勝間和代さんといえば自己啓発の分野で大家といってもいい存在ですが、その勝間さんがこれまで実践してきたプレゼンテーションの方法論を1冊にまとめているのがこちらの本です。
勝間 和代著、稼ぐ話力 相手を腹落ちさせるプレゼンテーション術
内容もさることながら、マッキンゼー時代には「ちきりん」こと伊賀泰代さんに採用されたという話や、「スイッチ」で紹介された「像と像使い」のたとえが使われているなど、自己啓発本が好きな方にはニヤリとする要素も盛り込まれているので、お得感があります。
なお、読者の対象は、
- プレゼンテーションがうまくなって仕事で結果を出したい
- 仕事でプレゼンテーションをする必要があるが、やり方がわからない
- 日常会話は得意だが、プレゼンテーションとなると自信がない
- プレゼンテーションの資料作りに悩んでいる
- 話すこと自体に苦手意識がある
とのこと(表紙をめくった見返しより)。
内容的にもごく真っ当で、
本書でいう「伝わる」とは、「相手を心から納得させ、行動させる」までを指しています。(4p)
と書かれていますので、ビジネスの現場で使えそうです。プレゼンテーションを解説し本の中にはときどき、
- プレゼンの目的は相手とコミュニケーションをとること
- プレゼンテーション上達のコツは自由な発想で言いたいこと言うこと
というスタンスの著者の先生もいますが、それだと実際には使えないと思うんですよね。まるで、プレゼンそのものが目的になってしまっているようで。
内容的には、第4章の「確実に伝える資料作成3ステップ」がとくに参考になるかと思いました。
- 全体の長さから枚数を決める
- 1枚1メッセージ。30秒で理解できるもの
- イラスト、写真、図解を入れる
というものですが、具体的な数字指標が述べられているのが参考になります。
- 枚数はプレゼンテーションの長さによって異なりますが、3-5分に1枚が適度な枚数だと考えます。 (160p)
- イラストでも図解でも相手が30秒で内容が理解できるものを心がけて下さい (163p)
もちろん、これが全ての状況にあてはまるわけではありません。ただ、このような目安があると、自分で工夫を凝らす際に参考になるかと思います。
一方で、誤解を招く表現があるので、ここは本気でプレゼンテーションが上手くなりたい人は要注意です。
たとえば、プレゼンテーションの基本ステップ2で紹介されている、「全体像から話す」という項目。相手の中に話を受ける器を用意するという観点で、
話をする前には「ポイントが3つあります」というように指導されたことがある人もいるかと思いますが、それも相手が器を準備できるからです
との解説がされています。
一見当たり前に見えますが、実はこれは「ストーリー性を持たせる」(143p)とは真っ向から矛盾します。だって、そうですよね?たとえば推理小説の冒頭に、「この本では○○というトリックを使った犯人を探偵が△△の手法で追いつめて、逮捕するという流れです」のように紹介はしないわけで。
ここら辺の矛盾を解決することが必要であり、読者は頭をはたらかせながら本書を読む必要があります。
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