「プレゼンテーションで使うジェスチャーを研究したい…」そう思ったとき手にとってしまうかもしれないのがヨッヘン・バイヤー先生のご著書「プレゼンのパワーを最大限にする50のジェスチャー」です。
欧米人向けのプレゼンテーションで使えるジェスチャー集
まず結論ですが、本書で扱うジェスチャーの多くは、欧米人向けのプレゼンテーションでこそ使うべきです。逆に言うと、日本人が日本人に対して行うプレゼンテーションでは、あまり利用のシーンがないでしょう。それもそのはずで、著者のヨッヘン・バイヤー先生は、ドイツのシュヴェービッシュ・グミュント教育大学の教授。米国ではミシガン州グランドバレー州立大学でも教鞭を執ったご経験もあるそうですが、生粋の欧米人です。
とはいえ、テクニックの内いくつかは日本人にも気づきを与えてくれるので、本書表の後半で紹介します。
日本人はまず持ってやらないプレゼンのジェスチャー
まずは、欧米人向けのプレゼンテーションのテクニックの紹介から。たとえば、テクニック4で紹介されている「片手を無造作にズボンのポケットに入れる」というもの。著者いわく、
姿勢のよさは人を大きく見せる。男性の場合は、片手を無造作にズボンの前ポケットに入れることで、その存在感をさらに強調できる。
ということですが、日本人向けのプレゼンテーションではよっぽどの理由がない限りポケットに手を入れることはしません。外国人なら、「かっこいい~」となるかもしれませんが、日本人がやったら間違いなく「ずいぶん傲慢なヤツだな」と思われます。
似たような話として、テクニック19の「聴衆にウィンクする」というもの。しかもご丁寧なことに、
少しアレンジを加えて、たとえば、ウィンクをするときに指を2本こめかみに当てると、注意喚起力はもっと高くなる。
という説明がイラスト付きで紹介されています。これも、「絶対」と言っていいくらい日本人向けのプレゼンテーションではないでしょう。
ただ、逆に言うと、たとえば欧米のピッチコンテストに出場する場合などは、本書にあるくらいオーバーな(と日本人には思える)ジェスチャーを身に付ける必要はあるでしょう。
アイコンタクトも使い分ける
一方で、日本人にも「使える」と思ったテクニックの代表格がテクニック1の「相手の『第三の目』を見る」というもの。これは、
相手に視線を向けるときは、相手の目を見るのではなく、その眉間あたりに「第3の目」があると思って、そこを見つめるとよい。そうすれば、自分の優位性をうまく示すことができる。
というものです。「ほんとうかなぁ」と思うかもしれませんが、次の説明は納得感がありました。
さまざまな研究の結果、社内で高い役職についている人ほど、ごくたまにしかアイコンタクトをとらないことが明らかになっている。「周りとコミュニケーションをとることに関心がない」という態度をとることで、自分の地位の高さを示しているのだ。
たしかに、会議でも人の話を聞いているんだかいないんだか、目をつむったままの偉い人がときどきいますが、あんな感じなのでしょう。であれば、第三の目を見ることで、微妙に目を合わせているのだか、目を合わせていないのだかで「偉い人感」を演出するのは「あり」だと思いました。
ちなみに、この第三の目と対をなすのが、テクニック10の「相手の『心の目』を見る」というもの。これは、
相手の鼻を3等分した一番上あたりに目を向ければ、視線の持つプラスの作用を強めることができる。
というものです。要するに、アイコンタクト一つとっても漠然とやるのではなく、目的を持って細かく使い分けようと言うことでしょう。
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