プレゼンテーションの殿堂

トヨタ自動車豊田章男社長によるプレゼンテーション (英語)

世界を代表する家電の見本市、CESをご存じでしょうか?Consumer Electronics Show (コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)ですから、その名の通り消費者向け家電見本市。

ところが、2018年のCESにはそこに意外な人物が登場しました。それがトヨタ自動車の社長、豊田章男氏です。

自動車会社の社長がCESに登場?その違和感も、動画を見れば納得です。

誰もが簡単にプレゼン上手になれるチェックポイントを紹介した「プレゼンテーション・チェックリスト」をダウンロードいただけます。

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    名古屋発祥、日本を代表する企業トヨタ

    トヨタ自動車に関しては、もう言うまでもないでしょう。名古屋(厳密には名古屋近郊の挙母市)発祥の自動車会社で、今や世界に冠たる大企業です。

    ちなみに、挙母は「ころも」と読みますが、元々は江戸時代に「挙母藩」というのがあったそうです。それが、挙母市になり、今では豊田市と呼ばれています。名古屋から豊田市へは約1時間の行程ですから、やや郊外、という感じでしょうか。

    もっとも豊田氏は生まれは名古屋市だそうですし、今はサッカー名古屋グランパス運営会社の会長もされているので、名古屋出身の経済人と呼んでも違和感はないと思います。

    トヨタ社長の豊田氏、堂々と見せるプレゼンテーション・テクニック

    その豊田氏のプレゼンテーション、いわゆるTEDスタイルで話されています。大きなスクリーンを背に聴衆に向かって堂々と話される姿は、まさに日本が誇るリーダーの一人と言っても良いでしょう。

    プレゼンテーションのテクニックを分析すると、まず注目したいのはスピードです。日本人が英語で話すと緊張感もありついつい早口になりがちですが、豊田氏はゆっくりと話すことで堂々とした印象を醸し出しています。

    一般的には英語のプレゼンテーションでの話すスピードは一分間に150語(150 Word Per Minute: WPM)と言われていますが、それよりもさらにゆったりとした印象です。

    そして、ステージを歩き回るのも、日本人離れしてTEDのような印象を与えている要素です。

    そして、これも日本人離れした印象を与えるのが、ハンドジェスチャー。大きく広げて聴衆をウェルカムする気持ちを見せたり、あるいは指を一本立ててここが大事なポイントだと示したり(01:55あたり)、強い印象を聴衆に与える事を意図しているのでしょう。

    また、ユーモアも見逃せないところで、00:50あたりでは「なんて背が高いんだ」と、誰もが思うことを口に出して笑いを取っています。

    さらに、2:02あたりでは、「私は創業家の三代目です。三代目は翌会社を潰すと言われていますが…そうならないことを狙っています」と、ちょっと自虐気味のネタも披露しています。

    変革宣言の場として選んだプレゼンの舞台

    内容面で注目したいのは、全体を貫くテーマ。それは、「不可能を可能にする」というもの。

    1:14あたりでは、トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)のCEOギル・プラット氏を紹介するにあたって、「彼は不可能を可能にする方法を考え抜いているんだ」と紹介しています。

    また、1:34あたりでは、おじいさまの喜一郎氏が、創業のビジネスであった織機メーカーから自動車メーカーへと会社の変革を成し遂げたことを上げ、これも不可能を可能にした例であると示しています。

    そして、これはトヨタが、自動車メーカー(automobile)から人びとの移動に関わるビジネス(mobility)へと変貌を遂げるとの宣言です。この宣言のために選んだ舞台が、従来の自動車業界のイベントではなく、CESという家電業界、もしくはIT業界が注目するイベントであるのは必然とも言えるでしょう。

    もっとも、ここまで練り込まれたプレゼンテーションは、我流ではなかなかできないでしょう。豊田氏もきっと相当なプレゼンテーションのトレーニングをいして臨んだはずです。

    そんな、我流を超えて一流になるプレゼンテーションセミナーが名古屋で開催されるので、興味がある方はチェックしてみてください。

    サイモン シネック: 優れたリーダーはどうやって行動を促すか

    サイモン・シネック氏はリーダーシップのエキスパートで、その著書「WHYから始めよ!―インスパイア型リーダーはここが違う」を呼んだことがある人も多いかもしれません。

    そんなサイモン・シネック氏がTEDでプレゼンしたのがこちらの動画です。

    プレゼンテーションの「ゴールデン・サークル」

    アップルの革新性や、米公民権運動を率いたマーチン・ルーサー・キング牧師などを題材に、他者に行動を促すリーダーは何が違うのか、という観点でプレゼンテーションしています。

    これが、「ゴールデン・サークル」という概念にまとめられていて、そのココロは「Why、What、How」の三層からなる同心円。

    多くのリーダーは、外側からアプローチしますよね。アウトサイドインと呼んでいますが、「どうやって仕事をやるか」を部下に指示して、「何をやるか」を明確にして、その後にようやく「なぜこれをやる必要があるか」の解説が始まるわけです。

    でも、他者に行動を促すリーダーは、逆のアプローチでインサイドアウト。まずは「なぜこれをやるのか」を説明しているというのがサイモン・シネック氏の提言です。

    しかも、これは人間の生理に基づいているというのが、新しいところ。プレゼン中でも言っていますが、「心理学ではなくて、生理学に基づいている」と。実は、インサイトアウトの方が、人間の脳の行動を直接司る部分にはたらきかけるのだ、と。

    なぜ孫さんのプレゼンは心を打つのか

    日本の事例でも、たとえばソフトバンクの孫正義さんのプレゼンテーションが心を打つのは、この「何のために」というのが明確だからでしょう。しかも、「何のために」が自分の個人的な体験談と結びついた時、大きな力を結集できるのだと思います。

    プレゼンテーション必見動画第5回 モニカ・ルインスキー氏、ネットイジメを撲滅せよ (The Price of shame)

    モニカ・ルインスキーさんを憶えているでしょうか?

    当時の米大統領ビル・クリントン氏と「不適切な関係」になって一躍悪名をとどろかせました。

    そのモニカさんが17年の沈黙を破って登場したのがこちらの動画です。

    最初の方は、「40代になった私だけど、二度と22歳に戻りたくはないわ」とユーモアからはじまっていますが、内容はシリアスです。テーマは、ネットイジメ。「炎上」なんて言われることもありますが、何かをきっかけにインターネット上で大バッシングを受けるというものですね。

    モニカさんもあの事件をきっかけにそれはひどいネットイジメを受けたそうで、こういうのは止めなければならない、と立ち上がったのがこの動画です。

    プレゼンテーションのスキルから見ると、落ち着いた語り口が、ショッキングな内容を中和させて、説得力を出しています。

    Word Per Minute (ワード・パー・ミニット:WPM)といいますが、1分間に話す語数の標準は、300語(300WPM)と言われています。モニカさんも、このペースを維持しているところが、落ち着いた語り口につながっています。

    ちなみに、緊張すると早口になってしまうことがありますが、それを押さえてこの300WPMに戻すのが「地上の星の法則」です。

    プレゼンテーション必見動画 株式会社植松電機専務取締役植松努氏

    プレゼンテーション必見動画 マララ・ユサフザイ氏、国連スピーチ

    頭良さそうにTED風プレゼンをする方法 by ウィル・スティーヴン|プレゼンテーション必見動画第4回

    プレゼンテーションの工夫によっては、話す内容がたいしたことなくても頭がよく見えるというTEDのパロディ…なのですが、そこには私たちにも使えるワザが満載。6分弱と短い動画ですから、プレゼン上達したい方はチェックしても損はないはず。

    このプレゼン、「頭良さそうにTED風プレゼンをする方法」でスティーブン氏が語っていることを、プレゼンテーション・セミナーの講師が分析してみました。

    「頭良さそう」に見せるためには冒頭でツカミ

    プレゼンのスタート(0’20)はいきなり天を指さしながら「ほら、聞こえましたか?(Hear that?)」というセリフ。別に音響とかあるわけではないので何も聞こえないわけですが、そこから、「私は今日のプレゼンで『何も』言いません」と畳みかけるように続けます。

    聴取は「?」という反応で、若干スベッているようにも見えますが(笑)、冒頭で印象深く始めようと言う意図は伝わってきます。

    この動画に限らずプレゼンのスタート(オープニング)は難しいもので、日本人の多くが苦手意識を持っています。典型的なダメなのが、お客様へのプレゼでいきなり自己紹介から始めてしまう人。ちょっと意外に思うかもしれませんが、「自己紹介は申し遅れましたの法則」にのっとって、ツカミのあとに行うべきです。

    聞き手の立場に立っていただくと分かりやすいのですが、どこの誰やら知らない人の部署名とか聞かされても、興味の持ちようがありません。むしろ、プレゼンのテーマに関係することから始めて、「なぜそれを私が話すかというと…」という形で自己紹介に続けるのが王道です。

    間違いだらけのプレゼン研修

     



    プレゼンで使うジェスチャーの「ルール」

    ツカミで若干滑ったせいか、お次にスティーブン氏が「頭良さそうに」見せるために使ったテクニックがジェスチャーです。0’50あたりでガッツポーズのようなジェスチャーを見せて、まるで自分の話すことに情熱を持っているように見せたり、1’07のあたりでは「右手を動かして…」、「左手を動かして…」など、ジョークを交えながらジェスチャーを使っています。

    なお、実際のプレゼンの現場で使いやすいジェスチャーは下記の3パターンです。

    • 数量:「重要な3つのポイント」、「メリハリの4原則」など
    • 変化: 人出が増えた・減った、期間が延びた・早まった
    • 対比:「ここ」と「あそこ」、「あなた」と「わたし」

    この中で意外と難しいのが変化を表すジェスチャー。「右肩上がりに売上が伸びて…」といいながら、自分(話し手)にとっての右肩上がりのジェスチャーをしてしまう人がいますが、聞き手から見るとそれは左肩上がりに見えてしまいます。「聞き手からどう見えるのか」を念頭に、ジェスチャーは練習すべきです。

    スティーブン氏のプレゼンテーションに戻ると、ちょっと残念だったのは、基本が「弱い」ポーズになってしまっていること。
    え?ポーズに強い・弱いってあるの?と、これまた意外に感じるかもしれませんが、手を身体の前で組むポーズはいかにも自信なさげな印象を与えてしまいます。むしろ腕は自然に身体の両脇に垂らしておく方がお勧めです。

    「頭良さそう」に見せるためには聴衆に問いかける

    次に使ったテクニックは「問いかけ」です(1’17)。これまた日本人が比較的苦手にしがちですが、問いかけによって聞き手に頭を働かせてもらった方が、プレゼンの内容はより頭の中に入っていきます。「脳内マップ理論」と言いますが、聞き手の頭の中の地図を想像しながら、その地図の中に新たな知識を位置づけるというイメージです。逆に、問いかけができないと言うことは、一方通行のレクチャーになってしまっているわけで、これはTED風プレゼントはほど遠いですね。

    個人的なストーリーで気持ちを引きつける

    お次にスティーブン氏がパロっているのが、個人的なストーリーを語ると言うこと(1’28)。たしかにストーリーはTED風プレゼンではよくありますし、聞き手に大事なポイントを伝えるためには極めてパワフルなものです。これは日本人でも使っている人も多いかもしれません。話が「脱線」して、自分の体験談や失敗談なんかを語ってもらった方が聞き手は親しみをおぼえますからね。

    ただ、スティーブン氏が非凡なところは、ここから話を本筋に戻すところ。というのは、「脱線」は面白いものですが、脱線したまま本筋に帰ってこない人っているんですよ、ときどき。そうすると、「え~っと、何が言いたかったんだっけ?」となって、グダグダ。というか、TED風プレゼンをやる人は、本当の「脱線」はしていません。計算された「脱線」とでも言うべき、自分が本当に伝えたいメッセージと関係あることを、一見脱線風にいっているだけです。

    ストーリー感のPARLの法則と言いますが、L、すなわち相手に伝えたいポイントを最初に考えて、そこから逆算してストーリーを作るというのがプレゼンの王道です。なぜならば、私たちが普段取り組むプレゼンもそうですが、単に人前で話すことがプレゼンではないですよね。営業だったらお客様に買っていただく、社内プレゼンだったら上司や他部署に自分の企画を納得してもらうなど、そこには「目的」があるはずです。LeADER原則と言いますが、聞き手に期待した行動をとってもらうために脱線まで含めて話の内容を全体感を持って構成するのが大事です。

    「頭よさそう」に見せるためのビジュアル

    お次はビジュアルイメージです。画像やグラフ、数字を使って「さも重要そう」に見せるのですが、実はスティーブン氏のプレゼンでは、「単にグーグルで「科学者」というキーワードで検索しただけで、僕もこの人が誰か分かってないんだよね」というオチが付きます(1’55)。これ、日本人でも時々「プレゼンテーション・ゼン」という本にかぶれた人がやってしまいがちなミスです。意味ありげな画像を見せて聴衆の想像力をかき立てよう…というのは、TEDならばまあ「アリ」かもしれませんが、普段のプレゼンではNG。「放浪スライド」というダメスライドの典型ですが、聞き手の気持ちが「放浪」したようにいろんな事を考えてしまったら、自分が伝えたいポイントにかえってきてもらうのが大変です。

    数字やグラフも含めてイメージは聴衆に与えるインパクトが強いだけに、最終的な「落としどころ」に関係あるものだけを使うべきです。

    似たような話は「キーフレーズ」もそうです。TEDのプレゼンを解説した本の中には、「3ワードから12ワードまでの短い言葉に収めること」、「韻を踏む、もしくは言葉を反復することで音楽を聴いているようなリズムがあること」とさも「それっぽく」解説していますが、このスティーブン氏のプレゼンを見るとそういうのって結局「頭良さそう」にTED風プレゼンをするための表面的なものだと気付かされます。4’20あたりで、「ワガワガ」、「チップ・トリップ・マイドッグスキップ」と、正に反復のキーフレーズを使っていますが、これって何も意味がない言葉をつなぎ合わせただけですからね。

    また、外見も「頭良さそう」に見せるためには重要な要素とスティーブン氏は揶揄しています。実はメガネがだてメガネということをバラして笑いをとっています(4’54)。これまたプレゼンの本の中には、いかに「見せかけ」を整えるかが重要であるかを解説している本もありますが、しょせんそれは見せかけ。本当に大事なのは中身だと言うことに気付かされます。

    プレゼンで大事なメリハリの4原則

    そうは言っても、この「頭良さそうにTED風プレゼンをする方法」がここまで人気を博しているのは、スピーカーのスティーブン氏のプレゼンに説得力があるからです。その理由の大きなものは、メリハリ。5’13あたりでご本人も「ここでペースを落とします」と言っていますが、話すスピードを変えることでメリハリをつけているので、聞いている方は飽きないですね。日本語の場合基本となるのは300WPM (Word Per Minute: 1分間の発語)ですが、このペースをずーっと維持してしまうと、淡々と話して聞き手を眠りに落とすようなプレゼンになってしまいます。時にはペースを速めて聞き手の脳を活性化したり、時にはゆっくりと話して印象づけたりするのが大事です。

    これまた日本人が苦手にしているところかもしれませんが、もし心当たりがある人は「メリハリの4原則」をマスターして下さい。これは、

    • 声の大小
    • 話すスピード(word per minute)
    • 声の高さ(ピッチ)

    からなるものですが、使えるようになると聞き手に大事なポイントが伝わるようになります。

    ポイントは、先ほど説明した話すペースト同じで、変化をつけることです。たとえば、大事なポイントは大きな声で話したくなるものですが、実はあえて「大事なポイントは小さな声で」というのもアリです。そして、「間」。メリハリの4原則の中で一番簡単にして一番「効く」のがこれ。大事なポイントを伝えるために「間」をとる。聴衆に考えさせるために「間」をとる…。そんな話し方ができるようになると、際ほど紹介した「脳内マップ理論」を駆使して、自分の世界に聴衆を引き込めるようになります。

    他にも情報がある「頭良さそうにTED風プレゼンをする方法」

    なお、もしこのプレゼンに興味を持ってさらに知りたい方がいたら、書評をチェックしてみて下さい。

    などが参考になるかと思います。ちなみに、この3冊の中ではカリア先生の「最強のプレゼン術」が一番参考になります。カーマイン・ガロ先生の本は、「スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン」もそうですが、ジャーナリスティックな視点からプレゼンを楽しむという色合いが強いので、私たちが普段のプレゼンにいかせるポイントが意外と少ないんです。カリア先生の本は、Amazonではそれほど書評の数もなくて、世間的には売れていないかもしれませんが、隠れた名著だと思います。

    そして、もしプレゼン上手になりたいという方は、もちろんプレゼンテーション・セミナーもどうぞ。実はここには紹介しきれなかったのですが、プレゼンには「ルール」があります。それらを学ぶことでより上手にプレゼンできるようになっていただけるかと思います。

    プレゼンで緊張防止の方法論


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    プレゼンテーション必見動画 瀧川クリステルさんの東京オリンピック招致(おもてなし)

    2013年9月7日
    ブエノスアイレス

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