日本人の英語プレゼンはネイティブにどう映る?

「日本人の英語プレゼンって、ネイティブからはどう見られているんだろう?」そんな疑問を持ったときにチェックしたいのが岩田ヘレン先生の著書、「英語の仕事術: グローバル・ビジネスのコミュニケーション」です。岩田ヘレン先生は、イギリスはヨークシャー州出身。文部科学省のJETプログラムで来日し、以降20年以上日本で働いているとのこと。経営コンサルティング会社のマッキンゼーでコミュニケーション・マネージャーも務められたということで、まさに日英のコミュニケーションのプロと言って良いでしょう。

そんな岩田ヘレン先生が英語のプレゼンテーションに関していの一番に言っていることが、

プレゼンテーションの目的は聴衆を動かすことです。

というセリフ。これ、欧米人にとって日本人のプレゼンの不思議なところらしいのですが、日本人はどうしても「話すこと」自体が目的になってしまいがちなのです。最後の締めくくりも、「ご清聴ありがとうございました」。まるで話すのが目的で、その目的を果たしておわりのように見えてしまいます。でも、実際のところは、まさに聴衆を動かすためにプレゼンを行うわけですから、心構えからして英語のプレゼンは違います。

ちなみに、本書の「はじめに」では、

やれば、人はできるのです。やらないともったいない。チャレンジしてみるのです。悩んでいる暇があるなら、実行しましょう!さあ、コンフォート・ゾーンから外へ出ましょう。Let’s do this!

と言う言葉が述べられていて、これは日本人ビジネスパーソン一般に対して欧米人が持つイメージを集約しているように感じます。そう言えば、分野は違いますが、Jリーグの大物助っ人、ルーカス・ポドルスキ選手も、「日本人に物申すポドルスキ『とても礼儀正しいが、サッカーでは役に立たない』」なんてことを言ったと報じられていて、岩田ヘレン先生のメッセージと平仄が合います。

英語プレゼンの冒頭に答えるべき4つの質問プラスワン

さて、本書に戻って、聴衆を動かすことを念頭におくと、プレゼンテーションのスタートは、聴衆の持っている4つの質問に答えるべきだというのが著者の提唱することです。具体的には、

  • Who? プレゼンターはどんな人か?
  • What? 何について話すのか?
  • Why? なぜ聞くべきか?
  • How? どのように進行するのか?

です。そして、

この質問の中でも、特に「Why? (なぜ?)」と「How? (どのように?)」を忘れることが多いようです。冒頭でこれらの質問に答えると聴衆が安心してプレゼンターの言っていることに集中できるようになります。

とのこと。ただ、上記4つの質問に答えるだけでは十分ではなく、もう一つWow!(すごい!)の要素を入れるべきであるというのが著者の主張です。これによって聴衆の関心に刺激を与えるのが大事で、

聴衆に感情的な反応を起こすテクニックを身につければ、プレゼンで注目を集め、聴衆とのつながりをつくりながら、インパクトを与えることができます。つまり、ますます効果的になります。

とのこと。具体的には、Show, Say, Doという3点に絞られますが、何か印象的なものを見せたり(Show)、聴衆にとって意味のある響く言葉を言ったり(Say)、何かを聴衆にやってもらう(Do)のどれかを採り入れるのが効果的であるとのことです。

プレゼンの構成はストーリー感で

プレゼンテーションの中身の構成は二つ提唱していて、それが

  • ピラミッド型
  • ストーリー型

です。ピラミッド型は、バーバラ・ミント氏が提唱したPyramid Principle (ピラミッド原則)をより簡単にしたものを著者は提唱していて、「最も伝えたいこと」が3つくらいのポイント(理由や方法や例など)に支えられているという構造です。

一方のストーリー型は、状況→困難→結果→最も伝えたいことという順序で述べるというもので、簡単な例で言うと

お姫様がいた(状況)→ドラゴンに襲われた(困難)→英雄がお姫様を助け、結婚して幸せに暮らした(結果)→大変なことを乗り越えて幸せになりましょう(最も伝えたいこと)

という具合です。

ただ、本書の中で提唱されていることは、「言っていることは分かるけど、どうしたらいいか分からない」というのも散見されました。典型的には、「原稿やスライドを読み上げるのではなく、心から話す」、「暗記するのではなく、心から話す」というもの。「心から話す」と言われても、それって具体的にはどういうことで、なぜそれが重要で、どうしたらそれができるようになるかが説明されていないと、読んでいてもピンときません。失敗例として、オーストラリア人の女性が友人の結婚式のスピーチで暗記した結果うまくいかなかった、というものがありますが、これって、ビジネスではないので、正直「だから?」という感覚は拭えません。

ということで、本書をヒントにネイティブの視点を理解した上で、改めて自分なりのプレゼン手法を構築するといいのかもしれません。

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