレーナー」という肩書きを持っていらっしゃるので、おそらく本書の内容もデール・カーネギーと関連していると思われます。実はここも知りたいところで、そもそもがデール・カーネギー・トレーニングとはどういうものなのか、そしてそのプレゼン手法が他とはどう異なるかを解説していただけると、本書の信憑性がより高まったと感じました。

では、具体的な内容を紹介します。

プレゼンの聴衆はストーリーしか聞かない

著者の名村拓也先生いわく、プレゼンの聴衆はストーリーしか聞かないとのこと。その理由として、科学者のケンダル・ヘイブン氏の言葉が紹介されています。

私たち人類は、10万年もの間、物語(ストーリー)を話すことで情報を伝達してきた。だから、私たちの脳は話を物語として捉えるようにできている

いわゆる進化心理学的な考えに基づくものでしょう。仮にこれが正しければ、よくあるプレゼンの話し方、「第1に…、第2に…」というのは聴衆に聞いてもらえないことになります。では、そもそもとしてストーリーとは何か。著者の名村拓也先生は、時と登場人物と事件が出てくるものと定義します。

ただ、この点に関しては、元祖とも言えるケンダル・ヘイブン氏の定義の方がピンとくるかもしれません。いわく、

A detailed, character-based narration of a character’s struggles to overcome obstacles and reach an important goal.

登場人物が困難を乗り越えて重要な目的を達成するまでの奮闘を詳細に描いた叙述である。

とのこと。この「困難を乗り越えて」というところが、聞き手の興味を惹きつける効果を持つのだと思います。

これに関連して著者の名村拓也先生は、話す内容の順番を変えることを提唱されています。

「わかりやすい説明」をしたい場合は、「結論」は最初に言うべきです。ビジネスの世界では、「まず結論から話す」のは常識ですもんね。ただ、プレゼンで「聴衆を感動させたい」場合、「オチ」は最後です。何があっても絶対に最後です。

この具体的なストーリーも掲載されていますので、ご興味がある方は本書49pをご覧下さい。

プレゼン上級者向け、もしくは「お笑いネイティブ」向け

いろいろな発見がある本書ですが、かなり難易度高め、つまりプレゼン上級者向けと感じました。たとえば上述のストーリーも、言っていることは分かるのですが、具体的にどうやったら自身でストーリーを組み立てられるかが述べられていないため、自分で考えなければなりません。もちろんサンプルも掲載されていますが、「こういうのを自分で作れるようになるにはどうしたら良いんだろう?」と感じてしまいました。

同様に、話す順番。これも、なにを、どういう順番でと言うのがわからないと、自身でプレゼンを構成することはできません。もちろん「オチ」を最後にというのはわかりますが、そもそも「オチ」とは何かがピンときていないと、読者は悩んでしまうでしょう。

実はこれは著者の名村拓也先生の出自にポイントがあるかもしれません。冒頭に記載されていますが、関西生まれの関西育ちとのこと。いわば「お笑いネイティブ」ですから、そのような方には「オチは最後」という言葉だけで「細かいことは言わんでも、できるやんか。知らんけど」となるのかもしれません。ただ、一般の読者には正直なところ実行するのは難しいものです。この観点で、難易度高めと言うことです。


画像はアマゾンさんからお借りしました。

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