ときどき、「スティーブ・ジョブズみたいなプレゼンがしたいんです」という人がいますが、そんな人が手にとってしまうかもしれないのが岡本純子先生のご著書、「世界最高の話し方――1000人以上の社長・企業幹部の話し方を変えた! 「伝説の家庭教師」が教える門外不出の50のルール」です。
プレゼンで話すことは自分視点を「離す」こと
著者の岡本純子先生がまず強調されているのは、「聞き手中心のコミュニケーション」です。
多くの日本人は「言えば、伝わる」とばかりに、やみくもにボールを投げ続けています。その「得意球」が「自分が話したい話」ですが、あまり受け止めてはもらえません。(中略)人は「自分が聞きたい情報だけ」を受け入れる生き物と言うこと。(中略)「自分への執着やエゴ」を「手放す」、つまり、自分視点を「離す」ことが、「話す」ことを上達させる第一歩になるのです。
これは、雑談の時はもちろん、プレゼンテーションにおいても当てはまります。逆に言えば、プレゼンが下手な人というのは、この点を分かっていないものです。結果として、「当社の製品は…」、「他社との差別化は…」のような、自分の話が中心になってしまうのです。そうではなく、相手が聞きたいこと、すなわち、お客様自身の「ウチの会社の問題を解決してくれるのか?」にフォーカスを当てることが正解です。
スティーブ・ジョブズも使った五感に訴えるプレゼン
次に著者の岡本純子先生が提唱されているのが「語感をくすぐる言葉で相手に絵を見せる」という手法です。これがバツグンに上手い人として、スティーブ・ジョブズ氏の事例が出されています。
スティーブ・ジョブズは、有名なスタンフォード大学のスピーチで、「貧乏だった」という代わりに、こう表現しました。私は(大学の)寮の部屋もなく、友だちの部屋の床の上で寝起きしていました。食べ物を買うために、コカ・コーラの瓶を店に返し、5戦をと書き集めたりもしました。(後略)
これならば、聞き手の気持ちをグッと惹きつけることができます。
なお、本書のこのパートでは「相手に絵を見せる」ということで、ビジュアルな説明が中心ですが、実際上はVASKの法則と呼ばれる、4つの感覚をプレゼンに盛り込むと、イキイキとしたプレゼンが出来ます。これは、
- Visual (視覚)
- Audio (聴覚)
- Smell (嗅覚)
- Kinetic (触感)
の頭文字をとったものです。実は人によってこの4つの中でどこに心惹かれるかは分かれるという説があります。したがって、視覚優位なビジュアルタイプの人には上述の「絵を見せる」という説明が響きますが、聴覚優位の人には響かないこともあり得ます。その場合には、たとえば、
コカ・コーラの瓶をお店に持っていくときの、「カチャカチャ」という瓶がふれあう音は、いまでも耳に残っています
のような説明をすると、より効果的に伝えることが出来るでしょう。
13文字で短文言い切りプレゼン
著者の岡本純子先生がもう一つ提唱されているのが、言いたいことを一言でまとめるクセをつけるということです。
もっとも訴えたい結論やキーメッセージをインパクトのある強い一言にギュギュッと凝縮する工程は、雑誌や新聞の記事に、タイトルや見出しをつけるようなものです。
という前提で、
まずは、一言「13文字以内」が目標です
とのこと。この根拠として、新聞の見出しが1行9-11文字で2行だとあわせて20文字程度、そしてYaooニュースの見出しが13文字であることを挙げています。
ただ、これはどちらかというとビジュアル寄りの説明と感じました。言葉メインのプレゼンでは、13文字は3秒足らずで終わってしまいます。たとえば13文字はキャッチフレーズ的にパワーポイントで示しておいて、言葉での説明は75文字、15秒程度の短文言い切りを積み重ねていくというスタイルで理解してもよいと思いました。
画像はアマゾンさんからお借りしました。
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