「プレゼンテーションの見栄えを良くしたい…」。そう思った時に手にとってしまうかもしれないのが日比海里先生のご著書「ひと目で伝わるプレゼン資料の全知識 (できるビジネス)」です。
デザイナー系の方のプレゼン書籍と言えば…
まずは著者の日比海里先生のご経歴から紹介します。
デザイナーであった親の影響もあり、幼いころからデザインに関心を持ち、デザインの中ですくすくと成長。学生時代にグラフィックデザインのスキル・ノウハウを習得し、大学卒業後は大手出版社に新卒で入社。
ということなので、プレゼンテーションと言ってもデザイン寄りのテーマが本書のメインになります。目次を見ても、
- Chapter3 伝わるレイアウトのセオリー
- Chapter4 伝わる文字のセオリー
- Chapter5 伝わるカラーのセオリー
- Chapter6 伝わる図解と図形のセオリー
- Chapter7 伝わる画像のセオリー
- Chapter8 伝わるグラフと表のセオリー
- Chapter9 伝わるアニメーションのセオリー
など、「いかに見せるか」が中心になっています。その中に100を超えるセオリー(コツ)が紹介されているので、お得と言えばお得。
ただ、この手のデザイナー系の方が執筆したプレゼンテーション書籍ならば、森重湧太先生の「一生使える 見やすい資料のデザイン入門」の方が見やすく理解しやすいと感じました。典型的には、「Z字に配置すると理解しやすくなる」というページ(66p)。サンプルのスライドが掲載されていますが、これが「Z字」に配置されているというのがいまいちピンときません。シロートがパッと見ると、円グラフがあってその隣にメッセージが並んでいて、視線の動きが横に思えるのですが、プロのデザイナーから見るとZ字型なんでしょうか…ね?
プレゼンの著作権を表示するフッターは必須
一方で、パワーポイントの機能の説明は本書は丁寧です。そもそもとして、Youtubeと連携してパワーポイントの操作が分かるというのは丁寧な作りと感じました。
また、Chapter10 伝わるプレゼン資料作成のためのPoerPoint設定には、パワーポイントのテンプレート機能が詳しく解説されているので参考になります。そもそも、世の中にはパワーポイントのテンプレート機能を理解していない人もいますから、そのような人は一読する価値はあります。
一方で、デザイナーの方にありがちですが、見栄えを気にするあまりやや本質からかけ離れた提言があるのも気になるところです。たとえば、「フッターと日付は入力しなくていい」というところ。パワーポイントのスライドの最下部のフッター、必要ないと提言されていますが(251p)、これは誤解を与えてしまうと懸念します。
実務においては、フッターは必ず表示すべきです。その内容は、コピーライトの但し書きです。よくある、「当資料の著作権は○○に帰属し、本資料の一部または全部を、著作権者の許可なしに複製、転載することを禁止します。 」というあれです。
昨今のように、Zoomでのプレゼンテーションが多くなると、勝手にコピー(保存)された資料が一人歩きしてしまうリスクもあります。万が一そうなった場合にも、著作権をしっかりと謳っておくことはは必要であり、そのためにはむしろフッターは全ページに表示すべきと考えます。
グラフを使ったプレゼンテーションのコツ
本書でとくに参考になるのは、グラフに関するところです。たとえば、199pの「グラフに使って言い色数は3色だけ」というところは、なるほどと感じました。グラフでデータ系列が4つ以上あれば、色も4色以上必要と思っていましたが、それはシロート考え。著者の日比海里先生先生いわく、「使う色は3色、伝えたい部分だけに使います」とのこと。
たしかに、「そのスライドで言いたいこと」が決まれば、そこにフォーカスを当てるための色使いになるというのは納得です。ちなみに、本書の216pで紹介されていますが、パワーポイントの発売元、マイクロソフト社の公式サイトでもグラフの選び方などのコツが紹介されています。こんなところをチェックすると、よりパワーポイントの使い方が上手になりそうです。
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