セミナー講師養成にあたっては、予備校の講師の教える技術が参考になります。

というのも、予備校業界というのは厳しい世界。合格率という目に見える形で成果が表れてしまいますし、受講者の心をつかむかも必要です。そんな世界でもまれた方は講師として超一流なわけで、考えてみれば、テレビで大ブレークした林先生ももともとは東進ハイスクールの講師です。

ということで、予備校の講師が使っている教える技術の参考になるのが、今回紹介するものです。コミックでおなじみの東大受験マンガ「ドラゴン桜」が、原作の持つ熱さと受験のノウハウはそのままに小説になって登場です。

受験ノウハウとは言いながら、先ほども書いたとおり、セミナー講師養成に通ずる心構えやスキルアップのヒントが満載なのが本書の魅力。

「子どもが勉強が苦手になるのは、勉強ができないからではない。『自分はできない』と思い込むからできなくなるのだ。勉強に対する子どもの認識を変えてやれば、成績は必ず上がる」

なんて主人公のセリフは、セミナー講師はもとより、子供を「部下」に勉強を「仕事」に置き換えて読むと、ビジネス全般にも適用できそうです。

小説なのでサクサク読めるし、ぜひ通読することをオススメします。

評価は

★★★★★ (何度でも読む価値あり)(評価の基準はこちら)

小説 ドラゴン桜―挑戦!東大模試篇

●「子育ては、まず当たり前のことを何度も教えて、当たり前のことが当たり前にできるような子どもにすることが肝心だ。当たり前のことをくり返し教えられた子は、地道な努力が苦になりにくい。…人間として大成するための下地は、とっぴなものではできていない。」

●「人間の大多数は、できるだけ優秀な遺伝子を伝えるために、じぶんにとって一番ふさわしい異性を探すようにプログラムされている。だが、現実には、身近にいてある程度満足できる相手で我慢しなければならないように生まれついている。恋愛感情は、このジレンマを解消し、手近にいる相手を「この人こそ世界でたった一人の人」と思いこませるために脳自身が創り出す、いわば錯覚に過ぎないのだ」

●「下手に日本語に英語が浸透しているために、日本人は、様々な英語を脳内でカタカナに変換してしまいがちだけど、これは、英語の正しい発音を聞き取るためには大きな障害になっているんだ」

●日本語ではカクテルパーティー効果や音素修復-聞き取れない音でも人間の耳は欠けているものを補う機能がある-が機能するが、英語だと聴覚と結びついた脳は能動性を発揮しない→発音強化がリスニングにつながる
-単音の発音
-音の変化
-プロソディ(言語に固有の音声的な特徴)→シャドウイング
 プロソディが身に付くと、初見の文章に対して、文の構造や意味のまとまりが直感的に理解できるようになる

●「英語は言葉。読解や英作文、リスニング、単語や熟語の暗記-とバラバラに勉強するのではなく、全てをひっくるめて一気に身につける」

●授業とは教師が一人で作るものではない。生徒という受け手によって共有されて始めて結実するものだ。そして彼らはみな理解している。今日この瞬間、この場で共有されている授業が、このときここにしか存在していない唯一無二のものであることを。

●不可能を可能にする。その挑戦に勝る快楽がはたしてこの世にあるだろうか。

小説 ドラゴン桜―メンタル超革命篇

●東大の問題を作っている先生たちは、じぶんの問題の正答率が低いと、してやったりと思うのではなく、なぜ受験生は解けなかったのだろう、解いて欲しい問題だったのに、と、ガッカリして寂しがるそうだ。ここに集中力を持続させるヒントがある。受け身の精神状態になると、集中力はとぎれやすくなる。だから、わからないときこそ、積極的に問題に問いかけてみるのだ。

●私立文系頭と東大脳のちがい:「それは、情報の大切さに対する認識だ。…東大でたやつは違う。彼らは自分で新たに考えることが面倒くさいのだ。だから、人がすでに考えていて効果のある方法を探し、それを利用した方が楽で効率的だと考えるんだ」

●ある大手予備校の講師の発見。合格する子は用さえ済めばすぐに帰る→頭の切り替えの早さとうまさ

●「目標を立てる時は、二重に準備するといいのです。…最低限成し遂げたい目標と、模試できたら理想的な目標の二つを」

●「ホメることで、相手が自分を操ってもっと働かせようとしていると感じるだろうということだ。…教育の現場で子どもをホメることの究極の目的は何か?生徒にやる気を起こさせ、目標に向かって努力するためのエネルギーを供給することだ。…では、おだてと正しいホメ方ではどう異なるのか?それは、コーチングの核には、つねに「承認<アクナリッジメント>」があるという点だ。

●ホメ方テクニック10ヶ条
具体的に褒める
抽象的に褒める
すぐ褒める
「これは」と思うことを、いつまでもしみじみと褒める
理由をつけて褒める
理由なしで褒める
ほめ言葉のバリエーションを増やす
感謝の言葉も褒め言葉である
第三者も褒めていたと伝える
その子の思い入れの大きいことを褒める

●「子どもが勉強が苦手になるのは、勉強ができないからではない。「自分はできない」と思い込むからできなくなるのだ。勉強に対する子どもの認識を変えてやれば、成績は必ず上がる」

●世界史は後ろからさかのぼれ

●人間の脳は、具体的でいきいきとしたイメージをインプットされたとき、その実現に向かって全力で動き出すようにできている。…脳の力を全開にするためには、はっきりした目標が必要なのだ。そしてその目標は、具体的で数量化しやすいものほど達成度が高い」

●学力向上の鍵となるのは、情動をコントロールすること。…これは、解剖学的に言うと、大脳新皮質と大脳辺縁系の間にある神経回路をスムーズに機能させる、ということになる。…ただし、大脳新皮質はものすごく学習能力が高くて、学んだことをすぐに記憶できるが、情動の脳である大脳辺縁系は、反対に、学習速度が非常に遅い。呑み込みが悪いのだ。こいつに学習させるためには、より多くの時間をかけて、反復して教え込む必要がある。つまり忍耐が必要だ。けれど、その代わり成果は長く維持できる。感情をコントロールする術は、一度身につければ、簡単には忘れないってことだ。…勉強をすることで子どもたちが身につけるのは、知識だけじゃない。学ぶ経験を通して、やればできるという自分の能力への信頼感や、目標を設定する能力、その目標に向けて努力する過程でぶつかる挫折や障害を乗り越える力などを身につける。それが自信や自尊心を育み、人生に対して前向きに立ち向かう土台を築くのだ。」

●試験の先にある、客観性を持つことの真の目的は、自分を知ること、です。…自分を客観視することなく大人になった人間は、小さくまとまってしまいやすい。自分自身の可能性を最大限に発揮して、自分らしく存分に生きてゆくために、他人の考えを学ぶことが役に立つのです。

●一つの段落には一つの主張だけ。…この一文のことをトピックセンテンスという。でも、トピックセンテンスを見つけるのは、…じつはとても簡単なんだ。段落の始めか終わりにあることが最も多いから、まずそこをチェック。…But, however, in conclusion, to sum upなど、必ず分かりやすい接続詞句があるんだ。

小説 ドラゴン桜―魂のエンジン篇

●「自分の環境すべてにマルを付けろ、と言ったのを思い出せ。なんでも肯定的に考えることが成功の秘訣だ」

●新しい自分に変わろうとするとき、もとの自分に引き戻そうという強い重力が外からも内からもかかる。何かに挑戦しようと思ったら、まずは全力を尽くしてその重力を振り切らなければならないのだ。

●たしかにこどもの成功を願うのは、子どもを愛している親なら当然ですが、「絶対に成功しなければこの子は駄目になる」と思うのは良くない。はやる気持ちを押し殺して、結果を求めず、努力していること、頑張っていること、それだけに目を向けるのです。親以外の大人の世界、すなわち社会というものは、なんだかんだ言って結果しか見ません。「努力や過程が大事だ」と言葉では簡単に励ましますが、やはり社会の最終的な評価は、その子どもが出した結果に対してのみ。他人からすれば、途中の頑張りまでいちいち見ていられないのです。そんな世の中で、親以外に誰が子どもの努力を認めてあげられるでしょう

●予言は単純な幼稚な魔法の言葉などではない。相手に対する気持ちが込められた、本気の言葉なのだ。「お前たちは必ずできる。東大合格する」と予言された生徒は、それを信じることで頑張り続けることができ、予言した教師も、それを実現すべく意識的・無意識的に生徒を熱心に指導し、そのおかげでますます生徒の学力は上がっていく。その結果、最終的に予言が成就される。

●個性も自主性も規律と統制の中から生まれるんだ。野放しで育てられた子どもは、決まりを無視して自分勝手に行動するだけ。そんなものは、個性でも自主性でも何でもない。規律を守ることと、自分のしたいことを両立するために知恵を絞って工夫する-つまり、規則を利用して自分を磨くことが、個性と自主性を伸ばす鍵となるんだ。

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