「パワーポイントのスライドをきれいに作りたい…」。そう思ったときに手に取りたいのが宮城信一先生のご著書、「「デザイン」の力で人を動かす! プレゼン資料作成「超」授業 プレゼン上手に明日からなれる」です。
ハッキリ言って、良著。この手の本の中ではイチオシです。
意外と難しいデザイナーによるプレゼン本
デザイナーさんによる資料作成の指南は、プレゼンテーション本の一分野をなしています。ところが、これが意外とくせ者。デザイナーさんのように感性が鋭い人から見ると当たり前のことが、素人にはわかりづらく、結果としてほんの解説がなかなか腹落ちしないことがあるためです。
加えて、デザイン的要素はあくまでもプレゼンテーションの一部分に過ぎないという問題もあります。しかも、どちらかというと「幹」というよりも「枝葉末節」でしょう。「幹」は中身<コンテンツ>です。「何を、どういう順番で伝えるのか」という構成を考えたり、その背後にある聞き手の問題意識を理解することこそが王道です。
もちろん、見た目も良いに越したことはありませんが、コンテンツがグダグダなのに見た目だけ整えても意味はありません。この点がデザイナーさんが手掛けるプレゼンテーションの本では見過ごされているものも少なくありません。
「なぜそのプレゼン資料なのか」を解説してあるのが親切
ところが、本書においては、デザイン的に優れたスライド資料を見せた後、「何が違うのか」、「良いスライドを作るにはどうしたら良いのか」が懇切丁寧に説明されているので、シロート(非デザイナー)でもその技を学ぶことができます。
たとえば、「視線の流れ」というところ(46p)。
- 視線の流れにはZ型とF型がある
- 視線の流れの中に余分な情報を入れない
- できるだけ目線を動かさせない工夫をする
という3つのノウハウが事例入りで紹介されていて、「なるほど!」と膝を打ちます。
同様に、「対比づくりのコツ」においても、
- 性質の異なる要素を対比させコンテンツを強調する
- 並べる方向は上下もしくはさゆうのどちらか
- できれば形を揃えて並べる
- 画像は必要に応じてトリミングする
- 画像のサイズ変更は縮小のみ、歪めないように
- 画像は「裁ち落とし」で利用するのも手
- 対比で違いや変化を強調する
と細分化されています。
一世一代のプレゼンはないビジネスシーン
また、本書のもう一つの良心的な点として、プレゼンの「使い回し」を前提にしていることが挙げられます。プレゼンの有名な事例としてスティーブ・ジョブズ氏のものが取り上げられることは多いものです。スタンフォード大学の卒業式や、iPhoneの紹介のイベント等ですね。しかし、普通のビジネスパーソンはそのような「一世一代の晴れ舞台」的なプレゼンテーションに取り組む機会はまれです。
むしろ、似たような内容を、異なる相手に対して、微妙に立場を変えて説明する機会の方が多く、この観点でプレゼン資料は「使い回しが効く」ように作るべきです。この観点で、「時間をかけずにカッコいい表を作るテクニック」(102p)は正しい指摘がされています。
他にも様々なノウハウ(実例スライドが136枚収録されているそうです)が紹介されているので、プレゼンの資料作りに悩む方は一度は手にとって損はないと思います。
画像はアマゾンさんからお借りしました
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