エンジニアの方がプレゼン上手になるためには特有のコツがあるそうです。というのは、システムであれ精密機械であれ、エンジニアの話は技術的に難しいものが多いから。なので、聞き手に厳密に分かってもらう必要があり、ここに普通のビジネスパーソンとは異なるプレゼンのコツが求められるのです。これを分かりやすく解説してくれるのが、開米先生のご著書、「エンジニアを説明上手にする本 相手に応じた技術情報や知識の伝え方」です。

もし普段の仕事で「人に説明する」ことが多いエンジニアの方ならば、ぜひ読んでいただきたい…のですが、実はこの本には気をつけなければいけないところがあります。というのは、著者の開米先生自身が「元・組み込み系ITエンジニア」とのことで、本書は「エンジニアによるエンジニアのためのプレゼンテーションの本」。そりゃ、エンジニアの人が読めば納得感は高いでしょう。ただ、一般の(非エンジニア)ビジネスパーソンが読むと、「それって、違うのでは?」と思うところも少なくありません。

典型的には、「プレゼンテーションのセリフの流れはあらかじめ考えておく」というところ(110p)。一般的には、セリフを考えてスクリプト(セリフと「間をとる」などの演出を書きだしたもの)は、プレゼン準備の段階で作りません。なぜならば、「決まりきったものを読み上げる」ことになり、プレゼン本来の「聞き手を惹きつける」要素がなくなってしまうから。もちろん、プレゼン初学者、例えば学生向けのプレゼンの本の中には、「原稿を書く」事を勧めているものもありますが、それは同時に「練習の過程で原稿への依存度を少なくすること」とセットになっています。

ところが、本書「エンジニアを説明上手にする本」だけを読むと、「現行をしっかり準備してプレゼンに臨まなければならない」という誤解が生まれかねません。もちろん、著者の開米先生もそのリスクは分かったうえで、それでも文字に起こすのは『よいトレーニングになる』から勧めているとは思いますが、エンジニアでプレゼン初心者の方は、ちょっと注意して読んだ方が良いかと思います。

以下、ポイントを記載します。

狭義のプレゼンテーションと広義のプレゼンテーション

一口に「プレゼン」と言っても様々な目的があり、大きくは

  1. 知識理解:聞き手にある知識(概念)を理解してもらう
  2. 手順理解:聞き手にコンピュータの操作などの実演手続きを理解してもらう
  3. 情報収集:プレゼンの聞き手から情報を引き出す
  4. 説得:話し手が提案したことを聞き手に納得してもらい、アクションをとってもらう

の4つに分かれるというのが本書の主張です。一般的には4番目の「説得」がプレゼンテーションですが、本書では幅広く1、2、3番もプレゼンテーションと捉えています。3番目の「情報収集」はちょっとピンと来ませんが、

ヒアリングをする時には「必要な情報を聞き出す」という目的のために「聞きたいことを相手に説明する」行為を伴うわけで、プレゼンテーションを同時に行っているといえます

とのこと(57p)。この解説が妥当であるか否かと言うよりも、エンジニアの人はこのようにプレゼンテーションを捉えているという観点で参考になる指摘です。

ラスムッセンのSRKモデル

ここは何やら大事なポイントっぽいのですが、もう一つ理解が進みませんでした。その前提で分かった範囲でまとめると、デンマークのラスムッセン教授が1983年に提唱した「SRKモデル」を理解すると、ミスが防げるとの考えが基本です。なぜならば、人間が何らかの行動をとる際には、

スキル (Skill)

ルール (Rule)

知識 (Knowledge)

のいずれか(もしくは複合的な?)の要素によって判断しているので、「どの要素によって判断するか」が分かると、「なぜミスを起こしたのか」が理解しやすいから(すいません、ここの説明はあいまいですね)。本書では、「チャーハンに味付けするためにNグラムの塩をふる」という行動を題材に、これをミスなく実行するためには、「塩を入れると塩味がつく」という「知識」と、そのためには「Nグラム」の塩をふるという「ルール」に基づいて人は行動しているとのこと。ところが、慣れてくると、

「適当につまんだ量が適切な量になっている」わけで、この場合はもはや数字を意識しません。これが「スキルベース」の行動です。

という解説になります(66p)。

このSRKモデル自体を理解していないせいなのかも知れませんが、これがどのようにプレゼンテーションに関係してくるかは、読みとれませんでした。チャンスがあったら本書をもう一度見返して、改めて確認したいと思います。

画像はアマゾンさんからお借りしました