外資系で戦うための英語プレゼン
英語のプレゼンテーションと言えば、外資系のビジネスパーソンはどんな風にこなしているのでしょうか?そんな疑問に答えてくれるのが浅見ベートーベン先生の著書「CD BOOK 世界で戦う 英語のロジカルプレゼン」です。著者の浅見先生はお父様が米国人だそうですが、幼少期に離れたために英語は独学だそうです。なんでも、東京は赤羽育ちだそうで、下町っ子というイメージでしょうか。ご経歴はIBMで長らく働かれて、
日本はもちろんニューヨークやアジア諸国において、30年以上にわたって、ネイティブと共にプレゼン資料をつくったり、プレゼンを行ったりしてきました。さらに研修担当者として、IBMと関連会社の社員1000人以上に英語のプレゼンを教えたりしてきました。(はじめに)
とのことで、まさに外資系における英語プレゼンのプロフェッショナルです。そんな浅見先生が感じている問題意識が、日本人は先進国の中で一番プレゼンが下手なのではないかというもの。これを改善したいとの思いが本書に凝縮されています。ちなみに浅見先生と言えば、本書の他にも「MP3CDROM付き 世界で戦う 伝わるビジネス英語」という本も執筆されているので、外資系企業で日本人がいかに世界と戦うべきか、というのがテーマなのでしょう。
英語のロジカルプレゼン17のルール
上述のように日本人はプレゼン下手というのが浅見先生の問題意識ですが、その理由が
日本人はプレゼンのコツやルールを習ったことがないので、自己流で済ませているかたが多い
から。逆に言えば、練習すればうまくなるのがプレゼンのスキル。その方法論として、浅見先生が提唱するのが「『ロジカルプレゼン』17のルール」です。
- 「プレゼン=難しい」という先入観を捨てる
- サインポスト・ランゲージを効果的に使う
- エレベーター・テストに合格できるレベルに
- プレゼンの目的を明確に
- 無駄なく3つの資料のみ作成する
- タイトルでオーディエンスを引き込む
- キー・メッセージを3つまで設定する
- スライドは8行以内に収める
- あえて批判してもらう
- 英単語は統一し、難解な用語を避ける
- スライド内の文体や表記を統一
- オーディエンスを一人ひとり書き出す
- 資料作りはLess is more.
- PowePointの前に紙と鉛筆
- So what? (それで?)に答えられるように
- 部屋の後ろを見渡して話す
- 日本式のボディランゲージを捨てる
とくに面白いと思ったのが、12番目の「オーディエンスを一人ひとり書き出す」というもの。これは本当に、紙と鉛筆で参加者一人ひとりの名前を書いてみることを指しますが、
「今回のプレゼンのオーディエンスは誰なのか」。名前と肩書きまでも書き出すなんて時間の無駄ではと思われるかたもいるかもしれませんが、オーディエンスを明確に意識すると、自ずとプレゼンの骨格が整ってきます。
とのこと。これは確かにその通りで、プレゼンテーションが説得型、つまり自分の主張を聞き手に納得してもらい、聞き手に動いてもらう場合はとくに、「聞き手が誰なのか」は重要になってくるでしょう。役職(組織の中でどの階層にいるか)によっても興味は違ってきますから、上層部だったら経営の根幹に関わることを、現場の人だったら明日から使えるメリットを伝えるなどの工夫が必要です。
さらにこのパートでも面白いのは、
それから、誰を招待するのか、プレゼンターに決定権が委ねられている場合は、招待すべき人ではない”要注意人物”を部屋に入れないことです。招待すべきでないオーディエンスとしては、決定権がなく、プレゼンのなかで意味のない質問をしたり引っ掻き回したりするひとですね。その場にいる人の一言で場の空気はよくも悪くもなります。
というもの。これは外資系の場合リアルで、とくに多国籍の人材が集まる場だと、「あいつがいると物事が決まらない」というのはよくあります。そういう人は最初から排除してしまおうというのは、まさに世界で戦うためには必要な割り切りだと思いました。
ただ、一方で実際のプレゼンの場では誰を招待するのかプレゼンターが決められない場合が多いでしょうから、そんな”要注意人物”が来てしまったときにはどのように対処するといいのかの記載があると、さらに英語プレゼンには役立つと思いました。
英語のロジカルなプレゼンの方法論か?
本書を読んで不思議に思ったのは、書名には「ロジカルプレゼン」と入っているのに、ロジカルに説明するためにはどうしたらいいかの記載がないことです。たとえばそれは、主張を根拠で裏付ける、根拠は網羅する、1枚のスライドでメッセージを結晶化する、そのメッセージをサポートする情報を載せる、などですが、これらはきれいさっぱり記載されていません。むしろ内容面では、英語表現が中心になっています。実際、「ロジカルプレゼン」をマスターする上で欠かせないサインポスト・ランゲージをどのくらい理解しているかを試すスキルチェックテスト」(36pから)でも、日本語をどのように英語に直すかが問われているだけです。
また、80pからはプレゼンテーションのサンプルとして、スライドが何枚も掲載されていますが、人間の認知にそぐわない円グラフを使っていたり、スライドにメッセージがなかったりして、これを真似すると聞き手から「で、何が言いたいの?」と言われてしまうような例になってしまっています。
したがって本書を読む際の期待値としては、「ロジカルプレゼン」というのは念頭からはずして、「外資系企業の英語プレゼンで使われる表現をチェックする」ぐらいに考えた方がいいのではないでしょうか。
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