リーダーシップとコーチングって、実は相性が悪いという説があります。
と聞くと、「いやいや、そんなことはないだろう。実際、管理職研修の中にもコーチングがあったぞ」と思う方もいるかもしれません。それはおっしゃるとおりで、コーチングそのものは良いんです。ただ、コーチングに過度に頼るとリーダーとしての立場が弱くなり部下がついてこない懸念があるのです。
たとえば、コーチングの基本的なスタンスの一つに、「答は相手の中にある」というものがあります。これ、日常の悩みに関してはその通りなんですが、ことビジネスになると明らかに違う場面ってありますよね。経験が足りない部下に、「キミはどうしたいの?」と聞いても答えが返ってくるはずはありません。むしろ、そんな場合は「ティーチング」。「こういうダンドリで、こうすれば成果が上がるよ。ついては、まず○○の行動から」と道筋を示すことがリーダーには求められます。
逆にコーチングばかりだと、「この上司についていって本当に大丈夫かな?」と部下は不安な気持ちになりますし、それがやがては、「この上司、ダメだ」とナメる気持ちに変わっていきます。というか、世の中のコーチングの本を読んで、ウンザリした経験がある上司の方、いませんか?「こんなことまで、オレがやらなきゃいけないのかよ」と感じられる場合もありますし、「ただでさえ時間がないのに、ここまではムリ」と思うことだってあるでしょう。
そうではなく、効果的に部下を動かすにもコーチングが使えるという本が「リーダーのための! コーチングスキル」です。基本スタンスは冒頭にある、
相手を動かし成長させるリーダーの「影響力」をしっかりと磨き上げることが必要なのです。
という言葉に集約されます(6p)。このために、コーチング的なコミュニケーションをどのように使うかが本書のテーマ。ちなみに、著者の谷先生は、前著「リーダーのための! ファシリテーションスキル」でも、同じようなスタンスでファシリテーションスキルを解説されていたので、あわせて読むと2倍納得できるかも知れません。
具体的なスキルに関して、とくに面白いと思ったのは、相手の話を「聞く」と言うところ。これはコーチングでも「傾聴」とか「アクティブリスニング」と呼ばれ、大事なスキルの一つとして捉えられています。ただ、ビジネスの現場で成果をあげる、もしくはリーダーとしての影響力を磨き上げるためにはそれだけでは十分ではなく、
- 聞き出す
- 聞ききる
- 聞き分ける
とさらに細分化された行動が必要であると谷先生は言います。たしかに、部下の中には話があっち行ってこっち行って、「キミは何が言いたいの?」というタイプの人もいますからね。そんな話に付き合っていたらキリがないので、「聞き分ける」。フレームワークで情報を整理してあげることが必要です。さらに、「聞ききる」。どうしても途中で自分の解釈をはさみたくなりますが、それでは「事実」を聞くことはできないので、相手が本当に話しきるまで「聞ききる」のが大事というのも納得です。
このようなスキルが、具体的な会話の例とともに紹介されていますので、これまでコーチングに苦手意識を持っていた方にはぜひお一読をお勧めしたいですね。
画像はアマゾンさんからお借りしました。
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