「プレゼンテーションの時のジェスチャーを学びたい…」そう思う人に手にとっていただきたいのが荒木シゲル先生のご著書「伝わり方が劇的に変わる! しぐさの技術 (DOBOOKS) (日本語)」です。
プレゼンにおけるジェスチャーの重要性
著者の荒木シゲル先生は、ジェスチャーを含めた非言語(ノンバーバル)と言語(バーバル)が一致することがコミュニケーションにおいては重要であると提唱しています。
「楽しいです」と言いながら、態度ではそう見えないとき、つまり「バーバル」と「ノンバーバル」の矛盾が起きてしまったとき、相手はあなたの言葉を疑います。
という指摘は、プレゼンテーションにおいては特に重要でしょう。どれだけ口では「御社のためになるご提案をします」と言っても、早口で落ち着きない態度だったら、聞き手はその内容を疑ってしまうでしょう。したがって、プレゼンテーションの準備においては、内容を固めることも大事ですが、同時にジェスチャーも十分に練り込む必要があるでしょう。
プレゼンは「強い」ポーズで
では、どうやってジェスチャーを練り込むかと言うときに参考になるのが、「ステイタス」という概念です。もともとは演劇用語だそうですが、ある状況における関係者の力関係を表す言葉です。より詳しく言うと、
ステイタスが高ければ、権力が強く「相手を支配できる立場」です。また、ステイタスが低ければ、力が弱く「支配される立場」です。
となります。そして、プレゼンの場においては、もちろん目指すべきはステイタスが高い姿です。そのために、下記の三つの強さを体現する姿が提唱されています。
- 精神的な強さ:上半身は胸を張って、「首を長く、背中は広く」を意識した状態。関節を開き、大きく空間を使うことで自信に満ちあふれていてポジティブな印象になる
- 戦略的な強さ:あえて自分の手の内を明かさないで「ミステリアス」な印象を与えるスタイルです。斜めに構えたり顔やカラダのラインを隠すことで、ミステリアスな印象になる
- 肉体的な強さ:全身を力ませて、動物的に肉体的な強さをアピールする暴力的なポーズです。腕を組んだり、アタマを上に傾けることで、態度が大きい印象になる
なお、この強いポーズと弱いポーズを対比したイラスト入りで本書65pから解説されていますので、ご興味がある方はぜひチェックして下さい。
プレゼンのジェスチャーでドラマチックな演出をする
ここまで、プレゼンでは「強い」ポーズ、もしくはステイタスが高くあるべきだと言う立場で紹介してきましたが、実は本書の魅力はそれ「だけ」を進めているのではない点です。
むしろ、ステイタスが変わる瞬間にこそほんとうに人を引き付けるポイントがあるのではないかとの提唱がされています。
人がおもしろいと感じる「ドラマチックな瞬間」をステイタスで説明すると、キャラクター同士のステイタスのレベルの高低差が大きいとき、キャラクターのステイタスが急激に変化するとき、複数のキャラクターがステイタスの高さを競い合うとき
とのこと。プレゼンテーションに活かすならば、立ち居振る舞いにおいてもステイタスの高低を使い分けることで、メリハリを出すことができるのではないでしょうか。たとえば、顧客の直面している課題を指摘するときにはあえて「弱い」ポーズをとる、それを解決するための提案をするときは「強い」ポーズをとる、という応用はあり得るでしょう。
下記、ここまで紹介した以外の学びがあった点をピックアップします。
- 恐ろしいモンスターを細かく表現する代わりに、怖がる主人公のリアクションを見せるとします。すると、観客はキャラクターに感情移入して、「自分にとって一番怖いモンスター」のイリュージョンを見るわけです。
- 私が行うワークショップで、発想力を高める目的で行う「イス以外」というゲームがあります。
- テーマに沿った、ただし「場違いなステイタス」のふるまいは、奇抜な演出のヒントになります。
- 会話をするときにアタマを少し傾けたしぐさは、子どもの話を聞くときなど、相手が緊張しているときに、優しく話を聞いている印象になります。
- ロンドン大学のベアトリズ・カルヴォ・メリノ教授は、「バレリーナ」、「カポエイラのダンサー」、「ダンスの経験がない人」という3つのグループの人たちに、様々なダンスのビデオを見てもらう実験を行いました。その結果、ダンス未経験者に比べて経験者のほうが、より強く脳が反応することが分かりました。
- 社会心理学者のポーラ・ニーデンタールという人が中心になって、次のような実験を行いました。被験者たちを2つのグループに分けて、他人の顔の表情の変化を観察してもらうというものです。ひとつのグループは普通にただ観察するだけですが、もう一方のグループは口にエンピツをくわえて、顔の表情を作りにくくしてもらったそうです。(中略)エンピツをくわえているグループは、自由に顔を動かすことのできるグループと比較して、他人の顔の表情の変化をうまく読み取ることができなかったそうです。
- おしゃべりをしている生徒たちに、教室から出て行くように伝えます。それでも出て行かない場合は、彼らが出て行くか、おしゃべりをやめない限り、授業を進めることはできない、と他の生徒たちに伝えます。
- 「お待たせしていてすみません。お茶のおかわりはいかがですか?」「いえ、結構です」
- ステイタスが低くなるアクション:素早く、軽い動きをする。小さい空間を使って振る舞う。高い声でしゃべる。自分の過去やプライベートのことについて話す。すぐにリアクションし、行動に移す
画像はアマゾンさんからお借りしました