プレゼンに興味がある方ならば、TEDはご存じでしょう。その主催者、クリス・アンダーソン氏が裏話を披露しているのが「TED TALKS スーパープレゼンを学ぶTED公式ガイド」。
ただ、本書で解説されていることを実際のプレゼンテーションに取り入れるのは、一工夫必要です。というのは、本書は上級者向けに、「難しいことを難しいまま」書いているから。たとえば、第6章は「ストーリーを語る」です。プレゼンテーションでストーリーを語れたら、それは説得力がでますよね。ただ、問題はそれをどうやって実現するか。本書で述べられているのは、
- 観客が共感できるような登場人物を主人公にすること
- 好奇心、社会的な関心、実際の危機を通して緊張を盛り上げること
- 適度な量のディテールを盛り込むこと
- 最後に笑いや感動や驚きできちんと締めくくること
だけ。もちろん言っていることは分かりますが、どうやって実現するかは、かなりハードルが高いですよね。たとえば、「笑いや感動や驚きできちんと締めくくる」なんて、それができないから多くの人は苦労しているわけで。
同様に、第5章の「つながる」では、「観客を味方につけるには、ユーモアが役立つ」というテーマで解説がされていますが、これも極めて実現するのが難しいものです。例によって本書は正しい、けれど実現するのが難しい指針しか示してくれていません。いわく、
- トークの主題がユーモアに適しているときには、それに関連する逸話を語る
- 言い間違えたり、音響に不具合があったり、スライドが動かなかったりしたときのために気の利いた言葉を準備しておく
- ビジュアルにユーモアを盛り込む
- 風刺を使う
- タイミングが決定的に重要
- 特に大切なこと、面白くない人間が、面白いふりをしないほうがいい
というもの。
もちろん、一つ一つのアドバイスは間違っているわけではありませんが、実際にやろうとすると、具体的に何から手をつけて良いか分かりません。
ただ、だからといって本書の価値がなくなるわけではありません。なぜならば本書で解説されたテクニックはすべて実際のTEDのプレゼンテーションに裏打ちされたものだから。たとえば先ほどのユーモアの話も、実際のTEDで見ると、「なるほど!」と分かります。具体例で見てみましょう。ケン・ロビンソン卿のユーモアは、プレゼンの冒頭で発揮されます。
「ここまで本当に素晴らしかったですね。…というわけで、もう帰らせてもらいます。」と笑いをとっています。
あるいは、ブライアン・スティーブンソンさんは司法制度の不平等という極めてシリアスなテーマも、おばあさんの話をすることで笑いに変えています。
「私のおばあちゃんはタフで、強くて、パワフルで、いつだって家庭内の口げんかを終わらせる役割でした」
「もっとも、その口げんかを始めるのもおばあちゃんだったんですけど」(1:38)
ということで、本書はTEDの動画と一緒に読むことをお勧めします。そうすれば、TEDスピーカー並みのプレゼンテーション力がつくことでしょう。
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