プレゼンの目的が「聞き手に期待した行動をとってもらう」ことである限り、聞き手の脳みそを理解するのは必要不可欠と言っていいでしょう。たとえば、
「プレゼンの冒頭で全体のようやくを示してから本論にはいると分かりやすい」
「第一に…、第二に…、第三に…といった具合にナンバリングを行うと分かりやすい」
このような「常識」は脳のしくみからみるとまったくもってはずれ。なぜならば、
初めに全体像がわかったら、聞き手の脳は興味を半減させます。ナンバリングによって情報が並列になったまま提示されたら、聞き手の脳に負担がかかり嫌気が差します。
とのこと。これをはじめとして斬新な視点を提供してくれるのがこちらの本です。
吉田 たかよし著、脳を攻略!最強のプレゼンテーション (PHPビジネス新書 56)
著者の吉田先生のご経歴を見ると、
- NHKアナウンサー
- 自民党の加藤紘一先生の公設第一秘書
- 脳機能の向上を目的としたクリニックの院長
と、まるで現代に生まれ変わったダヴィンチのような多芸ぶりを感じます。まあ、とりとめもないという感もなくはないですが。
ただ、上記のキャリアの共通点というのが、いかにして聞き手の認知に訴えかけるか、ということ。その集大成とでも言うのが本書にまとめられた原理・原則です。
以下、ポイントを。
●リハーサルは、人前で行うことが大事です。人に伝えようと思って話すのと、一人でしゃべるのでは、脳の働き方が全く違うからです。
●客観的に伝えたい具体的な情報については、プレゼンテーターは配付した資料を読む。聞き手には手元の資料に目を通していただく。そのほうが、数字やデータの裏付けがあることがよく伝わりますし、説得力も増します。
●キーワードには、ハッキリと聞こえて明るい印象のあるア段やイ段が多く含まれる単語がいいでしょう。
●日頃から思いが伝わる右脳言語を鍛える…上達のためのコツは、「抑揚」、「強弱」、「音色」という右脳言語の三大要素を意識しながら、挨拶することです。
●人間の知性には、少なくとも八つの種類があるといわれています。「言語的知性」、「数学的知性」、「音楽的知性」、「空間的知性」、「運動感覚知性」、「対人的知性」、「内省的知性」、「博物学的知性」などです。…人間の脳は、コンピュータのように直列処理ではなく、並列処理を採用しているので、独立した知性の作業は同時進行が可能です。…P・ファインマン…数字を数えながら読書をすることで示しました。
●スライドは読ませるべからず、見せるべし!
画面に、びっしりと文字を書いている場合。これは脳のメカニズムを考えれば絶対にやってはいけないことです。スライドに書かれた文字を読む、プレゼンテーターが話す言葉を聞く、残念ながら両方とも「言語的知性」の働きに依存しています。つまり、情報を理解するには、脳の中の同じ機能を使わざるを得ないのです。…それに比べて、スライドが、短いキーワードと図解によって、全体の概念がパッと分かるような映像になっていればどうでしょう。この場合は、「言語的知性」よりも「絵画的知性」を重点的に活用して内容を理解します。
●映像を主語にして、伝えたい情報を語ろう
スライドで図を見せて、その図が何を意味しているのかを説明していく。聞き手はその映像を見ながら、「なるほど。その図はこういう概念を表しているんだ」と言葉で伝わってくれば、脳の機能にピッタリ合った形で理解が深まります。
【目次】
序章 聞き手の「脳」を攻略せよ!
第1章 「扁桃体」を攻略して第一印象を決めろ!
第2章 「海馬」に効くキーワードで記憶に残せ!
第3章 「大脳辺縁系」に訴える右脳言語を使え!
第4章 「視覚連合野」を視線と図解で攻略せよ!
第5章 「A10神経」を刺激する欲望に火をつけろ!
第6章 「側頭葉」にピンとくる言語表現をねらえ!
第7章 「前頭前野」を疑似会話で活性化せよ!
第8章 「視床下部」を攻略してあがり症を撃退!
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