「あがり症克服協会」ってご存じでしょうか?
その名の通り、人前で話すときに「あがる」、つまり緊張してうまくいかない人に、それを克服する方法を伝授しているそうです。その理事長を務める鳥谷先生のご著書が、「1分のスピーチでも、30分のプレゼンでも、人前であがらずに話せる方法」です。
人前であがるのは体が緊張しているから
具体的な方法論をいくつか紹介しましょう。例えば、「ストレッチ」。というのも、鳥谷先生によると
あがり症の人はたいてい体がガチガチに硬いです。
これをほぐすためのストレッチで、筋肉が緩むと精神状態もリラックスできるとのこと。とくに、眉の間にある皺眉筋(しゅうびきん)や首から肩にかけての僧帽筋をほぐすのがお勧めだとのことです。
あるいは、緊張のあまり手足の震えが起こるのを防ぐためには「3首ユルユル体操」がいいとのこと。その名の通り、首と手首と足首という体の中の3つの「首」がつくパートをユルユルさせるというものです。
さらに、あがりやすい人は姿勢が悪いと言う共通点があり、これを避けるのが「壁立ち」。壁に背中をペタッとつけたとき、下からかかと、ヒップ、肩甲骨、後頭部が壁についているのが正しい立ち方だとか。
このように、具体的かつすぐ出来るノウハウが紹介されているのが、この本の魅力だと思いました。
本当に大事なのは腸内環境
一方で、あがりを防ぐ根源的な方法は「腸内環境」をよくすることですから、これにも触れられていると、読者にとっての本書の価値は一層上がったのではないかと思います。ましてや、「セロトニン不足は、上がりにも影響を及ぼす」(171p)、「『お腹が痛くなる』悩みの対処法」(175p)まで説明しているわけですから、もう一歩踏み込んだ内容が欲しかったところ。
実はスポーツの世界でもメンタルが強い選手は腸内環境が良いというのは「常識」になっていて、たとえば元浦和レッズの鈴木啓太選手は、腸内環境を整えるコンサルティングを提供する会社を設立しています。もちろん、上述のように具体かつすぐ出来るノウハウは大事なのですが、それだけでは根本的なあがりの解決にならないんです。いくら慣れても、あがる人はあがっちゃうわけで。なので、この腸内環境の話は、人前でプレゼンする機会が多い人は、押さえておいた方が良いと思います。
ビジネスにふさわしいプレゼンの10のポイント
さて、本書の後半は、ちょっと難易度が上がってプレゼンの話です。
そこで紹介されているのが、下記です。
- 相手を知る
- 目的を理解する
- 時間を確認する
- 全体のイメージをつかむ
- ポイントを明確にし、盛り込む内容を決める
- 舞台を演出する
- 視覚に訴える工夫を
- ビジュアルハンドも演出として効果的
- 「第一印象の法則」を忘れずに
- 情熱を持って
ただ、これも上述の「あがらないため」の方法論に通じるところがありますが、このような具体的かつすぐ出来るノウハウに加えて、本当に大事な「プレゼンテーションは聞き手中心」というコンセプトにも触れられた方がベターだと思いました。そのために、聞き手の意識をコントロールするノウハウがあるわけで、そこまで踏み込んだ解説をしてあげた方が、本書の価値がより高まるのではないかと思います。
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