プレゼンの話し言葉を決めるレジスター

「プレゼンの時にはどんな口調で…?」というのは日本語でも悩むものですが、これが英語になるとなおさら。そんな悩みを解決してくれるのが、藤尾先生の著書「20ステップで学ぶ 日本人だからこそできる英語プレゼンテーション」です。ここで紹介されているのが「レジスター(使用域)」という概念で、

書き言葉か話し言葉か、またフォーマルかカジュアルかなど、どういう状況で言語が使用されるかと言うことです。このレジスターによって、プレゼンも表現を変えていかなければならないのです。

とのこと。レジスターという言葉はなじみがないものですが、ここら辺は応用言語学を東京大学大学院で学んだ藤尾先生ならではのまとめ方でしょう。ちなみにwikipediaでもこのレジスターの面白い例が紹介されていて、それが男性語と女性語の使い分け。要するに、自分の置かれた状況によって言い方を変えていきましょうというのがレジスターという概念だと理解しました。

本書が親切なのは、この具体例が示されているところ。若干長くなりますが、紹介します。

話し言葉

A: Recently, globalization has become a buzzword in Japan, hasn’t it?

B: Yeah.

A: Have you noticed any changes around you?  For example, does your company provide some training programs?

B: Yes.  Now we have several in-house training programs.

書き言葉

Recently, the term globalization has become a buzzword in Japan.  In order to achieve this, an increasing number of institutions have started to introduce some training programs.  It is quite likely that your institution has also intro duced some programs.

プレゼンテーション

Recently, the term, globalization, has become a buzzword in Japan.  I suppose you have noticed some changes around you.  Has your institution also introduce some programs?

このような例を元に、プレゼンテーションは話し言葉と書き言葉の中間であるというのが著者の主張です。

プレゼンの資料作成の1-7-7の法則

実は本書には、上記のレジスターだけでなく、プレゼンテーションに必要な様々な要素が盛り込まれています。たとえば「ビジュアル作成」(75p)では、プレゼン資料の作り方についても触れられています。ここでは二つの方法論を著者は提唱していて、それが、

  • 1-7-7の法則
  • 余白の美

というものです。1-7-7の法則は、

1つのトピック

縦は7行

横は7語

でプレゼンテーションの資料を作るべきだという考えから名付けられたもの。要するに、文章ではなくキーワードでまとめた過剰が気にした方がよいと言うことになります。「余白の美」は、その名の通り、情報を詰め込みすぎずに余白を残すことによってかえってアピールできることを指します。

ただ、余白を使ってアピールするのはどちらかというと上級編。初心者はそこに気を遣うよりも、そもそもであるコンテンツ(何を、どういう順番で言うのか)の方に時間を使った方が効率的ではないかと思いました。あくまでも余裕があれば、ですね。

英語プレゼンで話すスピードは150wpm

プレゼンの様々な要素という観点では、話すスピードも論点として取り上げられています。1分間に何語(Word Per Minute:WPM)によって分けられますが、

講演 140wpm
ラジオ 160wpm
インタビュー 190wpm
日常会話 210wpm

※孫引きになりますが、元々の出所はTauroza, S. & Allison D. (1990).  Speech rates in British English, Applied Linguistics.

とのこと。プレゼンテーションは講演やラジオに近いスピード、すなわち150wpmぐらいが適切であるというのが著者の提唱するものです。

ちなみに、話すスピードに加えて「間」についても触れられていて、その中で面白いと思ったのが

英語圏では、沈黙に対する耐性が低いので、長くても3秒を目安にしましょう

というもの。確かに言われてみれば、TEDなどでの動画でも、沈黙を上手に使っているのは少ないような気がしますね。むしろ、マシンガントークばりに話しまくるのが多くて。でも、逆に言うと沈黙を使うことこそ、本書のタイトルにもなっている「日本人だからこそできる英語プレゼンテーション」になるかもしれません。

追記:プレゼンにおける起承転結の否定

本書においても、プレゼンの構成で「起承転結」は否定されています。その理由は、

  • 渦巻き型で話があちこちに飛んでしまう
  • 説明から始まって結論は最後
  • 結果として何が言いたいか分かりにくい

とのこと。むしろお勧めは、

序論(introduction): 主張を明確に出す

本論 (body): 主張の根拠を述べる

結論 (conclusion): 主張をまとめる

という、いわばアカデミックな論文のスタイルです。

起承転結に関しては面白い例を出していて、

起:京の五条の糸谷の娘

承:姉は十六妹十四

転:諸国大名は弓矢で殺す

結:糸谷の娘は目で殺す

というもの。解説は、

「転」で、これまでとは一転した「諸国大名」の話題を出し、…それまでの「起」「承」では全く予期しなかった話題が出されているため、新鮮な驚きが生まれ、しかも「結」で、両者の関連が何だったのかが明らかになり、独特の面白さを醸し出している

とのこと。したがって、起承転結そのものが否定されているわけではないのですが、

英語圏の論旨展開は、最初にテーマ、あるいは主張したいことを述べ、次にその根拠を述べ、最後にその主張をまとめるため、結論先行型(Conclusion-First)と呼ばれることもあります。

となり、結論として序論、本論、結論が勧められていることになります。

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