「AI<人工知能>の力を借りてプレゼン上手になれないか…」。そんな風に思った時手にとりたいのが越川慎司先生のご著書「稼げるプレゼン」です。正直、Amazon上ではそれほど人気があるわけではありません。しかし、資料的価値が高いのでプレゼン上手になりたいビジネスパーソンであれば一度は手にとっていただきたい「隠れた名著」です。

人工知能が見つけたプレゼンの成功パターン

本書の最大の特徴は、実際のプレゼンデータを人工知能で解析して「成功パターン」を発見したことにあります。具体的には、著者の越川慎司先生のクライアント26社から提供いただいたパワーポイントのスライド51,544枚がそのベース。そこから、「プレゼンの冒頭で『結論』を述べると、その後の成功率は1.8倍高くなる」との結果が引き出されたとのこと。

しかも、これはあくまでも仮説であるとして、実際にクライアントの社員4,513人に「成功パターン」を試してもらったところ、商談の成功率が37%から57%へと向上したとの検証もされています。ここまで徹底してチェックされているので、本書の提唱する内容はかなり精度が高いと想像されます。

ちなみに、著者の越川慎司先生は、もともとはマイクロソフト社でPowerPointの事業責任者をされていたとのこと。つまり、プレゼンテーション・ソフトのプロフェッショナルが、そのネットワークを駆使してプレゼンテーションの成功パターンを導き出したというのが本書です。

効果が検証されたプレゼンのPREP(プレップ)法

では、人工知能が見つけたプレゼンの成功パターンの核心に迫ってみましょう。それが「CREC」と名付けられたプレゼンのシナリオ作成法です。これは、

  • Conclusion (結論)
  • Reason (理由)
  • Example (実例)
  • Conclusion (結論)

の頭文字をとったものです。

…と、これを読んで、「どっかで見たことあるような…?」と感じる方も多いでしょう。実は、プレゼンテーションの「王道」とも呼ばれるPREP(プレップ)法に極めて近いものです。PREP法は

  • Point (結論)
  • Reason (理由)
  • Example (実例)
  • Point (結論)

というものですから、近いというか同じ、ですね。ここで、「なんだ、知ってたよ」と思うことなかれ。PREP法は昔から提唱されている技法ですが、その有効性がデータによって検証されている分けではありませんでした。それが、改めて有効と認識されたのは、極めて意義あることです。

人工知能が教えるスライド作成術

本書では、スライド作成に関しても「成功パターン」が紹介されています。そのひとつが、「スライドの文字数は105文字以内」というもの。いわく、

私たちが集めた5万枚超のプレゼン資料を分析したところ、表紙と最終ページを除いた1スライドの平均文字数は、感じを含めて300文字から400文字でした。しかし、それだと文字が小さくなり、全体的に窮屈で、限られた時間に読むだけで疲れてしまいます。

と言うところから始まり、今度は「読まれるメール、読まれないメール」の分析にうつります。

メール本文の冒頭、一般的に「お世話になっております」などから始まる出だしのブロックが105文字を超えた時点で、閲覧率が一気に下がるのです。

と言う結論にたどり着きます。もちろん、これもデータに基づいて人工知能が分析したものです。そして、これを元に上述の105文字以内という結論にたどり着いたとのことです。

プレゼン成功パターンは分かるが、事例が欲しい

ここまで、類書にはない本書の特徴を中心に説明してきました。ただ、難がないわけではなくて、それは具体例に乏しいことです。たとえば上述の105文字以内、というのも、理屈では分かりますが、どうやってそのような少ない文字数に文章を練り込むかの事例がないと、途方に暮れる読者もいるでしょう。

同様にPREP法 (CREC法)のところも、たとえば最初に失敗例(悪い例)があって、その後に改善例があり、ビフォーアフターで成功率が○%上がった、のような説明があると、読者にとってはより有意義と感じました。あるいは、いっそのこと、人工知能が見つけた成功パターンをとにかく100個並べる、のような内容でも良かったのかもしれません。


画像はアマゾンさんからお借りしました。

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