「東京大学院卒」という触れ込みの南川晴紀先生のご著書、「東京大学院卒 南川晴紀の【誰でも簡単!ZOOM教科書】」を読んだので、類書との違いに絞ってその内容をレポートします。
Zoomで考えられるビジネスアイデア
本書の特徴の一つは、Zoomの「背景情報」が記載されていることです。たとえば、第7章の「Zoomで考えられるビジネスアイデア」には、
- 学校教育(海外では既に行われています)
- デート(携帯でもありますが、更に高機能なデートが可能)
- 展覧会(見たい商品をその場で指示可能)
- 物件探し・登山・海中散歩(山や海での光景ををリアルタイムで視聴可能)
- テレビショッピング(録画ではなくリアルタイムで商品の質問を受け付け可能)
などのこれからZoomで展開されるであろうビジネスのアイデアが提示されています。そのポイントは、
従来はその場に足を運ぶことが前提のことばかりでしたが、今後は足を運ばなくても良い人に対しては労力をかけずに行うことができるのが大きな利点です。
とのこと。この、「足を運ぶ」に加えて、Zoomの持つ「双方向性」という点にも言及されていると、より分析がリッチなものになったかもしれません。
同じ動画の配信といっても、録画してものをいつでも見れる(アーカイブ)のか、双方向的でその場だけのコミュニケーションがあるか、というのは大きな違いだと認識しています。Zoomの強みは、もちろん後者の双方向性にあります。この観点で考えると、上記の中で、「物件探し」は、双方向である必然性がなく、Zoomのビジネス領域ではないと考えます。
一方で、テレビショッピングというのは、著者の南川晴紀先生も書かれているとおり、「リアルタイムで商品の質問を受けつけ可能」と言うことで、まさにZoomの得意とする領域でしょう。ただ、この分野は既に「ライブコマース」というコンセプトで実践されていて、メルカリなどがそのプラットフォームに使われているので、ここにZoomが割って入るのは厳しいかもしれません。
Zoom創業者のEric S.Yuan (袁征)氏
本書の特徴のもう一つは、Zoom創業者のEric S.Yuan (袁征)氏にも言及があることです。そもそもZoomというアイデアを思いついたのは、
Zoomを考えついて発端は、1980年代に彼が大学生の頃にガールフレンドと遠距離恋愛をしていた経験によるものでした。そこからテレビ電話の開発を思いつきました。
とのことです。ただ、現時点では、Zoomの適用分野はビジネスに絞っているとのこと。
将来的に一般顧客向けのビジネスを展開する計画はないのかと訊ねられると、「将来的にはあり得るかもしれないが、現段階では考えていない。現状、私たちの目の前には大企業のビジネスユーザー市場が広がっていて、そこにはまだ大きなチャンスが隠れているからだ」と言っています。
じつはここに、最近のZoomのセキュリティ問題の一端があります。もともと大企業向けに開発されていたZoomは、「社内のITスタッフがいる」ことが前提になっています。その結果、多少セキュリティに緩さが残ってしまったのです(緩いところはITスタッフが人為的に対応することを前提としている)。
ただ、最近のコロナウィルスによるリモートワークの増加で、Zoomを利用するユーザーベースは広がっているので、それに対応してセキュリティを高めているというのが今のZoomの姿です。
Zoomのセキュリティと利用者の意識
本書の特徴のもう一つが、Zoomのセキュリティについて言及されていることです。2020年5月にリリースされたZoomクライアントv5.0から、AES-256での暗号化が採り入れられていますが、これは著者の南川晴紀先生によると、
最高難度のセキュリティーであるAES-256bitとの暗号化システムを解読するためには現存する最高レベルのコンピューターを使用しても、解読には数百兆年かかると言われています。Zoomで採用されている暗号化システムはセキュリティーに関して業界標準以上の暗号化による対策を行っていることがわかっていただけたと思います。
とのこと。
ただ、一方で、どれだけ米Zoom社が機能としてのセキュリティを高めたとしても、
使用者のセキュリティー意識がとても重要になってきます。
と本書では指摘されています。具体的には、
- 重要度の高をしない
- 会議には必ずパスワードを指定する
- 会議中は参加者に問題ないかを確認する
等の対策が提言されています。
画像はアマゾンさんからお借りしました。
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