「プレゼンでメリハリが大事」ってのは当たり前で、私たちプレゼンテーション・カレッジでは「メリハリの四原則」を提唱していました。
- 声の大きさ
- 声の高さ (ピッチ)
- 話すスピード
- 間
ですね。ただ、「提唱してました」と言ったのは、実はここにもう一つ要素を加えた方が良いんじゃないかとプレゼンテーション・カレッジ内で議論になっているのです。それが、「抑揚(よくよう、イントネーション)」。たとえ同じセリフであっても、抑揚一つで意味が変わるわけじゃないですか。誰かと話している中で、「わかりました」という時にも、
- 仕方なさそうに(行きたくないのに無理やり買い物を頼まれて)
- ハッとして(迷宮入りしていた事件の犯人がわかって)
- 探るように(表情がさえない生徒が本当にわかったのかと疑って)
- 嬉しそうに(質問の答が誰よりも早くわかって)
など、いろんなパターンがありますよね。
プレゼンで<引きつける>話し方
じゃあ、プレゼンの時には、この抑揚をどうやって使いこなしたらいいの?と言う時に参考になるのが、倉島 麻帆先生の〈引きつける〉話し方が身につく本です。
倉島先生と言えば、本業のアナウンサーの他にも、様々なところで講師をされていて、これまで25,000人以上の方を教えたとか。そのノウハウが1冊で身に付く~というのは、実はこの本、CDつき。本で読んだだけではピンとこなかったイントネーションが、みるみるうちにわかってきます。自分でプレゼンのトレーニングやリハーサルを行うときにも使えるはず。ちなみに、先ほどの「わかりました」の例も本から引用させていただきました(63p)。
なお、倉島先生はプレゼンテーション研修やセミナーでの講師を務める機会も多いとのことで、直接指導を仰ぎたい方は倉島先生のホームページをチェックしてみてください。
プレゼンの時の抑揚の基本は、
出だしを高く強く、だんだんとなだらかに下げていくのが、日本語としてはもっともスタンダードな抑揚
と言うことなのですが、気をつけたいのは挨拶の言葉。「おはようございます」や「ごめんください」などは、意識して2音節目にアクセントをつけると明るく元気に聞こえるとのことです。これ、たしかにすごくわかって、なぜかというと私が苦手にしているお天気キャスターはまさにこれと逆のパターン。某局の朝の番組に出ている人ですが、やたらと1音節目にアクセントをつける人がいるんです。
今日は午後から雲がでて…
お出かけの際には傘をお忘れなく…
と言う話し方が、耳についてしかたありません。なので、この方が画面に出てくると、ついついチャンネルを変えてしまうんですよね。まあ、お天気キャスターなのでプレゼンそのものが本職ではないのでしょうが、この本を薦めてあげたくなりました。
ちなみに、声の調子には
昇調 (声の調子が上がること)
降調 (声の調子が下がること)
平調 (声の調子が平坦)
の三つがあり、
抑揚はこれらの組み合わせで使われます。この上がり下がりによって、感情や気持ちの変化を表現することができます。
とのこと。
プレゼンで使えるジェスチャー5つの「型」
ちなみに、この本がよりお得感が高いのは、「声」だけじゃなくて「動作」面でもプレゼンの参考になること。具体的にはジェスチャーですが、「これさえおぼえておけばいい」という5つの型が紹介されています。
- 該当箇所・方向を示す
- 数を示す
- 形・大きさを表す
- 推移・変化、循環を表す
- 感情・共感を表す
この中でもとくに参考になるな、と思えたのが。感情・共感のところ。
- 両手を胸に添えると心を込めて語っている印象
- 片手を胸にあてると自信のある印象
- 胸から両手を左右に広げると、女性たちが輝く印象
など、いわれてみればその通りなのですが、意識しないと使えないので練習していきたいと思います。
さらに、「空間を自由に使う」というところでは、聞き手から見て左側が過去、右側が未来を表すことを利用して、過去のことを話す時はワザと左側に、未来の話をする時には右手に移動すると言うテクニックが紹介されています。
ちなみに、演劇の世界では、聞き手から見て右手側を上手(かみて)、左手側を下手(しもて)と言って、上手な演出家さんほど使い分けていますね。たとえば、機動戦士ガンダムで有名な富野由悠季先生も、「映像の原則」の中で、強いものや正しいものは上手側から表れる、などを解説しています。ビジネスのプレゼンが多い方は、上手・下手はあまり気にしたことがないかも知れませんが、演劇などに裏打ちされた聞き手の感情を揺さぶる技術なので、使ってみるとこれまでとは違う反応が引き出せるかも知れません。もっとも、右利きの人がT3ルーチンを普通にやると、スクリーンの右側(上手)に立つことになるので、実は普段からやっている人はやっているのでしょうけど。無意識のうちに。
ちなみに、聞き手の感情に配慮するという点では、NLP心理学のタイムラインというテクニックも紹介されています。これは、
過去の話をする時には、わざと(自分から見て)右手を動かしながら話す、未来の話をする時には左手を動かしながら話すと、聴衆に対して意識づけができます
というもので、プレゼンターが右手を動かすと、必然的に聞き手は左側を見ることになり、過去のことを考える時の自然な動作になるのでしょう。ある意味、アイコントロールの一種ですね。
なお、最後にCDのトラック一覧を掲載します。もしも、この中でピンと来るものがあれば、ぜひチェックしてみてください。
- イントロダクション
- 最もいい声が出る姿勢
- 腹式呼吸のトレーニング
- ハミングをしてみよう!
- リップロールをしてみよう!
- ロングトーンをしてみよう!
- 滑舌・発声練習
- 北原白秋の「五十音」
- 言葉のトレーニング
- 抑揚で気持ちを伝えよう
- 山縣の抑揚(イントネーション)で話す
- 正しいアクセントの4つのパターン
- どこを強調するかで意味が変わる
- 大切なことを言う前には2,3秒の間を入れる
- 注目を浴びたい時に間を入れる
- 好かれるには、相手にあわせて間を使おう
- スピードや距離が表現できる
- 時間が表現できる
- 明るい挨拶の声
- 温かい気持ちで対応する声
- 質問したり、たずねる声
- お礼の気持ちや感謝を伝える声
- 礼儀正しく敬意を伝える声
- 誠意を持ってお詫びする声
- 意欲を見せる声
- 会議での司会
- 商談でのプレゼンテーション
- 自己紹介
- 1文を短くする
- オノマトペで心にグッと届ける
- アンカーリングを使う
- 段階的リラクゼーション法
- シュルツ博士の「自律訓練法」
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