「数字は嘘をつかない」と言う言葉とともに、事実<ファクト>を押さえることの重要性は、言うまでもありません。ただ、「嘘つきは数字を使う」という言葉もあり、気をつけないとファクトのはずが、だまされているなんてことも起こります。それを避けるためにチェックしたいのが、kanata先生のご著書、「ダマすプレゼンのしくみ 数値・グラフ・話術・構成に隠された欺く手法とその見破り方」です。

プレゼンテーションで聞き手をだます写真

「百聞は一見にしかず」なんて言って、目で見たことはそのまま事実<ファクト>であると思いがちですが、これが危ういのはご存じの通り。とくに、メディアを通して見る映像は要注意です。この事例として本書で紹介されているのが、蒙古襲来絵詞。え?あの、歴史の教科書に載っているやつ?と以外に思うかもしれないのですが、まさにこれ。

私たちがよく知っているのは、真ん中にある日本の武者が乗っている馬がお腹から血を流しているものです。解説は、蒙古軍の集団戦法の前に武士が苦戦する、というものです。ところが、他の絵を見ると、鎌倉武士が蒙古軍を圧倒しています。実はこの絵詞、鎌倉軍が優勢な状況を描いたものだそうです。

もっとも、ここまで来ると何が真実かは分からなくなります。本当に鎌倉軍が優勢だったのか、あるいはこの絵自体がファクトの一部しか切り取っていなくて、本当のところは逆だったのではないか…。考えてみれば、この絵詞は作者不詳なので、いっそうその信憑性に疑問が生まれます。

よくあるメラビアンの法則の誤解

本書の素晴らしいところは、メラビアンの法則をしっかりと解説しているところです。よく、

コミュニケーションにおける重要性は、言語情報7%、聴覚情報38%、視覚情報55%

と説明され、これに基づき「資格情報は大事ですよ~」と言う説明につながります。

ところが、実はこれは提唱者のメラビアン先生の考えを曲解したものです。なぜならば、上記の数字はそれぞれのメディアが「矛盾した情報を発している時」の分析だからです。たとえば、ものすごく怒った顔をしながら、「怒ってませんよ (怒)」と言葉で言っても、視覚情報の怒り顔の方が55%の重みを持つ、というのがもともとの意味合いです。

世の中ではメラビアンの法則を誤解、あるいは自分の都合の良いように解釈して視覚情報の重要性を訴える人がいますが、本書の立場は極めてまっとうと言えるでしょう。(詳しくは本書の21pを)。

プレゼンにだまされないための方法論

では、上記のようなアヤシいプレゼンにだまされないためにはどうしたらよいか。著者はいくつかのコツをあげています。たとえば、「3Dグラフは確信犯」というもの。3Dグラフというのは、エクセルで簡単に作れる3次元グラフのこと。ところが、これはだましの温床なのだとか。

筆者はこういった3Dグラフを見た瞬間に、プレゼンテーションとスピーカーへの信頼度が一気に下がります。この信頼度の低下はグラフの部分に限らず、資料全体とスピーカー本人の信頼にまで影響します。すべてを疑わないといけないと覆う程度のリスクを感じます。

とのこと。

同様に、言葉の使い方も重要だとか。たとえば、「正しく」、「適切に」、「最適な」という表現。

筆者は、もし仕事上の書類でこのような表現があったら、具体的な表現に修正するように働きかけます。プレゼンテーションにおいても同様に確認する必要があります。何が「正しい」のか、何が「適切」なのか、どうなることが「最適」なのかが不明瞭だとプレゼンテーションする側とプレゼンテーションを聞く側の認識に齟齬が生まれるためです。

と言うことです。


画像はアマゾンさんからお借りしました。