講師になりたい人ならば、誰もが説明上手になりたいでしょう。とはいえ、「知らない人」に物事を説明するのは意外なほど難しいもの。そんなときに手にとってしまうかもしれないのが、鶴野充茂先生監修の書籍「「何が言いたいの?」ともう言わせない! 説明の技術見るだけノート」です。
講師の説明の目的は相手を動かすこと
監修者の鶴野先生といえば、ご著書「あたりまえだけどなかなかできない説明のルール」でご存じの方もいるかもしれません。その鶴野先生が本書で強調するのは、
説明の目的は相手を動かすこと
と言う点です。
これは講師としてはとても重要な考え方で、私たちプレゼンテーション・カレッジでは、「LeADER原則」という言葉で表しています。これは、Let thE Audience Do Expected Reactionの頭文字をとったもので、その名の通りAudience (オーディエンス)、つまり聞き手に期待した行動をとってもらうことが、講師の役割と表すものです。
ところが、このLeADER原則を分かっていない講師というものは世の中に意外なほど多く、「講師とは、人前で話すものである」というスタンスで研修に臨むものですから、なかなか成果が上げられないことになります。
日常のコミュニケーションでも悪い例として、
- 伝えるだけで自己満足してしまっている
- 感情論で相手を説得しようとする
- 相手の感情を気にしすぎて説明があいまい
というものが挙げられています。セリフにすると、
「お分かりいただけましたでしょうか?」
とか
「思い当たる部分がある人も多いのでは」
とか
「こんなことは許されません」
とか
「御社のせいというわけではないのですが…」
とか、全部ダメ。
相手を動かす説明の2パターン
では、どうやったら相手が動いてくれるのかと言うことで、下記の2パターンが提唱されています。
一つ目が、相手にどうして欲しいのかを明確に伝えるというもので、
この販売計画にお目通しください
と「どのようにして欲しいのか」という要望を伝えたうえで、
売上が伸び悩んでいます
という「なぜして欲しいのか」の理由を述べるスタイルです。
もう一つが、さらに相手が「動く理由」を伝えるというもので、
このままでは来年度の人員および予算の削減につながります
と相手が「動くことによるメリット」、「動かないことによるデメリット」を伝えたうえで、
あの案件ですがいまが攻めるチャンスです
と相手の興味やモチベーションを刺激する言葉を付け加えるというものです。
もう一工夫欲しかったイラストによる説明
一方で、書名に入っている「見るだけ」と言う言葉に惹かれた人には、やや期待外れかもしれません。おそらくは「イラストがたくさん入っている」と言う点を強調するためにこの書名になったと思われますが、まぁ、常識で考えても見るだけで説明上手になれるわけはないですね。ちゃんとイラストに添えられている文字を読みましょう。
そして、イラストも、順番に並べられている方が読者には優しいと思いました。本書の紙面の構成だと、イラストがバラバラと並べられているという印象を受けて、どこから読み始めて、どういう順番で読み進めればいいかに迷ってしまったので。
この点に関しては、鶴野先生の次回作に期待したいと思いました。
画像はアマゾンさんからお借りしました
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