「講師として活躍したい…」。そう思ったときに手にとってしまうかもしれないのが堀公俊先生、加留部貴行先生のご著書、教育研修ファシリテーター 組織・人材開発を促進するです。

講師が知るべき3つのスタイルと9つの学習法

一口に講師、もしくは講義と言っても大きくは3つのスタイルに分かれるというのが著者の堀公俊先生、加留部貴行先生の解説です。それが、

  • レクチャー (講義)
  • ワークシップ (協働)
  • リフレクション (省察)

です。レクチャーとワークショップは分かりやすいでしょうから、「リフレクション」に解説を加えます。これは

内省と対話を通じて自分自身を振り返り、何を学ばないと行けないかを学んでいきます。

というものです。

一方、研修受講者の立場から見ると、学習法は9つあるとのこと。それが下記になります。

  1. 聴く
  2. 見る
  3. 考える
  4. 話し合う
  5. 体験する
  6. 創作する
  7. 分かち合う
  8. 内省する
  9. 深めあう

これらを上記の3つのスタイルと組み合わせることで、効果的な研修ができるとのこと(詳しくは本書の31pを)。

講師のテクニックも満載

本書の魅力は、講師が明日からでも使える様ザマンテクニックが紹介されていることです。たとえば、「接続詞でスライドをつなぐ」というもの。これによって、

「…となります。しかしながら、(スライドを送る)…です。それはなぜかというと(スライドを送る)…です。さらに(スライドを送る)…です。要は(スライドを送る)…ということになります」

と流れるような講義ができます。なお、その際には下記の接続詞を意識すると良いとのこと。

  • なぜならば 理由
  • したがって 結論
  • つまり 要点
  • しかしながら 逆転 
  • まず 順序
  • ところが 意外
  • ただし 補足
  • 一方 対比

他にも下記のテクニックが紹介されています。

  • 会場インタビュー:参加者側に入っていって質問する。真横で、「いかがですか?」とマイクを突きつ
    ける
  • 熱くなりすぎたり、茶化したり、ふざけてやる人にも配慮が必要です。多くは「自分を認めてもらいたい」という心の表れです。自己肯定感が不足している人が
    そうなってしまうのです。そう言う寂しい気持ちを受け止め、別の手段で自己肯定感を与えてやればいいのです。まずはふざけている人の肩にでも手を置いて「すご
    いノリですね」、「ウンウン、それは面白い」と誉め、ことあるごとに「みなさん、この人が…」と取り上げて、スポットライトを当てます。…そうやって存在を
    認めながら、研修の流れに上手に組み込み、真面目にやらざるを得なくするのです」
  • ファシリテーターの分かち合いで、ときに効果的なのが意図開きです。研修やプログラムに込めた主催者側の意図を紹介する種明かしです。

一方で、本書で紹介されている中には、企業研修の現場で使うと講師としての信頼を落としてしまうリスクがあるものもあります。たとえば同好の士が集まった場など、お互いに学びあうという位置づけならともかく、ビジネスの研修の場では下記は絶対に使うべきではないので注意が必要です。

  • 「講義をしているときに、自分の心の中で芽生えた感情を素直に語るのもファシリテーターに特有の講義スタイルです。…なぜこれがよいかというと、ファシリテーターの心の中を参加者と分かち合うことで、お互いの距離が近づくからです。」
  • 「学び合いを促進するというファシリテーターの本来の役割を考えれば、もっと大切なことがあります。参加者と同じ目線に立ち、寄り添いながら、参加者の一人
    としてともに学んでいくと言う姿勢です。」

本書で紹介されている講師のための参考文献

  • 福澤 英弘著、人材開発マネジメントブック―学習が企業を強くする
  • 舘岡 康雄著、利他性の経済学―支援が必然となる時代へ
  • 堀 公俊、加藤 彰著、ワークショップデザイン――知をつむぐ対話の場づくり
  • 日本能率協会マネジメントセンター著、社内インストラクター入門
  • 島宗 理著、インストラクショナルデザイン―教師のためのルールブック
  • 大谷 由里子著、はじめて講師を頼まれたら読む本
  • 山田洋一著、発問・説明・指示を超える対話術
  • 堀 公俊 (著), 加藤 彰 (著), 加留部 貴行 (著)、チーム・ビルディング―人と人を「つなぐ」技法
  • 広瀬 隆人 (著), 沢田 実 (著), 林 義樹 (著), 小野 三津子 (著) 生涯学習支援のための参加型学習(ワークショップ)のすすめ方―「参加」から「参画」へ
  • 中原 淳、金井 壽宏著、リフレクティブ・マネジャー 一流はつねに内省する
  • ドナルド・A. ショーン著、省察的実践とは何か―プロフェッショナルの行為と思考
  • 市川 力 (著), 久保 一之 (編集), 永易 江麻 (編集), 松浦 貴昌 (編集)   探究する力
  • 吉田 新一郎著、効果10倍の“教える”技術―授業から企業研修まで
  • 中野 民夫 (著), 堀 公俊 (著)、対話する力―ファシリテーター23の問い
  • エドガー・H・シャイン著、人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則
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