プレゼンテーションを英語で行う人のために、アカデミックな観点からのアドバイスが盛り込まれたのがこちらの本です。

田中 真紀子著、英語のプレゼンテーション 〈スキルアップ術〉

ちなみに、政治家の田中眞紀子先生とは、名前が似ていますが全く別の方。こちらの田中先生は、神田外語大学の教授。ご経歴も、上智大学で修士号、カリフォルニア大学サンタバーバラ校で博士号取得と、アカデミックな世界を歩まれた方です。

プレゼンテーションの4分類

このご経歴からか、プレゼンテーションを

  1. ビジネス・プレゼンテーション
  2. アカデミック・プレゼンテーション
    • 学生による授業でのプレゼンテーション
    • 学会などにおけるプレゼンテーション
  3. 講演会でのプレゼンテーション

に分類し、全てに役立つスキルを解説しようというのが本書の立ち位置(26p)。したがって、プレゼンテーションを、

ハンドアウトやパワーポイントなどの資料を用いて、視覚に訴えながら情報やデータを提示し、相手に発表内容を理解してもらう、あるいは情報として活用してもらうことが目的

と定義していますので、ビジネスで使うには若干物足りなさが感じられます。大学の受容や学会の発表などではそれでもいいのではないかと想像しますが、ビジネスのプレゼンテーションにおいては、相手に理解してもらうだけでは不十分です。むしろ、「こちらの期待行動をとってもらう」ところまで狙いたいものですからね。

英語プレゼンを成功させるための5ステップ…だけど

また、内容的にも比較的一般論に近いところが多く、「英語でプレゼンしなくちゃならない」という人も物足りなさを感じてしまうのではないでしょうか。たとえば、プレゼンテーションを成功させるための5つのステップという項目では、

  1. 事前準備をする
  2. トピックを決めリサーチをする
  3. 草稿を書く
  4. 視覚材料を用意する
  5. 何度も練習をする

というもので、とくに英語プレゼンに絞ったものにはなっていません(37p)。むしろ、英語でプレゼンしなくちゃ、という観点では、ベタではあるのですが愛場先生の「英語のプレゼン 直前5日間の技術」の方が参考になるかと思います。

一方で、要所要所に盛り込まれている田中先生ならではのポイントは、実は参考になります。たとえば、「なぜ緊張すると早口になってしまうのか」というコラムでは、その原因を「考えるスピードと話すスピードに大きな差があることが一つの要因」と分析した上で、思考のスピードが1分間に600語に対して、話すスピードは1分間160語を提言されていて、「なるほど~」と思いました(35p)。

これは、教育学・応用言語学の専門家である田中先生ならではの分析ですから、こういうポイントをもっと知りたい、と思いました。

ということで、英語のプレゼンをする人にとっては、ピンポイントで必要な知識だけをピックアップするというのが、本書の正しい使い方のような気がします。

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