クロトンビル研修所はご存じでしょうか?米GE(ゼネラル・エレクトリック)のリーダーシップ養成機関で、数多くの名経営者を輩出したことで知られています。そこで教えられているプレゼンテーション研修を紹介してくれているのが、田口先生のご著書「世界最高のリーダー育成機関で幹部候補だけに教えられている仕事の基本」です。
クロトンビルで教えるプレゼンの基本
プレゼンテーションと言っても、その内容が多岐にわたります。クロトンビルをはじめとしたGEの研修では、その中でも
- 簡潔なメッセージ
- ストーリーとして伝える
と言う二つの要素を重点的に教えられるとのことです。
逆に言うと、スライドの作り方には重点が置かれていないとのこと。最近の日本ではデザイナーの人が書いたスライドのデザイン面にフォーカスした本が売れている傾向にある気がします。たとえば色使いやフォントの種類や大きさなど。もちろんそれはそれで重要なのでしょうが、GEでは、
「伝え方」も大切ですが、それより「何を伝えるか」がもっと重要である
とのことで(6p)、上述のようにメッセージにフォーカスが当てられているのでしょう。考えてみれば当たり前で、どれだけデザイン面で優れたスライドでも、中身がスカスカでは意味が無いので、このアプローチは正統的だと感じます。
プレゼンテーションは「削れ」
では、どうやって簡潔なメッセージを作成するかと言うとき参考になるのが、プレゼンテーションを「削る」と言うトレーニング。
「まず、書いてあるものを3分の1にして、さらにそれを3分の1にしてください」
と言う指示で研修が進むそうです。これによって、そのプレゼンで何が言いたいかという「コア・メッセージ」が明確になるとのこと。
ちなみに、3分の1を2回繰り返すので、ボリューム的には最初のバージョンの9分の1になるので、研修参加者から、
「最初から9分の1にしてはいけないのですか」
と言う質問も出るそうですが、これは、
「脳の仕組みによって、2段階に分けて絞り込んだ方がスムーズに作業できます」
とのこと。一般の人はクロトンビルの研修に参加するわけにはいきませんが、このテクニックなら取り入れられそうです。
プレゼンのメッセージをつくるためのテンプレート
なお、96ページには、コアメッセージを中心にどのようにプレゼンを構成するかのテンプレートが掲載されています。これは、コア・メッセージを中心にA4の用紙を4つの証言に分けたもので、上から反時計回りに、
- 問題
- 今後の課題
- インパクト
- 解決策
からなるものです。サンプルでは、「どのようにすれば経営幹部の候補者不足を解消できるか」というコア・メッセージが示されているので、コア・メッセージは「そのプレゼンで言いたいこと」というよりも、「そのプレゼンで解決すべき課題」という捉え方でいいのかもしれません。
このテンプレートでメッセージを固めたら、次のステップとしては、ストーリー・ボーディングの作成に取りかかるとのこと。パワーポイントではなくてポストイットを使うことを著者は提唱していますが、先ほどのテンプレートで考えたポイントを転記していくアプローチです。これによって、プレゼンテーションの1枚1枚のスライドのタイトルだけを作成していくことになります。そして、このタイトルだけを見ながら、
「書かれている言葉の抽象度・具体度にばらつきがないかどうか」
を確認しながら中身を詰めていくとのこと。
なお、一歩引いた視点からは、著者は「プレゼンテーションのABCD」というプロセスを提唱しています。これは、
Analyze Audience それぞれ聞き手の分析
Build Message メッセージ構築
Construct Slide スライド構成
Deliver Presentation 伝え方の工夫
からなるもので、先ほどのポストイットを使ってスライドのタイトルを並べるというアプローチは、「メッセージ構築」と「スライド構成」の間をつなぐものと理解しました。
実際に見てみたいリーダーたちのプレゼン
様々な内容を紹介している本書ですが、不満があるとすれば、実際にGEではどのようなプレゼンのスライドを使っているのか見えないこと。もちろん、スライド作りは重要視していないのでしょうがないのですが、それでも「じゃあ、最終形はどうなるの?」というのを知りたいのは人情というものです。
そこで、youtubeで実際のプレゼンを見つけてきました。どちらも基調講演(Keynote speech)なので、いわゆる「プレゼンテーション」とはちょっと違いますが、それでも本書のニュアンスは感じ取ることができます。
GEの前CEOジェフ・イメルト氏によるプレゼンテーション
GEのCEOジョン・フラナリー氏によるプレゼンテーション
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