プレゼンテーションって日本語でも難易度が高いものですから、ましてやこれを英語でとなると、ダブルでハードルが高くなってもう大変…。と思いきや、
英語がうまく話せなくても、上手に英語でプレゼンテーションするのは可能です。
と心強い言葉から始まるのが倉島保美先生のご著書、「これなら説得できる!英語プレゼンテーションの技術」です。著者の倉島先生は、執筆時点では有限会社ロジカルスキル研究所の代表取締役ですが、前職は日本電気にてLSIの設計をされていた方だそうなので、エンジニアで英語のプレゼンをする必要がある人には、バックグランドが似ていると参考になるところ大、かもしれません。
プレゼン準備の6W2H
冒頭の、英語がうまく話せなくても英語のプレゼンが上手にできるというところに戻ると、著者の倉島先生は
大事なのは、わかりやすく論理的な内容構成であり、ポイントが伝わるスライド技術なのです。英語表現はそのあとです。
とのこと。つまりは、まずは内容を固めてから英語に取り組むというアプローチと見ました。したがって本書の構成も、まずは準備段階で様々なリサーチをしたうえで、
- 内容構成技術
- スライド作成技術
- デリバリー技術
の三つのパートが大きく取り上げられています。これらを順次読み進めていけば、冒頭の「英語がうまく話せなくても、上手に英語でプレゼンテーションするのは可能です。」という言葉も納得でしょう。
ちなみに、準備の段階では「6W2H」の把握というのが面白いと感じました。これは、英文法の5W2Hをベースに、
- Who (キーパーソンを把握する)
- Why (目的を明確にする)
- What (キーセンテンスをつくる)
- Where (場を確認する)
- When (プレゼンの時間を確認する)
- Which (選択肢を提示する)
- How (どうやって進めるかを示す)
- How much (コストがいくらかを示す)
という項目で、これならばプレゼンに必要なことをモレなくチェックできるでしょう。
英語プレゼンでは主語を意識する
本書を手に取る方の中には、「そうは言っても英語表現が苦手なんだよな」という人もいるでしょう。そんな方は、とくに第6章の「理解度を高める英語技法」、第7章「覚えておきたい定型の英語表現」が参考になるでしょう。
その中でもとくに目を引いたのが、「キーワードを主語にする」というところです。日本語と英語では主語が大きく違うので要注意というのは別の書評でも取り上げましたが、本書ではこれを少し違う形で紹介してます。まず大前提として、
文の中心は主語です。その文は何について書かれているかといえば、主語について書いてあるのです。したがって、主語が強調されて読み手の印象に残ります。
ということ。実際に二つの文例が紹介されていて、
- ABC Company was founded by Mr. Taro Yamada in 1961
- Mr. Taro Yamada founded ABC company in 1961
1番の文ではABC Companyが強調されているのに対して、2番目の文では創業者のTaro Yamadaさんにフォーカスがあたっているとの違いです。したがって、主語を選ぶ際には、そのプレゼンテーションで印象づけたいものをキーワードにすると有効とのことです。
もちろん、Youを主語にするのもアリで、とくに
聴衆にプラスイメージの情報なら、youを主語にするとよいでしょう。とのこと。実例として、ここでも二つの文が並べられています(ちなみに、本書にはもっと多くの文例が掲載されていますので、詳しく知りたい方は本を手に取ってください)。
PerfectProtecter also keeps virus definitions up-to-date without requiring your intervention, which allows you to continuously maitain the highest level of virus protection.
With PerfectProtecter, you can also keep viurs definitions up-to-date automatically. So, you can continuously maintain the highest level of virus protection.
このように書き換えることによって、
ぐっと親しみやすく、聴取に訴えかける調子になったのがご理解いただけるのではないでしょうか?
と著者は指摘しています。
ビジュアルには難点アリ
本書の最後の方はプレゼンテーションの実例が載っていてそれはそれで親切なのですが、ただ、そのビジュアルには難ありといわざるを得ません。せっかくここまでがいい調子だっただけに残念ですが…。
たとえば182pに掲載されている円グラフ。一般的に、円グラフは大きさの違い(何パーセントなのか)が分かりにくいので、お勧めではありません。ましてやそれを、意味もない立体系で示しているのは、無駄、というか、聞き手に誤解を与える表現でしょう。同様に海と空の写真をバックグランドにしたスライドや、意味の内湾ポイントの写真が掲載されたスライドをサンプルとして示していますが、これはいずれもお勧めできない、「悪い事例」です。
ということで、悪い事例はともかく、前半の内容構成技術、スライド作成技術、デリバリー技術は参考になるので、英語が苦手なんだけど英語プレゼンテーションを行う必要がある方は目を通されてはいかがでしょうか?
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