プレゼンでのジェスチャーのコツってご存じでしょうか?
それが、「パワースフィア」を意識することだそうです。「スフィア」というのは、もともとは「球体」を指す英語ですが、体を取り巻く球体を意識し、その中にジェスチャーと目線をとどめるというのがコツだそうです。
もう少し具体的に言うと、
目の上から出発し、横に伸ばした手の先、へそを通って、再び目の上に戻ってくる円
がそれ。逆に、このパワースフィアをはずれて、
手がへそより下がると、活力や自信がないように見える
んだそうです。
そんなコツを教えてくれるのが、カーマイン・ガロ著、TED 驚異のプレゼン 人を惹きつけ、心を動かす9つの法則です。
これを上手に使っているTEDのプレゼンテーションが、元ミシガン州知事のジェニファー・グランホルムさん。
- 前のめりになり、手のひらを開いた状態で両手を離す
- ポインターを握った両手はひじのところで90度に曲げ、左手は指を3本立てた状態で高く挙げた
- 前のめりになり、左手の人差し指をあげ、室内を見渡しながら聴衆とアイコンタクトをとった
と言うジェスチャーを使っているのが分かります。
え~、そうは言っても、プレゼンの時に堂々とジェスチャーを使うのって、なんとなく慣れてないんだけど…なんて感想を持った方もご心配なく。本書で紹介されているエイミー・カディさんの考案した「パワーポーズ」をとれば、自信を感じられるとのこと。
2022年2月5日追記:カディ氏の「パワーポーズ」の研究には、再現性がないとの疑問が心理学会で呈されています。
パワー・ポーズとはどんな姿勢かというと、両腕をできるだけ遠くに伸ばし、そのままの体制を2分間維持するのだ
ということで、実際の動画を見てみましょう。
たった2分間このポーズをとることで、脳内の男性ホルモンであるテストステロンが増え、ストレスホルモンであるコルチゾールが減るそうです。これによって、緊張感を和らげ、堂々と自信をもってプレゼンできるのだとか。
ただ、もう一つ紹介したい動画があって、なぜかというと上記のパワー・ポーズはちょっと「大げさ」過ぎるから。もうちょっと自然な形でジェスチャーを使うのってないの?と言う時に参考にしたいのが米国の元国務長官のコリン・パウエル氏のプレゼン。パウエル氏はジェスチャーを上手に使うことで知られた方で、このプレゼンの中でも効果的に使っています。
- 両手を肩幅ぐらいに開き、手のひらを聴衆に向けている
- 右手の手のひらを胸の方に向け、円を描くように回す
- 「幼稚園から大学まで」という言葉を表現するように、両手を体の幅より広げ、手のひらを向き合うようにする
- 左手は体の脇にゆったりと下げ、右手だけで胸のあたりでジェスチャーを続ける
- 左手も胸のあたりに戻り、右手と同じジェスチャーをするが、両手はまだ組まない
- 左手は再び体の脇にゆったりと下げ、右手でジェスチャーを続ける。右手の指3本で自分の方を指す
- 前のめりになり、声を大きくし、語り口も一段と熱を帯びる。両手の握り拳を胸のあたりにあげる
- 自分の方を指す
- 右手を胸の高さに伸ばし、手のひらを聴衆に向ける
- 左手で拳を握ったまま、右の手首から先をゆっくりと回す
- 左拳を胸の高さで握ったまま、右の手のひらを上に向けたまま腕を前に伸ばす
非常ににぎやかな手の動きなのですが、どれも不自然さがないですね。
ちなみに、不自然さをなくすには、自分の言っていることを心から信じているからとの指摘が本書でなされています。いわく、
自分の言っていることを信じていないと、動きがぎこちなく不自然になる。(中略)自分のメッセージを信じていないのに、あたかも信じているような行動を体に強いることはできないんだ。
とのことなので、プレゼンの際に自然なジェスチャーをしようと思ったら、まずは自分のメッセージを心から信じるところから始めるべきなのかもしれません。
本書のもうひとつ面白いところは、話すスピードにも着目して詳細な分析をしているところ。結論から言うと、プレゼンでの話すスピードは、英語の場合190WPM(Word Per Minute: 1分間の語数)だそうです。
比較をするならば、オーディオブックの場合には、これよりもややゆっくりで、150WPM。コーチング業界のカリスマ、アンソニー・ロビンズ氏のTEDトークは240WPM。つまりは、ゆっくり過ぎもせず、早過ぎもしない(けど若干早め)が理想的なスピードと言うことでしょう。
一方で、本書には物足りなさも残ります。それは、具体的なノウハウが書かれていないこと。たとえば、第1章「内なる達人を解き放つ」では、情熱の大切さが繰り返し述べられています。ただ、「どうやったらその情熱の源を見つけられるのか」が解説されていないのが、凡人には厳しいところ。もちろん、TEDのスピーカーがみな情熱を持っていることは分かります。ただ、私たちがたとえばセールスの商談でプレゼンする場合、情熱をモツのは難しかったりしますよね。それなのに、本書のアドバイスはせいぜいが、「あなたのハートが歌い出すきっかけは?」という問いかけだけ。この、ものすごく難しい質問をされても、戸惑ってしまうのが正直なところでしょう。
同様に、第2章「ストーリーの技術をマスターする」では、ストーリー感を持って語ることの重要性が解説されていますが、どうやったらストーリーで話せるようになるかは説明がありません。「シンプルで効果的なストーリーの3つのタイプ」ということで、
- 個人的なストーリー
- 第三者のストーリー
- ブランドの成功のストーリー
と分類されていますが、これを知ったからと言って読者がストーリー感を持って話せるようにはならないですよね。
著者のガロ氏はジャーナリストだけあって、分析は素晴らしいと感じました。あとは、このへんの、「凡人にもできるようになるコツ」があると、より本書はお役立ち感が上がると思いました。
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