プレゼンテーションに限らず、日本人にとって英語でコミュニケーションをとるときに悩ましいのが「主語」の扱い。これを、実例入りで分かりやすく解説してくれるのが野村るり子先生のご著書「CD付 よくわかる 英語プレゼンの技術」です。

ちなみに、著者の野村先生は中学卒業後15歳で単身渡米したというご経歴をお持ちの英語の「猛者」です。その後、ハーバード大学教育大学院で教育学士を取得されたそうですから、その英語力はホンモノと言って良いでしょう。

英語と日本語で異なる主語

冒頭にも書きましたが、英語と日本語では「主語」がずいぶん異なります。たとえば、日本語では立場に応じて主語を使い分けるのが当たり前。自分のことを指すにも、

  • 私 (わたくし)
  • 私 (わたし)
  • オレ
  • おいら

など、様々な表現があります。さらにはビジネスの場では、「小職」なんて言い方もあって、逆に英語のネイティブスピーカーが日本語でプレゼンをやるときにはさぞかし迷うことでしょう。

逆に、英語特有の主語もあって、それは「もの」が主語になること。たとえば、

Our past experience taught us …

なんて表現があって、直訳すると「過去の経験は私たちに…であることを教えました」となります。もうちょっとこなれた日本語にすると、「禍根経験から、私たちは…と思っています」とでもなるのでしょうが、いずれにしても主語の扱いは英語と日本語でずいぶん違っています。

英語プレゼンでの主語の使い分け

では、英語のプレゼンテーションでの主語の違いを野村先生のご著書に則って考えてみましょう。事例からいきますが、

You should carry out the Plan A. (あなた(がた)はプランAを実行すべきだ)

I would carry out the Plan A. (私なら、プランAを実行するでしょう)

I would like you to carry out the Plan A. (私はあなた(がた)にプランAを実行してもらいたい)

Why don’t we carry out the Plan A? (私たちで、一緒にプランAを実行しましょう)

と言うものが本書の48pに挙げられています。ここから分かるのは、Youを主語にする場合というのは、

聴衆が既にプレゼンターの指示に従う姿勢を持っているとき、Youから始まる提案や命令は、比較的短時間で相手を動かすことができるので有効です

ということ。逆に言うならば、聴衆がプレゼンターの指示に従う姿勢ではないときにいきなりYouで始めても、あまりうまくいかないということでしょう。

では次に、I(アイ)。

Iが主語の場合、意志決定権や行動に対する責務はあくまでも聴衆側にあります。したがって、プレゼンターの提案通りに動いた場合でも、自分(たち)の行動に責任を持ってくれます。

となります。

一方でWeの場合は、

プレゼンターと聴衆とが一緒に行動を起こすことを意味します。聴衆側としては大変心強いものです。とくに、聴衆が勇気を必要としているときなど、意識的に「私たちで成し遂げましょう」と声をかけてみてください。

とのこと。ここで思い出されるのは、オバマ前大統領。決めぜりふの

Yes, we can.

は、まさに本書で述べられているWeの使い方に近いのでしょう。

プレゼン準備はWhen? Who? How?

本書では、効果的な英語プレゼンテーションの準備法も解説されています。それがWhen? Who? How?で、

プレゼンテーションを成功に導くためには、聴衆に最も都合の良い日時を選び、プレゼンテーションを行うのに最適な人を任命し、適切な伝達のための媒体を選ぶことが必須である。

というもの。このWhen、つまり「いつ」というのは、類書でもあまり触れられていないものです。おそらく、日本人二条に欧米のプレゼンターは気にしているとこなのでしょう。これを、

  • 朝一番・午後一番のアポイントメントのメリット
  • 就業時間内の最終アポイントメントのメリット
  • 最初にプレゼンテーションをすることのメリット
  • 最後にプレゼンテーションをすることのメリット
  • 最初と最後以外にプレゼンテーションをすることのメリット

と言う場合分けで解説してくれています。

著者の野村先生のご経歴を想像するに、おそらくは英語のネイティブスピーカーのプレゼンを「常識」としている方なのだと思います。そんな視点から、日本人のプレゼンに足りないものを指摘しているのが本書の魅力です。


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