セミナー講師の準備法

セミナー講師になりたい、と言う人、最近多いみたいですね。

というのも、最近は「有名人経済」なんて言われていて、「何を言ったか」よりも「誰が言ったか」が重視される時代。

そんな中、ブログやツイッターを駆使して自分の知名度を上げることは、ビジネスの結果にダイレクトに効いてきます。

フェイスブックとかも、見てると面白いですよね。

「くっだらねぇ~」という内容でも、「友達」を大勢持っている人が投稿するとアッという間に100を超える「いいね!」が集まりますからね。

本当のところは嘆かわしい風潮ですが、それを言っても始まらない。むしろ、自分のほんとうの価値を知らしめるためには、やっぱり自分のブランドを立てなければなりません。

その一環が、セミナー講師としてデビューすること。たしかに「教える側」に回ると、同じ教室にいるのに教卓の反対側にいたときとは見える景色が違ってきます。

では、問題。

セミナー講師として準備するにあたり、どんなことに気をつけたらいいでしょうか?

ここではとくに事前準備に絞って、セミナー講師として成功するためのチェックポイントを押さえたいと思います。

セミナー講師の準備法目次

講師のイロハはABCDE

「セミナー講師準備編」シリーズ、まずは講師の「イロハ」ではないですが、役割を理解するためのABCDEを押さえましょう。

これは英語の頭文字を取ったもので、

Audience (聴衆の分析)

Boshu (募集。集客)

Contents (コンテンツ。話す内容)

Delivery (デリバリ。実際のセッション)

Evaluation (評価)

からなります。

「セミナー講師」と聞くと多くの人はD、つまり、実際のセッションの場で何を話すか、どんな身振り手振りをするかが頭に浮かぶ人が多いかと思います。ちょっとセンスがある人でもBやCまででしょう。

でも実際の所は、聴衆が何を知りたいか、どんな知識をすでに持っているのかから始まって、最後の評価(聴衆の評価の場合もあれば、自分自身の評価の場合もあります)まで含めた一連の流れを意識しておく必要があるのです。

とはいえ、全部話すと長くなってしまうので、ここでは主にDにフォーカスをあてて話を進めたいと思います。

セミナー講師は「小まとめ」を使う

セッション中の講師の行動としてまず押さえておきたいポイントはセッション中の説明の間に適宜「まとめ」を入れて受講者の理解を促すということ。

ほら、ビジネス書にもあるでしょう?章ごとに、「この章のまとめ」が簡潔に書いてるものが。それと同じで、セッション中も

「ここまでの小まとめをするとぉ…」

と言いながら、適宜「まとめ」を挟んでいくのです。

当たり前と言えば当たり前。

でも、これをやることによって、単なる知識を一方的に伝達するという「プレゼンテーション層」だけのセッションではなく、一歩引いた視点から大事なポイントを抽出するという「ファシリテーション層」も意識したセッションを実現できるのです。

簡潔に「まとめ」をしようとすると、必然的に抽象化をすることになりますからね。

先行オーガナイザーというガイド役

ここでのテーマは、「小まとめ」のその時に見せるのはどんなスライドか?ということです。

セミナーのそのパートで話した内容を3-4点の箇条書きでまとめたスライドでもいいですし、できれば個々の教えることと、それらの関係を示した全体図を示すと、参加者の「分かった」感が高まること間違いなし。

専門的には「先行オーガナイザー」なんて言いますが、そのパートで聞いた情報を頭の中で「オーガナイズ」つまり整理するのに役立つ見取り図のようなものです。

できれば図になっていてビジュアルにも分かりやすい方が良いですが、それがなくてもいわゆる「レジュメ」、セッションで話すことをまとめた目次のようなものでも役立ちますね。

もっとも、この「全体図」をいつ見せるかというのは、セッションの内容によっても変わってくるのですけれど。

普通に考えれば、セッションの最初から見せた方がいい、となるわけですが、参加者に考えさせて考えさせて考えさせて、すなわち「脳内マップ」を検索させてから「全体像」を見せた方が良い場合もあります。

ときどき、「セミナーにはレジュメを事前配布することが絶対に必要だ」なんて言ってる人がいますが、それはPFD三層構造を理解していないことを、はからずも暴露してしまっていることになりますね。

セミナー講師はトップダウン?ボトムアップ?

この「全体像」、すなわち先行オーガナイザーをいつ見せるか、という話にも関係しますが、人に何かを教えるときには実はトップダウンとボトムアップの二種類のアプローチがあります。

トップダウンというのは、まずはセミナーで学んで欲しいことの全体像をバーンと見せちゃう。たとえば、ちょっと難しめの総合演習にいきなり取り組ませる、なんて方法があり得ます。「ホリスティック・アプローチ」と言いますが、要するにこれから学ぶことの全体像を先に見せる、と言うことです。

では、逆にボトムアップは?そうですね。細かい知識を一つひとつ教えていって、最後にはその知識が組み合わさった学ぶことの全体像がみえてくる、と言う状態で、「一つひとつの要素」を意味する「エレメント」から、「エレメンタル・アプローチ」と呼んでいます。

では、ホリスティック・アプローチとエレメンタル・アプローチのどちらが有効でしょうか?

というか、状況によってどちらが良いかは異なるわけですが、どんな状況だったらどちらを使うべきでしょうか?

オトナの学びの基本形

エレメンタル・アプローチは、セミナーだったら参加者がその分野に知識がない初学者が多いときに向いています。

もしくは、学校教育は頭の中が「白紙」に近いところから始めるので、それこそ足し算、引き算のような要素から教えていくエレメンタル・アプローチが主流です。そう言えば小学校のことを英語では「エレメンタリー・スクール」なんていいますね。

そのせいで、私たちは「人に何かを教える」と言うときにはエレメンタル・アプローチをついついとってしまいがちなのですが、常にそれが正解というわけではありません。

だって、セミナーの参加者が大人の場合、すでに何らかの形でその分野に関する知識を持っていることが多いですよね?たとえば私は会計セミナーも主催していますが、「初心者向けセミナー」と謳っていても、すでに何らかの知識がある人が「もうちょっとちゃんと学びたい」と参加するケースがほとんどです。

そういう場合には、むしろホリスティック・アプローチ。「皆さんこれまで会計のことをなんとなく学んできましたよねぇ?でも、『分かった!』と思えなかったとしたら、全体像が見えていなかったからですよ」という前振りとともに全体像を見せると、「なるほど~、そういうことか~」と「分かった」感を出せるのです。

セミナー講師として準備をする場合には、「ひょっとしたら先に全体像を見せちゃった方が良いのでは?」なんて自問自答してみるとこれまでとは違った反応を参加者から引き出せることがあります。

講師が使う「エステ」とは?

「分かるとできるは違う」なんてセリフを聞いたことってあります?そう、セミナーなどで知識を伝えたとしても、それを自分のものとして仕事の成果に活かすためにはもうワンステップ必要になることが多いもの。

「人材ピラミッドモデル」を念頭におくと分かりやすくて、「知識」をピラミッドの1階層下の「スキル化」するためには、ちょっと時間が必要だったり、ひと工夫した方がうまくいくケース多いものです。

そんな時に意識したいのが、「ESTEの4ステップ」で、

まずは頭の中に記憶させて(定着:Embed)

自分の言葉で整理して(構造化:Structure)

少しでも良いから使ってみたうえで(試行:Trial)

だんだんとできる範囲を拡げたりレベルを高めたりする(深化:Expand)

というものです。

セミナーにおいてこれを実装するならば、まずはEmbed、頭の中に定着することをサポートしてあげると良いでしょう。

具体的には、そのパートで学んだことを自分の言葉で説明する、もしくは文字に書き出してもらうというものです。

やってみると分かりますが、いざ自分の言葉で説明しようとなるとそれまでに聞いた(インプットした)情報を、頭の中で整理する(構造化:Structure)する必要があって、よく「教えることは最高の学習法だ」なんて言われるゆえんですね。

もちろん、セミナーという限られた時間の中でどこまでやれるかは限界がありますが、たとえば3分だけでもいいので、振り返りの時間をとると、参加者の「分かった!」感を増すことができるのです。

TEL 03-6459-0545 10:00 - 18:00 (土・日・祝日除く)
運営: シンメトリー・ジャパン株式会社

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