こんにちは。プレゼンテーション・カレッジ代表の木田知廣です。
先日、相談を受けました。
「木田さんは講師として話すとき、緊張しないんですか?」
答え:まったく緊張しません
そのココロは、以前紹介したPFD三層構造を意識しているから。
その上で、相手の頭の中にある地図を書きかえる、と言うイメージを持っておくと緊張はしませんね。
ところが面白いもので、講師の時にはまったく緊張しないワタクシでも、「決まり切ったことを言わなくちゃいけない」と
言うときには、めっちゃ緊張するんですよ。
たとえば、誰かの結婚式で乾杯の発声をするときとか。
だって、もう決まり切った「セリフ」を言わなくちゃいけないし、トチったら悪いよなーと思うと心臓バクバク、手には汗がダラダラ。
考えてみればこれは、P層(プレゼンテーション層)だけでしか勝負していなくて、F層を使って相手の頭の中をコントロールできないという状況だからでしょう。
とはいえ、「人前で話すとき緊張するんですけど、どうすれば…」と言うときに、いきなりPFDの話をしても分かりにくい。
と言うことで、新シリーズの始まりです。題して、「緊張防止の方法論」です。ちなみに、さらに詳しい内容をプレゼンテーション入門セミナーで解説していますので、ご興味がある方はチェックしてみてください。
プレゼンでの緊張防止の目次
- 緊張防止の前腕ストレッチ法
- 緊張防止のマルチセッション法
- 緊張防止の「頭語固定法」
- 早口防止の「地上の星の法則」
- 緊張防止のルーチン
- プレゼンターの基本は「T3ルーチン」
- アイコンタクトはワンセンテンス・ワンパーソン
- アイコンタクトの「命宮法」
- 相手の視線をコントロールする
- 緊張防止の方法論シリーズまとめ
緊張防止の前腕ストレッチ法
「緊張防止の方法論」シリーズ、まずは簡単で実効性があるものから。
「前腕ストレッチ法」と言いますが、利き手じゃない方の手をグッと前に突き出します。その時に手のひらは下向き。
そうしたら、利き手を手の甲にかぶせながら、グッと下に下ろして利き手じゃない方の腕(前腕)の筋肉が伸びているのを意識しましょう。
今度は逆に、手のひらを上にして、同じくグッとストレッチ。
緊張するときはどうしても頭の中で意識が閉じてしまいがちですが、ストレッチすることによって身体感覚を取り戻し、
緊張防止できるのです。
緊張防止のマルチセッション法
「緊張防止の方法論」シリーズ、前回は体を使ったものですが今度紹介するのは心の持ちよう。
「マルチセッション法」と言いますが、たとえプレゼンで大勢の参加者の前で話すときであっても、こんな風に考えてみましょう。
「自分一人が大勢に向かって話しているのではないんだ」
と。
え?じゃあ、誰に対して話しているの?
それは、参加者の一人ひとりとです。つまり、1対1のセッションを同時並行で複数(マルチ)やっているだけである、と。
このような考え方ならば、1対1で誰かと話すときと同じぐらいの緊張感で、大勢の聴衆の前でも話すことができるのです。
緊張防止の「頭語固定法」
「緊張防止の方法論」シリーズ、体を使った「前腕ストレッチ法」、心の持ちようの「マルチセッション法」に続いて、今度は言葉を使った方法論で、「頭語固定法」というもの。
読んで字のごとく、「頭語」、つまり話出しの言葉を固定することによってリズムを作り、緊張を緩和するというものです。
たとえば、「はい、これからプレゼンを始めます」、「はい、次のトピックに移りたいと思います」、など、「はい」という「頭語」を固定することで緊張を防できるのです。
早口防止の「地上の星の法則」
プレゼンで人前で話す時に緊張して早口になっちゃうことってありますよね?
そんな時には、1分間に300語(300WPM : Word Per Minute)の「ベースペース」(基本となるスピード)を頭の中に焼き付けておきましょう。
では、どうやってこのベースペースを意識するのか?
だって、それが頭から飛んでるから早口になっちゃうわけで…
と言うときに、どこからともなく聞こえてくるあの歌声。
「風の中のすっばる~、砂の中のぎぃいんが~♪」
そう、中島みゆきさんの「地上の星」は、300WPMのベースペースを作るのにピッタリなのです。
出番前はもちろん、セッション中も「あ、早口になってるかな?」と気付いたら、「地上の星」を頭の中に鳴り響かせて下さい。
気持ちも口調も落ち着くこと間違いなし。
緊張防止のルーチン
「緊張防止の方法論」シリーズ、今回紹介したいのは「ルーチン」と言うコンセプト。
ビジネスでも「ルーチンワーク」なんて使われる場合もあって「決まり切ったこと」という悪いイメージがついているかも
しれませんが、実はこれが緊張防止に効くんです。
プレゼンターとして登場する前には毎回決まり切った動作をやることによって、「アガり」を防ぐことができます。
たとえば、先日紹介した「前腕ストレッチ法」なんかをやると二重に効きそうですね。
ちなみに、スポーツの世界でもこれはいわれていて、「ルーチン」を上手に使って平常心を保ちパフォーマンスを上げているのがイチロー選手。
みなさんご存じの、あのバットをグッと前に出すポーズがイチロー選手の「ルーチン」なのです。実際に科学者の調査に
よると、心拍数を下げる効果が実証されているそうですね。
では、問題。プレゼンターがセッション中にできる、もしくはやるべきルーチン動作とは、どのようなものでしょうか?
答は、次回。
プレゼンターの基本は「T3ルーチン」
「緊張防止の方法論」シリーズ、前回は「ルーチン」というコンセプトを紹介しましたが、プレゼンターがセッション中にくり返しているルーチンと言えば?
そう、プロジェクターを指さして聴衆に向かって話すという、T3ルーチンです。
そのココロは、
Touch (スクリーンに映った今話すポイントを指し示す)
Turn (聴衆の方に向き直る)
Talk (話し始める)
一見すると当たり前ですが、どれが抜けても良いプレゼンテーションにはなりません。
たとえば、タッチが抜けると、投影されているスライドのどこを話しているか分からないので、聞いている方は「迷子」になりがち。
あるいはターンが抜けた場合、スクリーンの方を見ながら話すことによって聞き手の頭の中に働きかけるという効果が薄れてしまいます。
ルーチンを作ることによって緊張を防止しながら聴衆に働きかける…
一見シンプルなT3ルーチンの神髄は、使ってみるとよく分かります。
アイコンタクトはワンセンテンス・ワンパーソン
外国人に見つめられてドキッとした経験ってないですか?
とくに、ものすごい鮮やかなブルーの瞳に見つめられると訳もなくドキドキしてしまいます。吸い込まれそうってのは
こういう事を言うんだなぁ、と。
ひょっとしたらこれ、日本人同士ではアイコンタクトがそれほど重視されていないからかもしれません。むしろ、あまり見つめすぎると失礼に当たるとか。
とはいえ、人前で話すときにはちょっと例外で、適切なアイコンタクトは求められますよね。
では、どのくらいが「適切」なの?と言う目安が、
ワンセンテンス・ワンパーソン
です。ワンセンテンス、一つのまとまりのある文を言う間はワンパーソン、一人の人とアイコンタクトをとりましょう、
となります。
これ、やってみると意外と一人の人と目を合わす時間が長いのが分かります。
逆に言うと、よっぽど意識をしていないと、ついついアイコンタクトが弱くなってしまうのが、日本人に共通するクセでしょう。
アイコンタクトの「命宮法」
「緊張防止の方法論」シリーズ、アイコンタクトの基本となる「ワンセンテンス・ワンパーソン」を前回紹介しましたが、
では問題。
アイコンタクトの時、相手のどこを見ますか?
いや、だって、よく考えると、相手の右の目を見るか左の目を見るか気になってきませんか?
と言うときに意識したいのが「命宮(めいきゅう)法」。
「命宮」というのは、目と目の間を指す観相学の言葉です。
やってみると分かるのですが、相手の「命宮」を見ても、それほど強くアイコンタクトするという意識はないんですよ。
ところが、逆に見られた方がしっかりとアイコンタクトされていると感じているので、自分では緊張することなく相手にはアイコンタクトを届ける方法として有効なのです。
相手の視線をコントロールする
「緊張防止の方法論」シリーズ、アイコンタクトについて話してきましたが、これまでは主に自分の視点でした。つまり、自分のアイコンタクト、自分の視線をどうコントロールするか、ということ。
逆に、講師をやるときなんかは、参加者の視線もコントロールすることによって、その場の雰囲気を支配し、自分優位の
ポジションを作ることもできます。
そのための方法が、「アイコントロール」。セッション中に、
「はい、前のスライドを見てください」
「では今度は、お手元の資料を見てください」
と相手の視点の先をコントロールすることは、参加者の脳内をコントロールすることに他なりません。
緊張防止の方法論シリーズまとめ
さあ、色々なテクニックがあった「緊張防止の方法論」シリーズ、いよいよまとめです。
声・体・視線など、様々な方法論がありますので、まずは自分の使いやすいものからトライしてみてください。
- 「前腕ストレッチ法」で身体感覚を意識する
- 「マルチセッション法」で心の持ちようを整える
- 「頭語固定法」でリズムを作る
- 「地上の星の法則」で早口防止
- 「T3ルーチン」がプレゼンターの身体の基本動作
- 「ワンセンテンス・ワンパーソン」でアイコンタクト
- 「命宮法」で自分は緊張せずに相手を見つめる
- 「ルックアップ法」で相手の視線と脳内をコントロール