講師をやっていると、「意外な受講者」に出会うことってあります。
セミナーや研修の間、うなづくこともなしに怖い顔をしながらじっとこちらを見ている…。一体何が不満なのか、と内心訝しく思っていると、実は単に真剣に聞いているだけだった、なんてこと。
あるいは、アイコンタクトもバッチリ、講師の話を「うん、うん」とうなづいて聞いていて、(あぁ、この人はしっかり理解しているんだろうな)と思いきや、セミナーや研修の最後の最後になってトンチンカンな質問をしてきて、(おいおい、一体何を聞いてたんだよ)と言いたくなるような人。
そんな「意外な受講者」がなぜ生まれるかのヒントが書かれているのが、関根 雅泰先生のご著書関根 雅泰著、オトナ相手の教え方です。
…というか、実は「SPトランプ」という別の考案者がいる人材のタイプ分けの手法がそれなので、若干SPトランプについても触れた上で本書に戻ります。
SPトランプのSPは、「サブパーソナリティ」を表し、八尾芳樹、角本ナナ子の両氏によって開発された手法です。その内容は、
イタリアの心理学者ロベルト・アサジオリ博士のサイコシンセシスを基に、人間の持つさまざまな面をとりあげて、キャラクター化し、ニックネームを付けて、52枚のトランプに描いてあります。
自身や他者の人格を形成しているキャラクター(サブ・パーソナリティ)を選び出すことにより、各自の性格特徴、強み、弱み、成長課題等が顕在化します。
とのこと(株式会社SORAホームページより)。
ちなみに、「ロベルト・アサジオリ博士」を調べてみると、心理学の新潮流「トランスパーソナル心理学」を提唱している方とのことで、その内容は「人間の究極的な目的とは、自己を越えた何ものかに統合される」とのことです。ちょっとスピリチュアルな分野に寄っているところもあり、ここら辺は好き嫌いが出そうですね。関根先生が著書でも述べているとおり、
あくまでもこれらの「4つのタイプ」は、相手との違いを理解するための参考程度としてください。
と言う位置づけが良さそうです。
講師の教え方、受講者の学び方の相性があった
SPトランプによる受講者の分類の説明を見てみましょう。受講者を、「能動的か受動的か」「感覚的か論理的か」の二つの軸で、能動・感覚のハート型、受動・感覚のダイヤ型、受動・論理のクラブ型、能動・論理のスペード型の4分類に分けるのが基本となります。関根先生(というか、SPトランプの提唱者の八尾、角本先生)いわく、それぞれに固有の学習方法があるとのことです。
また、逆を返せば、それぞれのタイプの人が講師になったときには指導方法にも一定の傾向が出てきて、講師と受講者が同じタイプの時にはうまくいくが、異なるタイプの時には相手に合わせた指導方法が必要になってくる、となります。
ハート | ダイヤ | クラブ | スペード | |
---|---|---|---|---|
学習方法 | まず自分で体験することを好む 少しの経験で全体が分かったような気になる 感覚的に学ぶ あまり細かく指導されることを好まない |
誰かと一緒に学ぶことを好む 勉強より体験する方が合っている 懇切丁寧に指導されることを好む |
論理的体系的に学ぶ 納得するまで時間がかかる 専門家から学ぶことを好む 学習課題はリスクの少ないものを好む |
学ぶ目的や目標を明確にする 論理的体系的に学ぶ あまり細かく指導されることを好まない |
指導傾向 | 実践(体験)重視 細かい指導は行わない |
体験を重視し、感覚的 細かく指導する |
論理的体系的に教える 細かく指導し説明が長い |
論理的に指導しようとする 細かい指導は行わない |
ちなみに、この手のタイプ分けが好きな方は、コルブの学習スタイルに関しても目を配っておくことをお勧めします。こちらは、ある程度アカデミックな世界でも受け入れられていますので、実務にどう使うかは別にして知らないと恥をかくこともあるかと思います。
OJTですぐ使える手法がお得
なお、本書には職場に新人が来たときにすぐにでも使えそうな手法が紹介されているのがうれしいところ。その中から二つの手法を紹介します。
仕事マップ:新人が関わる仕事の全体像をマインドマップ的にまとめる(まとめさせる)ことにより、理解せしめる
職場インタビュー:新人に、自部署、他部署を含め、これから関与する人達をインタビューさせる。インタビュー内容は、仕事の内容、成功事例と失敗談、1番うれしかったこと、今後の目標、今までのキャリア、新人との関係性、お勧めのランチ、趣味、など。
画像はアマゾンさんからお借りしました
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